ゲーム判例シリーズ(3)〜ダービースタリオン事件編〜-iP Times.-
(この記事は、2022年3月22日に商標専門弁理士が作成したものです。)
こんな方に向けた記事です。
☆弁理士受験生や法学部などで知的財産法を勉強中の方へ
☆気になる判例をチェックしている方へ
☆ゲーム界隈で少しだけ判例に詳しい人になりたい方へ
本記事のここがポイント!!
パブリシティ権の基礎事項を示した事件!極めて重要な判例です
ダービースタリオン事件とは?
ゲームに関連する争いをシリーズでお伝えしているゲーム判例シリーズ第三弾!
今回は、ダービースタリオン事件をお伝えします!
なお、初学者の方は、まずは以下の記事を読んでいただくと一層理解が深まると思いますよ!
「あのー。競馬好きだからって、競馬関連の判例ばっかり上げてきてませんか?」
そんな声がちらほらと聞こえてきましたが、もちろん、純粋に重要判例をご紹介したいから上げているだけですよ!そこは、お間違えのないようにお願いします!!
さて、今回は以前ご紹介したパブリシティ権が問題となったギャロップレーサー事件に関連する判例でございます。
カンタンにまとめると
- どんな問題だった?→馬の名前について経済的な価値は認められるのか?
- 何に対しての問題?→物のパブリシティ権
- 結論を一言でいうと?→馬の「名前」についてパブリシティ権は認められない!
パブリシティ権の考え方の根幹
以下は、判例の文言をそのまま抜粋しておりますので、ご確認ください。
「もともと人格権に根ざすものと解すべきであるから競走馬という物について人格権に根ざすものとしての氏名権肖像権ないしはパブリシティ権を認めることができないことは明らかである。」
「各競走馬の馬名形態等についてその経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利であるパブリシティ権を有していると認め得る実定法上の根拠はなく控訴人らの主張を認めることはできない。」
つまりは、パブリシティ権は人格に根ざすものであり、馬名についてはその根拠となるものがないとの裁判所の判断です。
こちらは、色々と見解がありますが、私は司法機関が過度に社会的なルールを定めることを避けるためこのような見解を示したと考えました。
基本的に裁判所の判断はその事件だけでなく、多方面に大きな影響を与えます。
裁判所の判断に即した法律が制定されたり、基準が示されたりします。要はその事件限りでその見解が収まる訳ではないのです。
確かに、著名人(人間)についてのパブリシティ権は認められるものの、物や無体物に認めると、保護対象がどんどん増幅してしまう恐れがあるというのは容易に想像でき、どこかで歯止めを掛ける必要があります。
裁判所も「物のパブリシティ権については根拠がない」との見解を繰り返し示しており、根拠がなければ、裁判所で積極的にそのような権利を認めることはできない。
本件はそのような考えも窺い知れる案件です。
まとめ
物のパブリシティ権は基本的に認められないことを覚えておきましょう!
弁理士歴7年。商標調査の件数は、5200件を突破しました。 商標のニュースは常に気になり、商標をこよなく愛する商標好きの 事務所勤務の弁理士です。好きな商標の言葉は、登録査定。
Twitter:@syohyosuki
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