PCT出願とパリルートってどう違う?特許の外国出願を徹底解説!
日本で特許を取得した場合、その発明は国内では権利として守られますが、海外ではその権利は有効ではありません。つまり外国でもその発明の権利を独占したい場合、外国出願を行わなくてはなりません。
外国出願というとグローバルに展開する企業にだけ関係があるように思えますが、実はそうではありません。国内メインで事業を行う企業にとっても、海外の会社にアイデアや製品を盗用されてしまうことがリスクがあります。自社の発明や利益を守ると言った意味で、外国出願を考えた方が良い場合があります。
今回は外国出願について紹介したいと思います。
(監修)
相原特許商標事務所
外国出願の2つの方法
外国出願は大きく分けて2つの方法で行われるのが一般的です。
PCT出願(国際特許)
一般的に言われいる国際特許とはPCT出願のことであり、このPCT出願とは特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)という制度が適用されている国に、一括して出願のできる制度となります。
加盟国はアメリカやイギリス、中国を含む全世界の153カ国です。
加盟国の詳細は以下からご確認頂けます。
→PCT加盟国一覧
PCT出願は出願すれば加盟国で特許が取得できるというわけでなく、
PCT出願をした後に、権利を取得したい国へ個別の手続きが必要です。
この各国への手続きは各国移行(国内移行)と呼ばれます。
各国移行後に、国ごとに審査が行われ、権利取得となるのがPCT出願です。
手続きの方法
上記でも記載したある通り、PCT出願のプロセスは大きく分けて2つです。
- PCT出願
- 各国移行
PCT出願が日本での特許を出願してから1年以内、
各国移行は日本での特許出願から2.5年以内に行う必要があります。
各国移行の際には、各国にPCT出願の明細書等全文の翻訳文を提出する必要があり、多くの場合は現地の代理人に依頼し手続きを行います。
PCT出願の費用
PCT出願の場合
- 日本の特許庁に支払う手数料
- 国内特許事務所手数料(出願時・各国移行時手数料)
- 各国の特許庁に支払う手数料
- 現地代理人手数料
- 翻訳料金
が必要となります。
権利取得する国や、依頼する特許事務所によって料金は異なりますが、
米国で権利取得までに約80万円、欧州では約200万円と言われています。
PCT出願のメリット
PCT出願のメリットは以下が挙げられます。
- 出願手続きだけなら、日本の特許庁に日本語書類で行うことができる。
- PCT加盟国全てに、一括して出願手続きを行うことができる。
- 最大で2.5年まで、権利化するかどうかを検討することができる。
- 翻訳期間を長く確保することができる。
これらのメリットから、海外への特許出願を考えている人の多くが
PCT出願を検討しています。
出願したい国や状況に応じてパリルートが良いのか、
PCT出願が良いのかを判断しましょう。
パリルート
パリルートとは、特許を取得したい国にそれぞれ個別で出願を行う方法です。パリ条約に則り外国出願を行うことを指し、パリ条約ルートとも呼ばれています。
パリ条約は工業所有権の保護に関する国際条約であり、この条約には優先権についての記載があります。
この優先権とは、特許の出願がされてから1年以内であれば、他国での出願も初めに特許の出願がされた日を元に、
特許権利の有無が判断されるという権利です。
つまり、日本で特許を出願し1年以内であれば、他の国でも日本で出願された日まで遡って、発明の進歩性や新規性を判断してくれます。日本で出願したものが、他人によって他国で特許として権利化されることを防ぐことのできる仕組みです。
手続きの方法
手続きの方法は、日本での特許出願から1年以内に、出願希望国に特許の出願を行います。
一般的には、必要書類を揃えその国の弁理士(特許事務所)に代理人として特許庁に出願をしてもらいます。優先権を主張して出願を行う場合は、別途優先権証明書の提出が必要となります。
パリルートの場合、各国の法律に則って特許の出願を行うため、その国の法律に明るい現地の弁理士に依頼をするのが確実でしょう。多くの場合は、国内の特許事務所に依頼をし、その特許事務所が提携している各国の弁理士へ依頼といった流れになります。
パリルート出願での費用
パリルートでの出願の場合、
- 国内特許事務所手数料
- 現地代理人手数料(各国の特許事務所)
- 翻訳料金
- 各国の特許庁へ支払う手数料
などが挙げられます。料金はどの国に出願するのか、何カ国に出願をするのかなどによって大きく変動します。
パリルートのメリット
パリルートのメリットとして以下が挙げられます。
- 出願国が少ない場合はPCT出願よりも安価
- PCT加盟国以外にも出願が可能
- PCT出願よりも特許取得が早く行える
出願を考えている国が少数で、翻訳もすぐに用意できる場合は
パリルートで出願を行うのが良いでしょう。
外国出願に使える助成金
海外でビジネスを行う上で非常に大切な、外国への特許出願ですが
やはり費用が大きな負担となってしまいます。
東京都知的財産総合センターや日本貿易振興機関(JETRO)では、
外国への特許出願をサポートする助成金を用意しています。
外国出願を行う上で、大きな助けとなるので是非利用しましょう。
詳細はこちらの記事からご確認頂けます。
→特許出願に使える助成金(補助金)
まとめ
外国出願を考えている場合、どちらの出願ルートが自分に合っているか
しっかりと見極めることが重要です。
また特許は”早いもの勝ち”になってしまうので、何か発明をしたら
早い段階からしっかりと特許の出願を検討し、特許出願から取得まで
余裕を持ってスケジュールを組むようにしましょう。
費用的にも負担が大きいものですので、積極的に助成金を使って
少しでも負担を減らしましょう。
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