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Amazonの顧客視点の開発と訴訟を使った特許戦略を解説!身近なIT特許シリーズ!

今回はAmazon(アマゾン)の特許戦略を解説します。Amazonはテクノロジーを使って顧客の利便性を追求し、さらに特許もいち早く押さえることに成功しています。

Amazonの代名詞であるワンクリック特許やその他のサービスの利便性を向上させる技術に関連する特許を見ていき、Amazonの手法を企業の特許戦略に取り入れていきましょう。

<この記事で分かること>
・Amazonの顧客視点の開発技術を保護するビジネスモデル特許
・権利行使による特許の牽制力向上
・企業が学ぶべきAmazonの特許戦略

(執筆:知財部の小倉さん

Amazonのサービス

Amazon(アマゾン)はジェフ・ベゾスが創業した電子商取引を行う会社で、Amazonサイトでは本、食料品、家電など幅広い商品が購入可能です。さらに最近では、Amazon Web Services(AWS)というクラウドサービスも事業者向けに提供しています。

参考:Wikipedia(Amazon)

Amazon.co.jp: Amazon タブレット

Amazonといえば何といっても発注から宅配までのスピードですね。購入画面からワンクリックで商品を購入でき、自社の倉庫から自宅前まで1日ほどで届くのは驚きです。

この一連の流れの中でも特許技術が使われています。まずはAmazonの特許を見てみましょう。

顧客視点で開発された特許技術

「顧客至上主義」によって生まれた技術

Amazonの「顧客至上主義」はとても有名で、常にAmazon社員は「これは顧客のためになるのか?」と考えるよう教育されています。そして、仕組み化や業務削減を進めることにより、顧客へ提供する価値を最大化してきました。

ワンクリック特許

すでに権利は満了していますが、US5960411の関連特許として特許4937434特許4959817が日本で登録されています。

ワンクリック特許は、Amazonのオンラインショッピングに関する特許です。インターネットで購入する場合、住所、氏名、クレジットカード番号などを毎回入力する必要があります。ユーザーがそれらの情報をあらかじめ登録しておけば、画面上の専用ボタンをマウスで1度クリックするだけで商品の発注から支払い、配送までの手続きを完了できるシステムを特許登録したものです。

個人情報を入力する必要がなくなるので、時間が短縮できますし、セキュリティ面から見ても安全ですね。

Amazonは自社のサービスで本特許にかかる技術を活用しており、Appleに本特許をライセンスしています。他社も欲しがる技術として、オンラインショッピングの初期には本特許による差別化ができました。

Amazon Go(無人コンビニ)

新しいAmazonの特許として無人コンビニのAmazon Go特許(特許6463804)があります。サービスとしては、専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンを持って入店することでレジに並ばずに商品を購入できるという内容です。

特許としては、ユーザが商品棚に近づいた時と商品棚から離れた時の2回のタイミングでユーザーの手を撮影し、撮影した2つの画像を比較することでユーザが手に取った商品を特定して、ユーザーの購入リストに追加するという内容です。

まだ無人コンビニというサービスが広まっていませんが、将来的に新型コロナ感染対策としてレジを無人化したくなっても同じ方法をとることができません。

ワンクリック特許やAmazon Goなどソフトウェア特許の取り方については、こちらの記事で詳細に解説しています。
→ 参考:ソフトウェア特許の取り方を知財部の目線から解説!

権利行使による特許の脅威

特許による差し止めで模倣を減らす

Amazonはワンクリック特許を広い権利範囲で登録したことだけでなく、訴訟で活用することで他社に「Amazonのマネをしたら訴訟を起こされる」という印象を植え付けることができました。このことで、Amazonのワンクリック方式を模倣する競合はかなり減ったと思われます。

本特許は米国の他に日本、欧州、カナダ、オーストラリアなど外国にも出願されています。米国ではバーンズ・アンド・ノーブルという米国最大の書店チェーンを相手に訴訟を起こし、バーンズ・アンド・ノーブルは開発したシステムを設計変更することになりました。

新規事業は契約で制限?AWSの戦略

Amazon Web Services(AWS) というクラウドサービスでは、先行してマイクロソフトやグーグルなど他社が既に開発を進めている領域だったためか、本サービスの顧客との契約において「特許非係争条項」を設けていたようです。

この条項は、「顧客が知的財産権侵害で同社を訴えることを禁じる」条項で、顧客としては特許問題でサービスが停止されても文句が言えなくなるので、利用しづらいというデメリットもありました。

サービスが安定して特許訴訟も無いことが確認できたのか、 特許非係争条項 は2017年7月に契約から削除されています。

参考:米アマゾン、クラウドサービスで「特許非係争条項」削除

企業としてAmazonの知財戦略から学べること

顧客が視点で考え続け、他社に先行して出願する

Amazonは顧客至上主義によって、常に顧客のためになるサービスを考え続けたからこそ、ワンクリック特許のような先進的な特許を取得できたのだと思います。

一時期はワンクリック特許のようなビジネスモデル特許が流行して、とりあえず出願しておくという流れがありました。しかし、Amazonは顧客至上主義によって、他社に先駆けて新サービスを開発し、その結果を素早く出願するといった王道の出願方針を採用していました。

企業として、当たり前特許やビジネスモデル特許などの言葉に惑わされず、顧客が求めるものを最速で提供し、最速で出願するという姿勢を見習うべきと思います。

特許は取得するだけでなく、使うことで価値が向上する

Amazonはワンクリック特許を積極的に権利活用したことも、他社が技術を模倣しなかった理由の一つです。どうしても日本企業は権利行使をしたくないと思いがちです。米国のように損害賠償金額が高くないので、弁護士費用のほうが高くつくという事情もあります。

しかし、有名な企業を見定めて、他の企業への見せしめとして訴訟を提起することで、模倣する企業も減り特許の牽制効果がさらに高まります。

まとめ

本日はGAFAの一つとしてAmazonの特許戦略を解説しましたが、いかがでしょうか?

顧客が求めるものを最速で開発したとしても、IT業界は競争が激化しているため、他社に先駆けて出願をするためには弁理士など専門家への出願相談も開発と同時に行う必要があります。

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