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共同開発した技術を特許で守ろう!共同出願のポイントを解説

共同出願特許とは?関連用語と合わせて解説

ビジネスにおいて、複数の会社による共同開発の過程で発明が生まれることもあります。

その際、発明者は誰なのか、利益の持分はどの程度なのかなどを決めておく必要があります。

それらの明確化のために行うのが、特許の共同出願です。

本記事では、共同出願特許に関する基礎知識、共同出願を行うメリット・デメリットをまとめました。

共同開発により得られる自社の利益を確保したり、今後の研究を保護したりするための参考となればうれしいです。

共同出願とは?

複数の会社などによる発明にも、特許を受ける権利が生じます。この発明に関して、共同で行う特許出願が共同出願です。

特許法第38条にて、共同出願は以下のように定められています。

(共同出願)

第三十八条 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。

もし共同開発を進める中で、特許出願できる技術の存在に片方の会社だけが気づいたとしても、単独で出願してはいけません。

共有者の一部のみで出願したことが拒絶理由となり、せっかくの発明が権利化されないおそれがあるのです。

共同発明者とは?

共同発明者とは、共同開発において、これまでに知られていない技術的な課題やその解決方法を見つけた人たちを指します。

各企業の実務担当者が実験を繰り返しながら、協力して技術的な課題を発見・解決したのなら、その実務担当者らが共同発明者となります。

ここで、単なる管理者・上司・実験の補助者は共同発明者に含まれません。

特許出願のための書類に誤った発明者を記載してしまうと、特許権が無効になることもあるので注意が必要です。

共同発明者が企業の社員と一個人であった際に、企業側が勝手に単独で出願したのが原因で、訴訟となる場合もあります。

共同発明者が誰であるかは、共同出願前の確認ポイントの一つであると覚えておきましょう。

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共同出願特許のメリット3つ

共同出願により得られるメリットには、単独で出願した場合と同様のものや、共同出願ならではのものがあります。

  • 第三者による発明の実施を妨げられる
  • 出願の手続きにかかる費用を分担できる
  • 提携の強化により共同研究が促進される

単独での出願の場合と比べながら、それぞれの詳細を見ていきましょう。

1.第三者による発明の実施を妨げられる

特許出願・権利化の主な目的は、他人に真似をされないための独占排他権を得ることです。

これは単独出願と共同出願のいずれにおいても変わりません。

共同出願を行うことで、特許出願した発明を他人が模倣できなくなります(専門的には、実施できなくなる、と言います)。

多額の費用が投資され、各企業の技術の相乗効果により生まれた発明を、簡単に真似されるわけにはいきません。

少しでも共同開発により得られた知見・試験結果があれば、特許出願の可否を検討すべきでしょう。

2.出願の手続きにかかる費用を分担できる

共同出願の場合、権利の持分に合わせて出願費用を分担するのが一般的です。

特に外国出願の手続きには、手数料を含め数百万円かかりますが、共同出願であればこの費用負担が軽くなります。

そのため、コストが理由で出願・権利化を諦めずに済むかもしれません。

また特許出願後には、審査請求・年金納付など、追加費用の生じるタイミングが複数あります。

さらに共有者と特許を管理することで、手続きの費用軽減に加え、支払い期限の見落とし防止も期待できます。

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3.提携の強化により共同研究が促進される

共同研究の成果を権利化することで、その発明を第三者が実施できなくなります。

特許権が存続する限りその発明を独占的に使用しながら、さらなる共同研究を進められます。

共同出願特許により、目先の発明を保護するだけでなく、継続的な改良発明の誘発が期待できるのです。

第三者からすると、複数の競合他社による発明・技術へ対抗するのは容易ではないでしょう。

長期的な自社の経営継続のためにも、特許出願戦略は重要な役割を果たします。

共同出願特許のデメリット3つ

共同出願特許のデメリットとして、

  1. 共有者と共同でなければ出願後の手続きを進められない
  2. 単独で権利を使用できなくなるリスクが生じる
  3. 共同出願契約を締結する手間がかかる

などが挙げられます。

共同開発では、各社の技術が持ち寄られて進められるため、優れた発明が生まれる可能性が少なくありません。

しかし共同であるが故に、その発明を扱いにくくなることがあります。

共同出願の必要可否を正確に判断できるよう、それぞれの詳細を見てみましょう。

1.共有者と共同でなければ出願後の手続きを進められない

共同出願の場合

  • 持分の譲渡
  • 取得した権利のライセンス
  • 権利化する内容・国

といった出願後の手続きを行なう際は、共有者の同意を得なければなりません。

例えば特許法第33条3項に持分、4項にライセンスについて記載されています。

(特許を受ける権利)

第三十三条 

3 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。

4 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、仮専用実施権を設定し、又は他人に仮通常実施権を許諾することができない。

発明の共有が、時には自社の事業の妨げとなり得ます。そんなリスクを抑えるため、共同出願を行なう前に、

  • ライセンスにより、共同開発を進めたいパートナー・製造委託先がいるか
  • どの国で権利を取得するための手続きを進めるか

などを明確にし、出願・権利化後に発生する手続きを円滑に進められるようにしましょう。

2.単独で権利を使用できなくなるリスクが生じる

当たり前かもしれませんが、共同で行われた発明は勝手に使用できません。

単独使用できないことが、思わぬ不利益をもたらす可能性があります。

いくつか事例をご紹介します。

例1

企業AがX事業とY事業を、企業BがX事業を行っています。

企業A・BがX・Y事業の両方で使用できる技術に関して、共同出願したとします。

単独使用が許可されていなければ、企業Aは実質、Y事業において特許権を使用できません。

そのため共同出願時に、企業AはY事業における特許権の使用制限を受けないことを取り決めておくべきです。

相手に不利益が生じないのを前提に、単独使用したい事業があれば説明をしておきましょう。

例2

個人Cと企業Dが特許権を共有しているとします。

個人Cが製品を製造・販売する手段を持っていない、かつ単独使用が許可されていない場合、Cは特許権を保有していても収益を得られません。

そのためCは、特許で収益を得るために、共同出願時に別会社へのライセンスを企業Dに承諾してもらうべきです。

ライセンスが許されず、かつ各共有者が特許権から得る利益が異なるのならば、利益の具体的な分配方法を決めておきましょう。

3.共同出願契約を締結する手間がかかる

共同開発の中で生まれた発明に関する、特許出願を行なう際に、共同出願契約という契約が必要です。

この契約は様々な内容を含むため、締結するのに大きな手間がかかります

契約には、例えばこんな項目が盛り込まれます。

  • 出願の対象となる発明
  • 出願を行う国
  • 権利の持分
  • 出願にかかる費用分担
  • 第三者へのライセンス
  • 発明を改良した場合の取り扱い

契約で各項目について明確にして初めて、これまでご紹介した共同出願特許のメリットを最大化でき、デメリットを最小化できます。

締結には手間がかかりますが、共同出願後における自社のビジネスのために、慎重に契約内容を検討するようにしましょう。

まとめ

共同発明は、各社の強みが活かされた魅力的な技術です。

一方で、特許権の観点からは、取り扱いに注意の必要な点が多くあります。

共同開発により生まれた技術を第三者に公開する前に、考えられるリスクを共同出願とそれに関する契約により解消しておきましょう。

共同開発をすでに進められている、もしくは今後行う可能性がある人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

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