国際特許出願(PCT出願)の検索方法!
国際特許出願の検索方法は?
どのような国際特許出願(PCT出願)がなされているのか調べてみたいと思うことがあるかと思います。
そのような場合、どのように調べるとよいのでしょうか?
調査の方法は、何を調べるかによって大きく異なるので、調査の方法ごとに解説させていただきます。
(執筆:柴田純一郎 米国弁護士/弁理士)
(1)弁理士や調査会社に依頼する方法
調査と言えば、専門家に依頼する方法がまず考えられます。
調査の対象が、
- 類似の発明の出願有無
- 無効理由の調査
- 出願動向の調査
など、技術的な内容に踏み込んだものである場合、かなりの専門性を要する調査となります。
よって、弁理士や調査会社に依頼するのが時間的にも費用的にも節約になるといえるでしょう。
確かに後述の検索サイトを使えば、キーワードなどを使って、自分でもある程度の検索ができるように見えるかもしれません。
しかしながら、例えば、貴社が「ロボット」について先行する国際特許出願を検索しようとする場合、検索バーに「ロボット」と入れて検索をすると、まず膨大なヒット結果を見て圧倒されることになるでしょう。
次にその1個1個を確認していくと、その多くが貴社の探していたロボットに関する情報ではないことが判明するかと思います。
また、もし貴社の求めている「ロボット」にぴったりと適合する先行出願があったとしても、その先行出願の中で「ロボット」という言葉を用いずに、例えば「自動作業機」のような言葉で「ロボット」を表現していたとすると、この先行出願は貴社の検索結果には表示されません。
このように、技術情報をキーワード検索しようとすると、関係のない膨大なヒット結果に圧倒されるとともに、本当に必要な情報は漏れてしまうということも十分に考えられるものなのです。
PCT出願の事務を担当する国際事務局(International Bureau)を含む世界各国の特許庁においては、特許出願に対して専門の分類コードを割り当てて(一般的には国際特許分類(IPC)、各国によってさらに下位の分類が割り当てられます。)、管理しています。
必要な情報のみを漏れなく吸い上げるには、この分類コードの仕組みをよく理解した上で、分類コード+キーワードを多角的に組み合わせて検索をしていくことが必要となります。
このようにすれば、上記の例のように、「ロボット」の代わりに「自動作業機」のような用語が使用されていたとしても、単純なキーワード検索よりは、より効率的に先行出願を拾い上げる可能性を高めることができます。
よって、技術的な内容に関する調査は、弁理士や調査会社に依頼することをお勧めします。
(2)自分で検索する方法
例えば、引例として引かれた文献が国際出願に由来するような場合、この引例の基礎となった国際出願を調べてみたいと思うこともあるかと思います。
このように、調べるべき文献の番号が判明しているだとか、出願人や発明者、出願年などが判明している特定の文献を調べる場合には、自分で検索しても問題なく結果を得られるだろうと思います。
自分で調べた方が、費用がかからないですし、また好きな時間に調べられるので、なるべくそうしたいですね。
以下で検索方法をご紹介します。
(3)検索方法
国際特許出願を検索する場合、世界知的所有権機関(WIPO)の公開するPatentscopeをデータベースとして使用します。
例えば、国際公開公報の番号が判明している場合、左側の検索フィールドを「表紙[フロントページ]」又は「ID/番号」に設定し、右側の検索用語欄にその番号を入れることで検索することができます。
もし同一の発明者や出願人が過去に出願した国際出願全部を調べたい場合には、同様に左側の検索フィールドを「表紙[フロントページ]」又は「氏名[名称]」に設定し、右側の検索用語欄にその氏名・名称を入れることで検索することができます。
上記で紹介したのは、「簡易検索」と呼ばれる最も基礎的な調べ方になりますが、例えば出願年を絞りつつ、特定の出願人が日本語で行った過去の出願全部を調べたい場合、「詳細検索」や「構造化検索」などを使って複合的に調べていくことになります。
なお、Patentscopeの使い方は、WIPOがこちらで解説していますので、ご参考いただければと思います。
パリルートで出願する場合の検索方法
パリルートで出願する場合も、自分の発明の権利化の障害となる可能性のある先行出願・特許を調べておきたいという事情があると思います。
国際出願同様、何を調べるかによって調査方法が大きく異なる一方、国際出願と異なって、調査は原則として国別に行わなければなりません。
後述のように、ワンストップで検索できるサービスも台頭していますが、基本的には各国の事情に精通していないと効率的に情報を吸い上げることができないところが、パリルートでの調査の難点です。
以下、調査の方法ごとに解説させていただきます。
(1)弁理士や調査会社に依頼する方法
国際出願同様、調査の対象が、
- 類似の発明の出願有無
- 無効理由の調査
- 出願動向の調査
など、技術的な内容に踏み込んだものである場合、専門家に依頼すべきといえます。
その理由は上述のとおりです。
一方、専門家として誰を起用すべきか?という点については、上述のとおり、特許分類が国によって異なる可能性があるので、現地代理人、当該国の特許分類に精通している日本弁理士又は調査会社を起用するのが効果的です。
特に現地代理人に依頼する場合、貴社の期待値(何を調べたくて、どんな情報を吸い上げたいのか)をきちんと共有した上で依頼しないと、全然期待値にそぐわない結果が返ってくることも考えられます。
現地代理人に調査を依頼するに際しても、日本弁理士に仲介してもらい、調査実務について知識のある者同士で調査の仕様を固めていくことをお勧めします。
また、国によって調査の相場がまちまちであるので、後で請求を受けて驚くことのないよう、事前に調査費用の見積もりも取得しておくと安心でしょう。
(2)自分で検索する方法
自分で検索しても問題ない対象としては、国際出願同様です。調べるべき文献の番号が判明しているだとか、出願人や発明者、出願年などが判明している特定の文献を調べる場合には、自分で検索することで、費用・時間の節約、調査の効率を図ることができます。
以下で主要国の検索方法をご紹介します。
(3)検索方法
各国別の検索サイトをリンクいたします。
アメリカの特許検索サイト
- 特許検索(登録済特許の検索):US Patent Full-Text Database Manual Search (uspto.gov)
- 特許出願検索(公開公報の検索):US Published Application Full-Text Database Number Search (uspto.gov)
- Google Patent:Google Patents Advanced Search
※アメリカ特許商標庁公式の検索サイトは、上記の上2つとなりますが、そもそも登録済み特許と公開特許出願とでデータベースが分かれている点で使いにくく、またデータ入力形式も慣れるまで戸惑うので、アメリカについては、Google Patentの利用をお薦めします。
欧州の特許検索サイト
※「Search」欄に番号や検索語を入れて、「Patents」ボタンを押すと検索できます。EPOの検索エンジンは、対応するファミリー出願の情報やその引例まで引っ張ってくれるので、非常に便利です。
中国の特許検索サイト
Patent Search and Analysis (cnipa.gov.cn)
※中国知的財産局公式の英語による検索サイトです。英語で検索できる点は、中国外の出願人にとって便利ですが、事前登録が必要な点においてハードルがあります。EPO検索サイトやGoogle Patentでもかなりの情報を拾えるので、これらをまず試してみることをお勧めします。
韓国の特許検索サイト
※韓国特許庁公式の検索サイトです。英語で検索可能です。
台湾の特許検索サイト
Taiwan Intellectual Property Office-Topics-Patents (tipo.gov.tw)
※台湾知財局公式の検索サイトです。英語で検索可能です。
インドの特許検索サイト
Intellectual Property India (ipindiaservices.gov.in)
※インド特許庁公式の検索サイトです。英語で検索可能です。
ワンストップで主要国の特許が検索可能なサービス
上述のとおり、各国特許庁の公式検索エンジンで調べるのが基本形となりますが、どこの文献かによって検索エンジンを使い分けるのは、非常に手間ですよね?
そのような場合、ワンストップで検索可能なサービスがあるので紹介します。
- 日本国特許庁のサービス:特許・実用新案番号照会/OPD|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)
※国を選んで番号を入力すれば、日本語で外国文献が検索できます。出願人や発明者などで検索したい場合には、特許・実用新案検索|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)を使用します。ただし、サービス提供時間が制限されていたり、番号検索かそれ以外かで使い分ける必要がある点にご留意ください。
- 欧州特許庁のサービス:EPO – Searching for patents
※上述のとおり、ファミリー情報を一覧で出してくれるので非常に使い勝手がよいです。外国出願実務者には必須のアイテムといっても過言ではないでしょう。
- Google Patent:Google Patents Advanced Search
※アメリカや欧州の特許や特許出願については、ほとんどが収録されているように聞いています。収録対象の国は、順次拡大されているようです。
特許の調査は知財タイムズへ!
上記でも述べているように、踏み込んだ調査が必要な場合は弁理士に任せるのが一番です。
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弁護士(米国カリフォルニア州)及び弁理士(日本)。国内事務所において約4年間外国特許、意匠、商標の実務に従事した後、米ハリウッド系企業における社内弁護士・弁理士として10年強エンターテインメント法務に従事。外国特許・商標の他、著作権などエンタメ法が専門。
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