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特許請求の範囲、特許請求項とは?弁理士が詳細解説

特許出願の段階において耳にする、特許請求の範囲、特許請求項、など「なんとなくは分かるけど・・・」という方も多いのではないでしょうか。

ご安心ください。今さら聞けない基礎知識について、弁理士が詳細に解説します。

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特許請求の範囲とは

「特許請求の範囲」とは、特許出願の願書に添付すべき書類の1つです。

特許法第36条第2項において、「願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。」と明確に規定されています。

以下、さらに具体的に説明します。

位置付けと役割

特許請求の範囲には、出願人が特許権として権利を取得したい事柄を記載します。

特許法第36条第5項で、「特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」と規定しています。

そして特許権の権利範囲は、原則この特許請求の範囲の記載に基づいて定められます

特許法第70条第1項にて、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定されています。

特許請求の範囲は、権利範囲を定めるという点において、「権利書」としての位置付けと役割を有します。このため、特許請求の範囲は最も重要な書類です。

記載の仕方

特許請求の範囲では、「請求項」と言われる項に区分して、特許出願人が特許を受けようとする発明を説明します。

ここで記載すべき事項について、特許法上では「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」と規定されています。

「特許出願人が必要と認める事項のすべて」とありますが、これは、主観的要件です。その点では、特許出願人が必要であると思えば何を記載してもよい、すなわち、何を記載するかは特許出願人の自由、ということにもなります。

そうは言いましても、特許請求の範囲は「権利書」としての位置付けと役割を有しますので、記載の仕方についてある程度の規定も必要です。

【特許請求の範囲の記載要件(特許法第36条第6項より)】

一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。(サポート要件)

二 特許を受けようとする発明が明確であること。(明確性要件)

三 請求項ごとの記載が簡潔であること。(簡潔性要件)

四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。

各要件の詳細については後述します。

請求項とは

請求項とは、保護を受けたい発明を記載した項のことを言います。特許請求の範囲には、複数の請求項を記載できます。そして、この「請求項」には2つの種類があります。

  • 独立請求項
  • 従属請求項

独立請求項

独立請求項は、他の請求項を引用しない形式で記載される請求項です。他の請求項の内容に影響を受けず、他の請求項とは独立してそれ単独で発明を規定することも可能です。独立請求項とか、独立クレーム、などとも言われます。

「請求項」のことは「クレーム」とも言われますが、英語の「Claim」のことであり「請求する」、もっと言えば「クレーム」とは「権利範囲の請求」、という意味となります。

クレームのうち、もっとも権利範囲が広い上位のクレームを「メインクレーム」などと言ったりもします。

特許での「クレーム」とは、苦情を言う「クレーマー」という意味での「クレーム」ではありませんよ。

従属請求項

従属請求項は、先行する他の請求項を引用して書かれる請求項のことで、例えば「請求項〇に記載の・・・において」という形式で記載されます。

引用する請求項で特定される特徴に、さらに、別の特徴を備える、というように、特徴を付加的に規定する際に採用される記載様式です。

「従属クレーム」とか、「サブクレーム」などとも言われます。

特許請求の範囲に書く内容

特許請求の範囲の記載内容はある意味自由ですが、前述した要件を満たすように書かなければいけません。

  • サポート要件
  • 明確性要件
  • 簡潔性要件

サポート要件

先に述べましたように、特許請求の範囲は「権利書」ですが、あまりに広い権利範囲を主張することは公平性の観点から許されていません。しっかりと裏付けがある範囲で主張すべし、とされています。

特許法第36条第6項第1号には、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定されています。特許請求の範囲の記載(言い換えれば、主張する権利範囲)は、発明の詳細を説明するとき、具体的なサポート・裏付けがある必要があります。

あくまで具体的なサポート、裏付けがある範囲で権利を主張しましょう、ということですね。

明確性要件

特許請求の範囲は「権利書」ですので、その説明が曖昧である場合、権利範囲が不明確となります。そうすると、権利者も、権利者以外の第三者も困りますよね。

このため、権利範囲が明確であるように記載することが求められます。記載が不明確であると、権利取得が認められなかったり、いったん権利が成立しても後々無効とされる場合もあります。

簡潔性要件

特許請求の範囲の記載は、明確であることに加えて、簡潔である必要があります。

特許請求の範囲の記載によって規定される権利範囲が、誰にとっても疑義が生じず分かりやすいものであることが求められるのです。

簡潔でない記載は、権利範囲を不明確にし、例えば権利者以外の第三者に不当な不利益を及ぼす可能性があるためです。

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特許請求の範囲と特許権との関係

これまでご説明したように、特許請求の範囲は、権利範囲を規定するという意味では特許権そのものであると言えます。繰り返しになりますが、特許請求の範囲=権利書、です。

なお願書に添付する書類には、特許請求の範囲の他に明細書、必要な図面、要約書、があります。

明細書および必要な図面は、特許請求の範囲(権利書)に対して、権利に関わる思想・技術がどのようなものであるかを説明する「説明書」の位置付けと役割を有します。

要約書は発明の概要を速やかに、かつ的確に判断できるように、発明の概要を簡潔に記載したものです。特許の出願書類は、一定期間後、誰でも閲覧できるように公開されますが、そのような公開文献の調査等に資するよう、願書に添付することが求められています。

ちなみに裁判等での争いになると、基本的には、特許請求の範囲が規定する権利範囲がどのようなものか、権利範囲はどこまでか、という点に着目して判断を行います。

このような目線で特許請求の範囲を見て頂くと面白いと思います。

まとめ

以上、特許請求の範囲、特許請求項について説明しました。

特許請求の範囲は、特許権という法的な効果を発揮する書類ですので、専門的な知識、経験、スキルが高いレベルで求められる書類です。

専門家ではない素人にとってはこのような書類を作成することは困難(ほぼ無理)です。なんとか見よう見まねで作成できたとしても、権利書として有効に機能することは残念ながらほぼ期待できません。専門家に依頼するのが賢明です。

特許請求の範囲を、権利書として有効に機能するよう適切に作成する力は一朝一夕身につかず、ここは、専門家たる弁理士の腕の見せどころです。

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