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【セカイチ知財-Vol.7-】必須特許理論について(その1)

世の中は知財に対する迷信で満ちています。

誤解したままで知財に注ぎ込むお金は無駄金です。知財戦略を世界で一番分かり易く解説します。

「セカイチ知財」は名古屋に事務所を構えるブライテック特許事務所が、知財戦略を世界で一番分かり易く解説します。

「世界一分かり易い知財戦略(セカイチ知財)」を読んでいれば、知らない間に正しい知財戦略をイメージできるようになります。

(文責:ブライテック特許事務所 所長弁理士 三林大介)

必須特許理論について(その2)

特許を正しく使うためには、何をおいても「必須特許理論」を知っておかなければなりません。この必須特許理論は、弁護士の鮫島正洋先生が提唱された理論で、特許を使って事業をするためには最も重要な理論です。

必須特許理論は、一言でいうと、

  • 『必須特許を持たない企業は、市場からの撤退を余儀なくされる』

ということです。

ここで「必須特許」となっていることが重要です。

どんなに多くの特許を持っていても関係ありません。
その中に必須特許が含まれていなければ市場から駆逐されてしまうという点がポイントです。

ちなみに必須特許とは「ある製品を作ろうとすると、どうしても使わなくてはならない特許」のことです
(詳しくは第6話をご覧下さい)。

必須特許理論を例を用いて解説

必須特許理論についても例を用いて説明しましょう。

仮に、年間売上金額が100億円の市場を、A社、B社、C社の3社で分け合っていたとします。

話を簡単にするために、シェアは1/3ずつだとしておきましょう。この市場には5個の必須特許を含めて20個の特許が存在しており、それらの保有状況は次のようであったとします。

  • A社 → 必須特許:4個、 非必須特許: 0個 (保有特許数: 4個)
  • B社 → 必須特許:1個、 非必須特許: 3個 (保有特許数: 4個)
  • C社 → 必須特許:0個、 非必須特許:12個 (保有特許数:12個)

C社は、半分以上の特許を持っていますが必須特許は1つも持っていません。この場合、C社は必ず市場から駆逐される運命にあります。その理由は以下のようなものです。

先ず、必須特許とは「どうしても使わなくてはならない特許」のことです。
また、必須でない特許(非必須特許)とは「その特許を使った方が、性能が上がったりあるいは製造コストが下がったりするので、使った方が良い特許」のことです。

そして特許法には、特許権者は、競合他社が自分の特許を使っている場合、その競合他社に対して、

「自分の特許を使うな!」
「特許を使った製品在庫や、その製造用の設備は全て破棄しろ!」
「これまでに特許の製品を売って得た利益は全部よこせ!」

と要求することができると定められています。

仮に、A社が自社の特許を使うなと言ってC社を訴えたとします。
すると、対抗手段として、C社は自社の特許を使うなと言ってA社を訴え返すことになるでしょう。

ここで、A社の特許は必須特許なのでC社は必ず使っています。

これに対してC社の特許は必須特許ではないので、A社が使っているとは限りません。

C社の特許を使っていなければ、A社は訴えられても痛くも痒くもありません。また仮に使っていたとしても、(必須特許ではないので)設計変更するなどしてC社の特許を逃れることが可能です。

逃れた結果、性能が少し落ちたり、コストが少し上がるかも知れませんが、A社はC社の特許を使わない形で製造を続けることが可能です。
ところが、A社の特許は必須特許なので、C社は設計変更で対策することは不可能です。従って、C社は製造を続けることができなくなり、市場から撤退する以外に道がなくなるのです。

「特許紛争が起きるとは限らないじゃないか」と思うかもしれません。しかし、C社を撤退させることができたら、C社の売上をB社と分け合うとしても、A社は売上が33億円から50億円に跳ね上がる筈です。そう考えると、C社を訴えて市場から追い出そうとしないことの方が不思議です。

C社は他社より多くの特許を持っているので、技術力はあるのかも知れません。それでも、ひとたび必須特許を持っていないことが知られてしまうと、必ず他社から訴えられて市場から追い出される運命にあるわけです。

A社がB社を訴えた場合は?

では、A社がB社を訴えた場合はどうなるのでしょうか。A社は必須特許を4つも持っているのに対して、B社は1つしか必須特許を持っていませんので、B社の方がだいぶ不利な気がします。

しかし、A社に訴えられたらB社はA社を訴え返せば良いのです。何故かというと、B社の特許は必須特許ですので、A社もB社の特許を使わなければ製造を続けることができません。もちろん、B社もA社の特許を使えなくなるので製造を続けることはできませんが、A社を道連れにすることができます。

A社も道連れにされては困りますから、そもそもB社を訴えるようなことは絶対にしません。

つまり、

「1つでも必須特許を持っていれば、特許で訴えられて市場から追い出されることは無い。」

逆に、

「必須特許を持っていなければ、如何に多くの特許を持っていても、必ず市場から追い出される運命にある。

ということになります。これが必須特許理論です。

まとめ

必須特許理論から直ちに言えることは、

  • 特許には極めて価値の高いものと、ほとんど無価値なものの2つしかない

ということです。

ですから、是非一度、自分に問いかけてみて欲しいと思います。

「複数の特許を持っているから大丈夫だとは思っていませんか?」
「良いアイデアだからといって、むやみに特許を取ろうとしていませんか?」

この必須特許理論からは知財戦略上の重要な原則が導かれることになります。
次回はこの点について説明したいと思います。

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