特許の価値評価はどうやってする?その重要性とは?
製品の技術開発や技術研究を行っている企業の多くは、特許出願をしていますよね。
その出願が特許として認められ権利となったとき、その価値はどれくらいあるのでしょう?
特許の有する価値の評価、また、特許を利用した事業価値の評価は、今後の企業の在り方に大きく影響を与えるので、とても重要になってきます。
今回は、特許の価値評価、そしてその重要性について解説します。
特許の価値評価は重要!
特許の価値評価をすることで、
- 企業の経営戦略や事業展開
- 将来の新規事業の探索
- 資金調達
などに役立てることができます。
そのために、企業が所有している特許権、商標権等の知的財産権を無形資産として明確にして、その技術的、法的、金銭的な価値を分析し評価します。
特許の評価手法には種類がある
特許の評価には2つの意味の評価があります。
「定性的評価」と「定量的評価」です。
特許の評価を行う際、
- 基礎的な技術である
- 既存技術を単に改良した技術である
- 権利化されている
- 権利残存期間が十分ある
- 有効な権利である(無効理由がない)
などを考慮して行います。
これは、技術的、法的にされる評価であり、「定性的評価」と言われます。
また、
- 企業が保有している技術の経営資産としての価値
- ライセンスを行う場合のロイヤルティ額
などの金銭的な評価は「定量的評価」と言われます。
このように、特許の評価には、定性的な意味合いと定量的な意味合いの評価が存在します。
金銭的価値の評価だけをすればいい?
特許の価値評価というと、やはり金銭的な価値を算出する「定量的評価」が重要視されます。
もちろん、金銭的価値の評価は重要ですが、金銭的な評価である「定量的評価」を行うためには、技術的、法的評価である「定性的評価」の結果が必要となってきます。
適切に特許の価値を評価するためには、まずは「定性的評価」を分析して、特許の性質を的確に把握することが大切です。
特許の価値評価の具体的な方法は?
先ほど述べたように、価値評価には「定性的評価」「定量的評価」がありますが、一般的に金銭的な評価を行う定量的評価の考え方として、
- コスト・アプローチ
- マーケット・アプローチ
- インカム・アプローチ
3つの評価方法がありますので、以下にご紹介いたします。
コスト・アプローチ(原価法)
コストアプローチは、対象となる資産を入手・開発するために要する費用の積算額から資産の価値を決定するものです。
資産を入手・開発するために必要な費用なので、算定根拠が明確です。
例えば、コスト・アプローチで特許権の価値を算出する場合は、出願から登録までの特許庁費用や、出願原稿作成や中間対応の代理人費用を積算したものになります。
この評価方法は、評価額が客観的に決定しやすいというメリットがあります。
しかし、デメリットとして、資産が生み出す収益などの価値が反映されていない点があげられます。
特許といっても、発明の内容によって高く評価されるものと、そうでないものがあります。すべての特許に対してコストアプローチで評価をすると、権利譲渡やライセンスを行う場合に、契約の相手方の納得感が得られにくい場合があると考えられます。
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マーケット・アプローチ(取引事例比較法)
マーケットアプローチは、資産が該当する取引市場での一般的な価格で、その資産の価値を評価する手法です。
この評価方法は、一般的な価格を参考にするものなので、評価の仕方としては信頼性が高いと言えます。
しかし、特許の価値評価の場合、取引市場での一般的な価格というものが存在していない場合もありますので、評価を行うことが難しいというデメリットもあります。
インカム・アプローチ(収益還元法)
インカムアプローチは、将来期待される経済的利益をもとに、資産の価値を評価する手法です。
この手法は、その資産を実際活用することで将来獲得される利益を評価の対象とするので、価値概念に最も近い性質と考えられ、特許の価値評価においては主流となっている手法です。
しかし、将来の予測に対しては、不確実なものもあるため、評価の際の各数値の信頼性や安定性が重要であり、正確な価値の算出には難しさがあります。
とはいえ、特許を利用した事業が高く評価されれば、必然的に利用している特許の価値評価も高くなると推測されますので、インカムアプローチで評価を検討することは有用であると言えます。
また、インカムアプローチで特許の価値を評価する場合は
- 事業において当該特許が必要不可欠である
- 先行技術調査等において、特許性を否定するような証拠がないこと
などの、条件が満たされた場合、インカムアプローチの評価方法を採用することができます。
上記の通り、3つの評価方法をご紹介しましたが、それぞれメリット・デメリットがあります。
評価対象や評価の場面に応じて、どの手法を選択したらよいのかを適宜判断して行う必要があります。
インカム・アプローチに属する評価法
インカム・アプローチに属する評価法として、
- 資産分割法・・・無形資産価値×技術のウエイト(特許技術の寄与率)
- 25%ルール法・・・事業価値or収益×25%
- 利益三分法・・・事業利益×1/3
- ロイヤリティ免除法・・・売上高×実施料率
があります。
このうち、25%ルール法について以下にご紹介します。
25%ルール法とは?
事業価値の25%を技術の価値とみなす評価方法は、25%ルール法と呼ばれています。
例えば、特許権を第三者に許諾する場合にロイヤリティを設定するとします。
ロイヤリティは特許権者と許諾者との間で決定されるもので、いくらにしなければいけないという決まりもありません。
その場合に交渉のたたき台を作るためにこの25%ルールが有用です。
特許権の許諾を受ける人の営業利益の25%をライセンスの対価として算出します。
具体的には、
- 対象の特許を実施した許諾者の商品の見込み利益を算出→例えば利益40%
- 利益40%に25%をかける→実施料率10%
- 実施料率10%に純売上高をかける
ことで、特許権者が得る対価の額を算出することができます。
まとめ
企業の経営戦略や事業展開、将来の新規事業の探索や資金調達に役立てることができる特許の価値評価。
特許の価値評価については、評価方法が複雑でなかなか分かりにくいところではあります。
今回は、特許の価値評価について大きく2つに分け、「定性的評価」である技術的評価・法的評価と、「定量的評価」である金銭的評価をご説明いたしました。
この評価はどれも重要であり、定性的評価があってこそ、正確な定量的評価が行えます。
例えば、法的な評価を行い、もしも対象の特許権に無効理由が存在する可能性があると分かったとき、金銭的な評価ができなくなることもあるでしょう。
そうならないためにも、正確な法的評価が必要となってきます。
また、大きく分けた2つの評価の中でも、評価対象や評価の場面によって、複数の評価方法の中から適宜選択して評価を行う必要があります。
特許の価値評価は重要ではありますが、なかなか簡単に行えるものではなく、判断が難しい場合もありますので、弁理士など特許専門家に依頼することをおすすめします!
家電メーカー、遊技機メーカーの知財部として20年以上勤務。
出願、調査から無効審判、特許訴訟、特許管理業務まで色々な知財業務を担当したワーキングママです♪
趣味はピアノ。知財歴より長い30年以上!人気のあるアニメ曲を弾いて、子供たちに好かれようとしています笑
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