知財ニュース 2025.12/2026.01

AI知財「実装の時代」へ~日米欧特許庁、運用・活用で連携加速~
生成AI(人工知能)を巡る知的財産権のあり方が、大きな転換点を迎えている。2025年12月から2026年1月にかけて、日米欧の特許庁はAI支援発明の審査基準を相次いで整理し、行政業務へのAI導入にも踏み出した。米国では司法が「AIは発明者になり得ない」との原則を維持する一方、特許庁(USPTO)は技術的な改善を伴うAI発明の「権利化の道筋」を明確化した。抽象的な議論のフェーズから、実務的な保護と運用の時代へと突入したと言える。
米特許庁、AI発明者の「人間中心」を再確認
米国特許商標庁(USPTO)は12月中旬、AI支援発明に関する発明者判断のガイダンスを改訂した。一貫して「AIは発明者にならず、発明者は人間に限る」という立場を強調。実務上は、AIを道具として使用した場合でも、人間が「着想(Conception)」に実質的に寄与したかどうかが判断の分かれ目となる。
これにより、出願企業にはプロンプトの履歴や、人間による修正・選択のプロセスを証拠として残す体制構築が求められることになる。
「§101の壁」に突破口:特許適格性の判断が具体化
AI関連特許の最大の難所とされる米国特許法101条(特許適格性)を巡り、注目すべき判断が相次いだ。12月8日、米連邦最高裁は機械学習アルゴリズムの特許性を争った「Recentive事件」の受理を拒否。これにより、抽象的なアイデアに留まるAI技術を厳格に排除するCAFC(連邦巡回控訴裁判所)の判断が維持された。
一方で、USPTO内の審判部(PTAB)は12月30日、「Ex parte Carmody事件」において、AI技術が「技術的な利点」をもたらし、「実用的な適用」に統合されている場合には特許として認める判断を下した。USPTOはこれに合わせ、審査便覧(MPEP)への反映を予告。司法の厳格化に対し、行政運用で「技術的改善」を評価するルートを整備する姿勢が鮮明となっている。
日欧特許庁、AI活用で「説明責任」重視
日本特許庁(JPO)の河西長官は2026年1月5日の年頭所感にて、日米欧三極特許庁による「共通のAIビジョン」策定への合意を明かした。JPO独自でも「AIビジョン」を策定し、人間中心・セキュリティ・説明責任の3原則を掲げる。
欧州特許庁(EPO)も呼応するように、2026年から口頭手続の議事録作成にAIを本格展開すると発表した。2025年までの試験運用の成功を踏まえたもので、行政の効率化と透明性の両立を目指す。
まとめ
この2ヶ月は、「AIは誰が作ったか(発明者論)」から「AIをどう技術として説明するか(特許適格性)」へと実務の焦点が移った期間でした。また、特許庁自身がAIを導入することで、今後は「AIによる審査の正確性」や「データの安全性」が新たな論点となることが予想されます。
[注]
- 米国特許商標庁(USPTO):AI支援発明のガイダンス改訂 ,AI発明者問題の整理と「着想」基準の統一
- Recentive Worldwide Inc. 事件:,Recentive Analytics, Inc. v. Fox Corp., et al., United States Court of Appeals for the Federal Circuit (2025) (35 U.S.C. §101 に基づき district court judgment affirmed) 米国最高裁は2025年12月8日、上告を受理しなかった(Order List)
- Ex parte Carmody事件:Ex parte Carmody, Appeal 2025-002843 (PTAB Dec. 30, 2025) (35 U.S.C. §101 に基づき examiner’s final rejection reversed)USPTO審判部(PTAB)は2025年12月30日、AIモデルの学習における技術的改善を「実用的適用(practical application)」と認め、審査官の特許適格性欠如の判断を覆した。
- 日本特許庁(JPO):2026年年河西長官年頭所感,「JPO AIビジョン」策定と日米欧三極連携の表明
- 欧州特許庁(EPO):AIによる議事録作成の全面展開 ,2026年からの口頭手続AI支援システム導入
あなたの技術に強い弁理士をご紹介!
