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知財 withブロックチェーン

世界的に見ても、知財に関する関心は日々高まっています。

たとえばYouTubeには、現イングランド&ウェールズ 法律学会のトップであるステファニエ・ボイス女史といったスペシャリストたちによる、知財の視点から見たクリプト暗号資産、NTF、 スマートコントラクトについての動画が公開されています。

日本でも特許庁や金融庁、法整備機関が一体となって、ブロックチェーン分野の最先端を行く諸国に学んでいこうとしています。

そのためにも、知識基盤の共有は欠かせません。

今回は筆者の専門である商標トレードマーク・デザイン意匠において、ブロックチェーンのもつ可能性や潜在意義を紹介していきます。

なお、本記事は下記の協議を大いに参考にしています。

  • Tech London Advocates Legal & Regulatory Group, co-founder 
  • アン ・ロゥズ TLA 共同設立者
  • TLA (テック ロンドン アドゥボケイツ) 法律&規制 グループ

ブロックチェーンとは

まずはブロックチェーンとはどんな考えなのか、を確認しましょう。

ブロックチェーン技術は取引を記録する方法のひとつで、高い安全性と情報の透明性を誇ります。分散型台帳テクノロジーという技術に当たります。

ブロックチェーン技術において、取引の記録は「ブロック」として格納されます。そして個々のブロックには、ハッシュと呼ばれる識別マークも同時に格納されます。

このハッシュ同士のつながりが鎖のように連なっていくことから、以上の取引記録方法を「ブロックチェーン」と呼ぶのです。

ブロックチェーンは情報の信頼性が高い

ブロックチェーンの仕組みでは、プラットフォーム上のユーザーが取引記録の履歴を取り続けるようになっていて、取引の公正度が非常に高い、という特徴もあります。

また信頼性を高めるために、ハッシュの変更は例外的な状況でない限り、できないようになっています。

万が一の時は、ハッシュによる連携を切ってしまいます。ブロックとブロックをつなぐチェーンが切れるイメージです。

知財業界におけるブロックチェーンの活用方法~イギリスを事例に~

ブロックチェーンを利用したプラットフォームは、知財業界に大きな変革をもたらしてくれるかもしれません。

特に権利情報を管理する際の、効率性と透明性を向上させることが可能で、実際イギリスではすでにブロックチェーンを応用した改革が行われつつあります。

今回はイギリスで商標登録するシーンを例に、ブロックチェーン技術の活かし方を解説します。

現行の英国連邦の商標登録について

まずはイギリスの商標登録制度について確認します。

基本的には日本と似通った制度をしていて、イギリスで商標登録するためには、その商標が識別的で独特性を有していると証明する必要があります。どの商品・サービスの商標を取得するかも、綿密に検討しないといけません。

現在はBigg dataの一部のデータベースを利用して、競合する権利はないか、権利侵害する可能性はないかがチェックされています。

なぜなら、特許侵害ほど賠償が高くなるものはないから。

現在、欧州連合知的財産庁European Union IP Office (EUIPO)では以下のようなツールを使い、あの手この手でクリアランス調査をしています。

  • Design View
  • TMView
  • WIPO Global Brand database 
  • WIPO Global Design Database

調査の結果、出願して問題ないと判断されたら出願料を支払って申請をし、手続きがスタートします。

これらの調査を怠り、係争になると、登録まで数年かかることもあり得ます。

ブロックチェーン技術を導入すると…

ここにブロックチェーンを導入すると、たとえば商標の独自性を主張するとき、非常に便利です。

商標のなかには、キャッチフレーズなど、独自性を主張しづらいものもあります。

そのような商標で権利を獲得するためには、使用しているうちに独自性を得たことを証明しなければならない、と決まっています。

ここで役立つのがブロックチェーン。

ブロックチェーン技術を取り入れていれば、取引で商標を使っていた履歴や使用頻度、認知度といった情報が、信頼性を担保された状態で共有されています。

これらの情報を活用できれば、商標の独自性を主張する根拠となり、出願者も審査官も従来よりうんと少ない手間で権利化を叶えられるようになります。

WIPOも知財取得が楽になれば、知財活用の可能性も広がると認識しています。現在は協議を重ねて、ブロックチェーンのよりよい活用方法などがないか活発に活動をしている段階です。

スマートコントラクトの裁判への活用

ブロックチェーンには、スマートコントラクトという仕組みがあります。このスマートコントラクトを利用すれば、特許侵害にまつわる裁判、そこにかかる時間・費用を大幅カットできるようになります。

そもそも、スマートコントラクトとはブロックチェーン上での契約を自動的に処理する仕組みのことです。特定の条件が満たされた時、自動的に決められた処理を行います。

知財の分野でいうならば、商標登録されたタイミングや使用実施されたタイミングでタイムスタンプの押される、といった仕組みが構築できるでしょう。

そして将来法整備がされれば、スマートコントラクトを証拠として裁判所&登録機関に提示できる時代が来ます。

2020年5月には、WIPOからも「WIPO PROOF」という新しいデジタルビジネスサービスが提供されています。

このサービスは特定の日時にデジタルファイル(スマートコントラクトの前身)の存在を証明する「電子署名付き証明書」を提供します。先述したタイムスタンプと似ていますね。

結果、知的財産権にまつわる情報管理を紙ベースからデジタルベースへ切り替えられるように。

データベースがデジタル化されたことで、検索等も容易、かつ精度があがりました。そして出願時や権利侵害の提訴時に、商標の使用を証明する際に必要な時間・費用が、かなり削減できるというメリットを生みました。

商標の使用における事実関係の証明がしやすくなれば、商法登録後に先使用である法人個人から、異議申し立てされるリスクも格段に減るでしょう。

免責事項:執筆者は英国連邦の法律の観点から事項を検討しており、この記事のいかなるものも法的助言にはなりません。また著作権管理や偽造防止におけるブロックチェーンの使用等、本記事で取り上げないトピックが多くあります。

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