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ヨーグルトがくっつかない!?蓮の葉から生まれた特許「トーヤルロータス」〜東洋アルミニウム〜【おもしろ特許】

朝ごはんに気軽に食べられるヨーグルト。筆者のおすすめは、森永乳業の「ビヒダス 4ポットタイプ」です。75gという量が、多すぎず少なすぎずで食べやすいんですよね。

「ビヒダス」のヨーグルトは種類も豊富ですが、見逃せない点がひとつあります。

それは、めくった後のフタ裏にヨーグルトが付いていないこと。

付かないのが当たり前に思われる方もいるかもしれませんが、数年前まではすべてのフタ裏にヨーグルトが付着していたんです。

では、なぜヨーグルトが付かなくなったのでしょうか?

これは、森永乳業と東洋アルミニウムが共同で製品化に取り組んだ「トーヤルロータス」(TOYAL LOTUS)という技術が使われているためです。

今回は、この「トーヤルロータス」の特許技術を紹介します。

【特許の基本情報】

特許番号:特許第4348401号

発明の名称:蓋材

特許権者:東洋アルミニウム株式会社

出願日:2009.2.13

出願状況:特許取得

特許の肝「発明が解決しようとする課題」を簡単解説!

【背景技術】
従来より多種多様の包装材料が知られているが、その内容物も多岐にわたる。例えば、ゼリー菓子、プリン、ヨーグルト、液体洗剤、練り歯磨き、カレールー、シロップ、ワセリン、洗顔クリーム、洗顔ムース等のように、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等がある。また、内容物の性状も固体、半固体、液体、粘性体、ゲル状物等のように様々なものがある。

これらの内容物を包装するための包装材料においては、密封性が要求されるほかに、内容物、包装形態、用途等に応じて熱接着性、遮光性、耐熱性、耐久性等が要求される。

ところが、これらの特性を満たしている包装材料であっても、次のような問題がある。すなわち、内容物が包装材料に付着するという問題である。内容物が包装材料に付着すれば、内容物をすべて使い切ることが困難になり、それだけ無駄が生じることになる。また、内容物をすべて使い切るためには包装材料に付着した内容物を別途に回収しなければならず、手間がかかる。このため、包装材料では、上記のような密封性等のほか、内容物が包装材料に付着しにくい性質(非付着性)を備えていることが必要である。

【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の主な目的は、良好な熱接着性を維持しつつ、優れた非付着性を持続的に発揮できる包装材料を提供することにある。出典:J-PlatPat

まずは、この特許の内容を簡単に説明します。

これまでのヨーグルトやプリンなどに使われていた容器のフタは、剥がすと裏に中身が付着していました。中身を全部食べられない…。これって、もったいないですよね!

そこでフタ裏に中身が付かず、かつ従来通りちゃんと密閉されたフタが開発されました。

フタ裏に付いたヨーグルトを洗い流すとき、筆者はちょっとしたストレスを感じていましたので、これはありがたい技術です。

じつは、フタに付着するヨーグルトは内容量の約4〜10%程度といわれており、毎日食べる人にとっても嬉しいフードロス効果です。

蓮の葉から生まれた技術

「トーヤルロータス」のロータスは、蓮が由来。この技術は、私たちも知っている「蓮の葉」がヒントになって生まれたのです。

蓮の葉に水を垂らすと、丸い粒となって転がり落ちます。

これを見た開発者は、蓮の葉を分析。顕微鏡で調べると、表面に繊毛によってできる細かな凹凸が確認できました。

この繊毛が空気の膜を作り、撥水性をもたせているのです。

そこでアルミ箔の表面に人工的に蓮の葉のような凹凸構造を作り出し、撥水性の再現を試みました。

このとき問題となったのが、フタに必要な接着性と撥水性が、反対の性質であることです。

この「くっつける」「はじく」を両立させるのは非常に難しく、商品の実用化までに費やした期間はおよそ1年…。さまざまな苦労を経て、ヨーグルトのフタを商品化することに成功します。

出典:特許4348401号公報

森永乳業も特許を取得

冒頭で記述しましたが、森永乳業との共同開発で進められたトーヤルロータスの技術。

もちろん、森永乳業も特許を取得しています。

【特許の基本情報】

特許番号:特許第4878650号

発明の名称:カップ状容器の蓋体及びその製造方法

特許権者:森永乳業株式会社

出願日:2010.8.12

出願状況:特許取得

出典:特許4878650号公報

表現の違いはありますが技術の内容は同じものです。

あえて違いを上げるなら、森永乳業は「蓋剤(蓋の素材)」ではなく「カップ状容器の蓋(蓋そのものの構造)」に限定しているところでしょう。

請求の範囲構成(工法)酸化物粒子径
東洋アルミニウム蓋材(蓋の素材)熱接着層を有する積層体3〜100nm
森永乳業蓋体(蓋そのものの構造)溶剤を塗布して乾燥5〜100nm

※特許公報より抜粋

これにより、東洋アルミニウムは包装材としてさまざまな分野に展開することが可能になりました。

さまざまな分野にも応用できるトーヤルロータス

トーヤルロータスの活用はヨーグルトのフタだけではありません。

この技術を応用した撥油性の「トーヤルウルトラロータス」は、山崎製パンのクリスマスケーキの包装材に採用されました。

生クリームが包装材に付かないので、口溶けのよいクリームが使えるようになり商品価値の向上にもつながったそうです。

食品だけではなく、建設業界にもトーヤルロータスの技術は応用できます。

清水建設との共同で開発を進めたのは、建築用の型枠「アート型枠」です。アートという名のとおり、コンクリートの表面がきれいに仕上がる製品が作られました。

まだまだ応用できる可能性を秘めているのが、この技術のスゴイところ!

今後は、最後まで使い切ることが難しいマヨネーズなどの容器や、化粧品のボトルへの採用も検討が進められています。

まとめ

東洋アルミニウムのトーヤルロータスについて紹介しました。

特許を取得してから約10年。

東洋アルミニウムはこの特許技術とアイデアを駆使して、食品や工業、医薬品分野にも挑戦を続けています。

特許の技術で生活が便利になるのは嬉しいですね。

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