技術動向調査とは?弁理士が詳しく解説します!
技術動向調査とは、世の中の技術の動向を調査する、特許調査の種類の一つです。
なかでも、研究開発の初期段階での開発方針や、知財を活用した経営戦略の検討、決定に際して、先端技術や今後の技術のトレンドを探るために行われることの多い調査です。
特許調査には、技術動向調査のほかに、発明が既に他社に出願・登録されているかの確認や、特許取得の可能性を判断するための先行技術調査があります。
また、他社の権利を侵害しないかどうかのクリアランス調査、他社の権利を無効・取消しにしたり、裁判の資料とするための証拠収集調査などがあります。
特許調査については、下記ページにて説明しています。
→特許調査とは?どこに依頼できるかも解説します!
目次
技術動向調査とは
技術動向調査は、冒頭で述べたように、研究開発の初期や途中において、研究開発のテーマに関連する分野での、技術開発動向や、関連する公知技術、技術のトレンドを調べることを目的として行うものです。
先行技術調査と同様に、特許のデータベースにより、特許の公開公報、公開公表、再公表公報、国際公報などの公知技術を対象に調査をします。
また、特許関連の公報以外の、論文などの先行技術文献までを調査対象とすることもあります。
これらの点では、先行技術調査に共通するものがありますが、すでに研究、開発してきた成果である具体的な発明を比較対象として、その発明が新規であるか等の比較検討をする先行技術調査とは異なる点もあります。
技術動向調査の目的とメリット
技術動向調査では、すでに存在する具体的な発明を比較対象とするのでなく、今後進める研究開発や、市場参入を検討している分野についての技術動向をより広く情報収集する点が特徴です。
こうした調査をすることにより、重複研究を回避したり、有望な技術分野のトレンドを調査したり、逆に他社が参入していないが自社に強みがある分野を発見したりすることができます。
これにより、研究開発の時間と費用、人材投入を無駄にせず、知財を活用した経営戦略を考えることができます。
技術動向調査の一例
技術動向調査の一例として、経済産業省・特許庁が毎年行っている技術動向調査を紹介します。
これはわが国の成長戦略の一環として、有望な成長分野ごとに、毎年いくつかのテーマを決めて調査を行っているものです。
2020年4月には、「スポーツ関連技術」、「宇宙航行体」、「マテリアルズ・インフォマティクス」及び「AIを用いた画像処理」など、10の技術テーマについて、特許情報等を調査・分析した報告書を取りまとめています。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/index.html
特許出願技術動向調査(特許庁)
技術動向調査の内容がイメージできるかと思います。
ただし、同じテーマについて毎年調査をしているわけではありません。
国が行う技術動向調査は、産業の成長戦略と国際競争力に資するため、科学技術基本計画により定められた分野について調査しているものです。
その成果は、特許庁のサイトにおいても公開され、一般に提供されるとともに、特許出願の審査の基礎資料としても利用されるものです。
実際に自社が研究開発をするテーマについての技術動向調査は、研究開発の初期や途中段階、あるいは新規事業検討時などの適切なタイミングで行うことが必要です。
したがって、技術動向調査は自社で行うか、専門家に依頼するかということになります。
技術動向調査は自分でできる?
特許出願の公開公報などを調べられるサイトとして一般的なのは、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)です。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0100
特許・実用新案検索(特許情報プラットフォーム)工業所有権情報・研修館
発明や開発段階の折々で、検索してみる研究者や知財担当者も多いでしょう。
調査方法については、下記ページを参照のほか、使い方などをヘルプを見て行うことができます。
→特許の検索サイトと使い方を徹底解説!
技術動向調査では、具体的な発明についての調査ではなく、今後進める研究開発や、市場参入を検討している分野についての動向を、海外なども含めより広く情報収集します。
このため、請求の範囲や要約、場合によっては出願書類の全文に含まれるキーワードを指定して検索したり、分類(FI、Fターム、IPC)等から、特許・実用新案公報、外国文献、非特許文献などを調査することが通常です。
調査範囲や目的によっては、特許庁以外のデータベースを用いて、学術論文なども含め調査する場合があります。
なお、検索に用いる技術分野の分類であるFI、Fターム、IPCなどは下記ページにて確認します。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p1101
特許・実用新案分類照会(PMGS)(特許情報プラットフォーム)工業所有権情報・研修館
さらに、海外特許のデータベースなどを調査対象とすることもあり、ひとくちに技術動向調査といっても、目的により調査対象や範囲は異なります。
技術動向調査でわかること
調査の目的や、報告書の形式にもよりますが、技術動向調査では、出願件数の推移や、技術の成長・発展段階や、トレンドの推移、有望な新技術、関連分野の技術動向、技術の空白分野などがわかります。
また、特許出願人ごとに、出願件数や、注力している分野、開発段階、共同研究の相手などを知ることもできます。
調査報告書は、件数の推移のグラフや、技術分野・出願人と件数などを座標にマッピングしたパテントマップなどを用い、市場規模やその動向などを、わかりやすく図表化するなどしてまとめられるのが一般的です。
技術動向調査はどこに頼める?
弁理士が所属する特許事務所、または専業の調査員がいる調査会社に依頼します。
弁理士の仕事には、特許出願などの特許庁に対する手続きや、特許可能性の判断・鑑定などの独占業務がありますが、これに含まれない調査であれば、特許調査会社も行うことができます。
特許事務所・特許調査会社それぞれのメリット
特許事務所は、特許庁に出願をして権利化するまでの業務を行う専門家であるため、技術開発の途中において、権利にできるものがないか等の助言や検討ができます。
ただし、所属する弁理士の構成により、得意分野、その他の業務の特色がある場合もあります。
なお、権利化までの一貫した作業を依頼できるため、調査と研究開発の段階から、スムーズに特許出願への業務の移行をすることができます。
特許調査会社は、調査を専門とする会社であり、作業が早い、漏れのない検索式を作って緻密な調査を行うなど、調査作業から報告書作成までを得意としています。
もちろん、弁理士ができないということではないものの、調査専門のプロであるため、平均してクオリティが高く、また出願を検討する分野に限らない、市場動向などの広い視野に立った報告が可能な調査会社もあります。
調査会社は、一般の企業や研究機関からの依頼を受けるだけでなく、特許事務所との取引もある場合が多いでしょう。
技術動向調査の費用は?
特許事務所に依頼するにしても、調査会社に依頼するにしても、技術動向調査の費用は、調査対象・範囲や目的によってまちまちです。
一般論としていえば、日本国内の調査でも10~30万円程度から、場合により50万円以上となる場合があると思います。
海外も含めた調査であれば、調査対象国をどこまで広げるかによって、費用は大きく変わります。
技術分野によっても、調査の作業量や難易度が異なるため、一概にはいえず、まずはどのような調査を希望するかを伝えたうえで、費用と調査日数の見積をとるのが現実的です。
特許出願を調査と合わせて検討したいのであれば、特許事務所に技術動向調査の段階から相談するか、また場合によっては特許事務所経由で必要な調査のみは調査会社に依頼するなどもできるでしょう。
まずは自社の目的や事業戦略を考えたうえで、相談してみることが得策です。
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1998年弁理士登録。広告会社から特許・法律事務所を経て、2000年に開業。ソフトウエア、ビジネスモデルなどITベンチャーの特許のほか、中小企業支援。意匠、商標の専門サイトも運営。
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