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立体商標とは?具体例も一緒に解説します!

「たけのこの里」「きのこの山」で登録になって話題となった立体商標ですが、

何のことかわからない。
なぜ登録すべきなのかわからない。

という人も少なくないかと思います。

わからないからと言って商標出願を放置しておくと、競合他社に商標権を取得されてしまい、その立体的な形状が使用できなくなって、商品が販売できなくったり、サービスを提供できなくなったりしまうかもしれません。

本記事では、立体商標とはなにか、実際にどのように取得すべきかなど気になる所をご紹介します。

概要を理解したら、後は弁理士にお任せで大丈夫です。
知財タイムズでは、商標登録に強い弁理士を見つけることができるのでこちらからお問い合わせください。

立体商標とは何?

立体商標とは、立体的な形状(二次元ではなく、三次元)であり、自社の商品と他社の商品又は自社のサービスと他社のサービスを識別する力を保有することで、その形状に対して商標としての保護を認めるものです。

例えばユニークな形状をした商品があるとします。
その商品の形状を見ただけでユーザーがあのブランドだとわかるようなものに関しては、立体商標を取れるということです。

なお、自社と他社を識別する力を自他商品識別力と言います。

更に、自他商品識別力を有することに加えて、立体的な形状が「不可欠な形状ではないこと」という要件も商標登録上、必要になります。
この「不可欠な形状ではないこと」とは、その商品の機能を確保するために不可欠な形状でないことを示します。

立体商標を取得するメリット

立体商標を取得するメリットを大きく下記の3点です。

  • 他者を牽制できる
  • 半永久的に権利を保持できる
  • 意匠で守れないデザインも守ることができる

他社を牽制できる

この立体的な形状である立体商標を保有することで、同じ業界の競合他社に対しての牽制が可能となります。
世の中で流通している殆どの商品が、立体的な形状であるため、商標権を取得することは、その会社にとって、非常に有利と言えるでしょう。

半永久的に権利を保持できる

立体商標に限らずですが、商標全般を通じていえることですが、商標は一定期間毎に維持費用を特許庁へ支払い続けることで、半永久的に商標権を保有することができます。
つまり、商標権を保有する会社は、その商品やサービスを市場に展開している間は金銭を支払い続ける限りは、安心して事業を継続することができます。

意匠で守れないデザインも守ることができる

意匠制度は、デザインを保護する内容であり、このデザインには、もちろん立体的な形状も含まれるのですが、意匠を出願するための要件として、新規性がある。ということが必要であり、そのデザインが市場に流通した状態だと出願することができません。
対して、商標を出願するに際し、新規性がある。ということは不要であるため、万が一、何らかの事情で新規性がなくなったとしても、商標を出願することができます。

立体商標の種類

 立体商標は、以下の3種類に大別されます。

  •  (1)立体的な形状のみからなるもの
  •  (2)立体的な形状と、文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含むもの(立体的な形状と平面商標との結合)
  •  (3)立体的な形状が案内標識(サインポスト)として使用されるもの

 では、上記3種類について、事例をベースに解説します。

(1)立体的な形状のみからなるもの

商標登録第5384525 号 ヤクルトの容器

(引用元:platpat:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2008-072349/E3C6E5FD5BE77915AECFA0447176B64AC8E4667ACD57DB1D7C87C266071EC78F/40/ja

ヤクルトの容器を例に自他商品識別力について説明すると、消費者がこのヤクルトを購入する際に、この容器はヤクルトの容器であって、他の容器ではない。と識別できる程度の力がないと、立体商標としての登録が認められることはありません。

つまり、文字や図形がない状態で、形状のみでヤクルトの容器だと消費者が区別できます。長年にわたって、消費者に広く認知され続けたためです。このように、消費者に広く認知されるレベルまで達すると、商標登録が認められます。

なお、文字や図形がない状態で、形状のみでの商標登録が認められるのは、後述する(2)及び(3)の場合と比較しても、かなり難易度が高いです。商品の大部分には、商品名である文字が付与されているためです。

(2)立体的な形状と、文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含むもの

商標登録第5603958号 ウコンの力          

金色の容器の側面に、「ウコンの力」という文字が組み合わされています。

(引用元:jplatpat:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2013-017750/146DD4AF4B4CBC4B492DE5D0A3E39B4433C0C72EBBB7E535FDE03059162439BC/40/ja)

文字が付与された立体的な形状になります。文字に限らず、記号や図形等も対象ですし、文字と記号の組み合わせ、文字と図形の組み合わせ等も対象となります。
この種類は、(1)と比較すると、消費者に対して広く認知される。という難易度が低いと思います。

(3)立体的な形状が案内標識(サインポスト)として使用されるもの

商標登録第4153602号  カーネルサンダース

(引用元:jplatpat:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-1997-122980/2B4AF1B12270CBD800919ABB7107CB279F1795AE97549A4C65E3FAFB309E7AEF/40/ja

カーネルサンダース人形を店舗の前に設置することで、カーネルサンダース人形を見た人は、この店舗が「ケンタッキー・フライド・チキン」という店舗であることを示す案内標識(サインポスト)になります。

立体商標のポイント

立体商標はその形状を見ただけでユーザーがあのブランド(商品)だと気づくかどうかがポイントです。
一定数の消費者が気づくような形状であれば、立体商標を商標しておくべきでしょう。

特にユニークパッケージなどの商品は、人気になると類似品が大量にでてきます。
これらの類似品は放置しておくと、自社の売上に悪影響を及ぼします。

立体商標は通常の商標よりも取得のハードルは高いですが、自社の商品やパッケージなどを見直し、立体商標を取得すべきかどうか検討しておきましょう。

下記では実際に取得されている立体商標の事例と取得までの経緯を解説しているので参考にしてください。

立体商標の登録事例を解説!

(1)「きのこの山」

株式会社明治が「きのこの山」が商標登録された。という内容がニュースになりました。

「きのこの山が好き?たけのこの里が好き?」というきのこたけのこ論争を誰しもが聞いたことはあると思います。そこで、立体商標の観点から、「きのこの山」「たけのこの里」について解説していきたいと思います。

「きのこの山」「たけのこの里」が商標として商標登録出願されたのは、立体商標ではなく、平面商標(文字商標)で1975年4月17日です。同じ日に2件の商標登録出願が行われました。そして、「きのこの山」「たけのこの里」両方とも無事1978年には登録になっています。

きのこの山が登録されるまでの経緯

「きのこの山」は2017年6月20日に商標登録出願されましたが、2017年10月24日に3条1項各号で拒絶理由通知を通知されています。

この拒絶理由通知の内容は、自他商品識別力がない旨が経過情報から確認できます。

この拒絶理由通知に対して、株式会社明治は、2017年11月24日に審査官に対して面接を実施しております。
どのようなやり取りがあったのかまでは不明ですが、3条2項の適用を受けたことから、自他商品識別力がないという拒絶理由通知に対して、「きのこの山」は長年にわたって、消費者に広く認知され続けたという証拠を集めて、審査官を説得したと推認されます。そして、2018年3月16日に「きのこの里」が無事商標登録として認められました。

そして、特許庁のHPには、「きのこの山」は、消費者のアンケートによって、約90%の認知が認められたため、登録になった旨が記載されております。
そのため、消費者に対して、広く認知されるという事が商標を登録する上で必要な条件であることが示されます。
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たけのこの山も商標登録されている!

「きのこの山」が商標登録を受けた後で、「たけのこの里」は商標登録を受けることができたのでしょうか。
結論から言えば、「たけのこの里」も無事に商標登録を受けることができました。

「たけのこの里」は「きのこの山」に約1年程度遅れて、2018年5月29日に商標登録出願されています。そして、この「たけのこの里」は、「きのこの山」と同様に2019年8月1日に3条1項各号で拒絶理由通知を通知されています。
この拒絶理由通知の内容も、「きのこの山」と同様に自他商品識別力がない旨が経過情報から確認できます。
この拒絶理由通知に対して、株式会社明治は、2019年9月2日に審査官に対して面接を実施しています。
面接記録を確認すると、アンケート結果を説明したことが読み取れます。おそらく「きのこの山」と同様に、長年にわたって、消費者に広く認知され続けたというアンケート結果だと思われます。

更に、面接審査の3日後に、上記拒絶理由通知に対して反論を行った意見書から、「たけのこの里」の2011年~2019年の売上高・販売数量、チョコレート菓子における市場シェアを記載しております。また、中でも興味深いのが、「たけのこの里」だけではなく、「きのこの山」についても反論材料として使用しており、「たけのこの里」と「きのこの山」は、ブランド戦略として、一緒に宣伝広告することが多いことから、両商品を合算した販売額やシェアとして提示しております。確かに、「たけのこの里」や「きのこの山」の片方だけを宣伝しているのはあまり見ないので、この両商品を合算した記載方法については、違和感を感じることなく、審査官も受け入れたと思います。

加えて、上記意見書で、テレビCMの放送記録確認書、新聞広告の写し、新聞・雑誌記事の写し等も併せて、いかに消費者に対する広告宣伝活動に力をいれていたかという点が理解できます。また、「きのこの山」と同様に、アンケート結果で、83.3%の認知度があることを主張しております。

これらの証拠から、特許庁は、「たけのこの里」についても、「きのこの里」と同様に、消費者に広く認知されている。と認め、商標登録を認めています。

(2)「スーパーカブ」

次は、日本で初めて乗り物として、立体商標が認めれらた事例であるHONDAの「スーパーカブ」について解説していきたいと思います。

「スーパーカブ」が商標として商標登録出願されたのは、「たけのこの里」や「きのこの山」と同様に、立体商標ではなく、平面商標(図形商標)で1959年1月29日です。同じ日に1件の商標登録出願が行われました。そして、「スーパーカブ」は翌年1960年には登録になっています。

スーパーカブが商標登録されるまでの経緯

「スーパーカブ」は2011年2月18日に商標登録出願されていますが、2011年7月29日に3条1項各号で拒絶理由通知を通知されています。

この拒絶理由通知の内容は、自他商品識別力がない旨が経過情報から確認できます。この拒絶理由通知に対して、本田技研工業株式会社は、2011年9月7日に意見書を提出しています。しかし、この意見書に記載された内容は、審査官から自他商品識別力があるとは認めれず、拒絶理由通知は覆らないという判断をされて、2012年9月20日に拒絶査定を受けています。

 この拒絶査定に対して、本田技研工業株式会社は、拒絶査定不服審判を2013年5月16日に提起しています。そして、この拒絶査定不服審判において、自他商品識別力があると認め、拒絶査定を取り消して、商標登録を認めています。

その理由としては下記の5つが挙げられます。

  • (ア)使用開始時期及び使用期間
  • (イ)生産台数
  • (ウ)使用地域
  • (エ)広告宣伝等
  • (ア)使用開始時期及び使用期間
  • (オ)本願形状に類似した他の商品の存否

(ア)使用開始時期及び使用期間

商標は、「スーパーカブ」の基本デザインで、新しいカテゴリーの二輪車を具体化したものとして、1958年8月に初代モデルが発売されて以来、モデルチェンジを繰り返し、派生モデルも生じているものの、その基本デザインは、50年以上も変更されていません。

(イ)生産台数

スーパーカブの生産台数の累計は、1958年当時の我が国の50ccの二輪自動車の存在台数が30万台弱であった中、登場から約3年後の1961年6月までに100万台を超え、1966年に500万台、1976年に1,000万台、・・・・(中略)、世界最多量産の二輪自動車となっており、その後もその記録を更新し、2012年には、生産累計台数が7,600万台以上となっています。

(ウ)使用地域

スーパーカブは、郵便、新聞、牛乳等の配達、蕎麦等の出前、銀行等の営業、警察官、通勤や通学などに用いられるため、幅広い層の需要者に使用されている状況からすれば、実際にスーパーカブを使用している者以外の者においても、商標を目にすることは多いものといえます。

(エ)広告宣伝等

1958年から現在に至るまで、スーパーカブの商品カタログを毎年のように作成、発行するとともに、スーパーカブの広告を新聞、雑誌などの媒体に掲載してきており、これらのカタログや広告には、商標が掲載されています。

また、スーパーカブを単独で特集した書籍や、特集記事を掲載した雑誌なども多数発行されており、それらによれば、スーパーカブは、日本全国どこでも見かけることができ、生の中に溶け込むように使用され、我が国において、広く一般に知られているといえます。

(オ)本願形状に類似した他の商品の存否

本願商標は、「2008年度 グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」及び「2008年度 グッドデザイン・ライフスケープデザイン賞」を受賞し、「2009日本自動車殿堂 歴史車」にも選定登録されています。

上記の理由により、「スーパーカブ」は、長年にわたって、消費者に広く認知され続け、自他商品識別力を有する。と判断され、無事商標登録を受けることができました。

(引用元 商標審決データベース)

http://shohyo.shinketsu.jp/decision/tm/view/ViewDecision.do?number=1287587

立体商標の類似範囲 事例ベースに回答

立体商標は、立体的形状であるため、消費者の見る方向によって、視覚に映る姿が異なります。そこで、消費者が立体的形状を観察する場合に主として視認すると推定される一又は二以上の特定の方向(所定方向)を想定します。そして、特定の方向からこれをみたときに観察者の視覚に映る姿の特徴によって商品又はサービスの出所を識別することができるものとすることが通常であると考えられます。

特定の方向から見た場合に視覚に映る姿を表示する平面商標と類否判断を行います。
また、同じく特定の方向から見た場合に視覚に映る姿を共通にする立体商標と、原則として類否判断を行います。

さらに、視覚に映る姿に相応した称呼又は観念も発生するため、この称呼又は観念を基に類否判断を行います。

最後に、立体的形状と文字、記号等の結合からなる場合は、当該文字部分や記号部分に相応した称呼又は観念を基に類否判断を行います。

立体商標の調査方法

j-platpatを使った調べ方

j-platpatでの調査方法を紹介します。

  • ①商標で図形等分類表を選択します。
  • ②図形等分類表で「40.立体商標」を選択します。
  • ③これを選択すると、40.1 立体商標が表示されますので、これを押下します。
  • ④押下すると、図形等分類の検索ウィンドウに40.1という数字が入力されますので、
  • ⑤この状態で、右側の商標検索にセットを押下します。

押下すると、画面が切り替わり、図形等分類という検索項目に、40.1というキーワードが入力されますので、この状態で、類似軍コードや区分を入力して、調査することができます。

取得の流れ

商標登録の流れは下記のように行います。

※詳細については、以下ご覧ください。
商標登録の流れ

①取得したい形状の種類を特定

取得したい立体的形状を特定します。
その際に、上記で説明した3種類のうち、いずれにするかを検討します。

②指定商品又は指定役務を特定

③商標登録願をダウンロードし記載。

(引用元 特許庁)

https://faq.inpit.go.jp/industrial/faq/search/result/10939.html?event=FE0006

④出願に関する料金の支払い

出願にかかる料金は以下です。 
出願料:3,400円+(8,600円×区分数)
区分数は、商標で使用する商品又はサービスです。

詳細はこちらで解説しています。
商標登録の費用をかんたん解説!

⑤ダウンロードしたWord に必要事項を記載し出願

⑥審査官による審査

自他商品識別力がないと判断された場合、拒絶理由通知が特許庁から送付されます。
この拒絶理由通知に対して、出願人は反論を行います。この反論内容を記載した書面を意見書と言います。

自他商品識別力があると判断された場合、商標が登録されます。

⑦意見書の提出

意見書は⑥の審査の後、拒絶理由通知が来た場合のみ必要です。

⑧審査官による再審査

意見書の内容を加味し、自他商品識別力があると判断された場合登録となります。
ここで登録が認められなかった場合、拒絶査定となります。

⑨登録料の支払い

登録となった場合、登録料を支払います。

  • 区分数×28,200円

必要書類

出願書類に関する記載事項について説明します。

立体商標について、商標登録を受けようとする場合には、その旨を願書に記載します。具体的には、願書における【商標登録を受けようとする商標】の欄の次に、【立体商標】の欄を追加する。

(引用元 特許庁)

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/syoreikaisei/tokkyo/document/sekokairei/syouyou_17.pdf

商標記載欄に記載された図形が、斜視図であったとしても、立体商標として商標登録を受ける意図なのか、斜視図の状態における平面商標として商標登録を受けることを希望しているのか、商標登録出願人しかわからないためである。そこで、立体商標として商標登録を受けることを希望するのであれば、その旨の意思表示を願書に記載します。

つまり、願書に立体商標である旨の記載がない商標登録出願に係る商標は、原則的に平面商標として取り扱われるため、注意を要します。

まとめ

平面商標と比較しても、立体商標は特徴的な部分があるため、他社の商標権を侵害していないのか、自社の立体的な形状は商標出願できそうか、等の判断に迷った場合は、積極的に専門家を活用しましょう!

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