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サービスマークとは?導入経緯やトレードマークとの違いを紹介

トレードマークは聞いたことがあっても、サービスマークと聞いてピンとこない方もいるかもしれません。

ですがサービスマークはサービス提供者がブランドを展開していくにあたり、商標登録によって保護する必要性が高いものです。

本記事では、サービスマークの概要やトレードマークとの違いなどについて紹介していきます。

サービスマーク(役務商標)とは?

まず「商標」とは別物のようにも思える、サービスマークの概要について見ていきましょう。

商標は大きくサービスマーク(役務商標)とトレードマーク(商品商標)の2種類に分けられます。

サービスマークとはサービスに対して使用される商標をいい、トレードマークは商品に対して使用される商標をいいます。

対象となる業界としては、広告業や金融業、不動産業、通信業などが挙げられます。

このようにサービスマークは商標とは別物ではなく、商標の種類の1つということが分かりましたね。

サービスマーク登録制度の導入経緯

なぜ同じ商標であるにも関わらず、サービスマークとトレードマークは分けられているのでしょうか?

従来「商標」とは商品商標のみを指すものとされており、サービスマークを商標登録により保護することができませんでした。

この点、工業所有権の保護に関するパリ条約6条の6では以下のように定められています。

第6条の6 サービス・マークの保護

同盟国は、サービス・マークを保護することを約束する。同盟国は、サービス・マークの登録について規定を設けることを要しない。

引用元:特許庁

このようにサービスマークを保護する義務はあるものの、保護方法は各国に委ねられているため登録が必須ではないのです。

サービスマークの商標登録が認められる前の日本において、サービスマークは不正競争防止法によって保護されていました。

しかし不正競争防止法のみでは商標権による保護と比べて、手続の負担が大きい上に保護も不十分でした。

このような問題に対応すべく、平成4年法改正にてサービスマーク登録制度が開始されたのです。

また平成19年法改正により、小売・卸売サービスの事業者が使用するマークについても、サービスマークとして保護されることとなりました。

サービスマークの例

サービス提供者が保有するサービスマークの登録例としては、以下のものが挙げられます。

株式会社電通グループ

登録第4777078号公報より

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

登録第6100966号公報より

ANAホールディングス株式会社

登録第3059927号公報より

株式会社ゼンショーホールディングス

登録第4997128号公報より

Google LLC

登録第6094059号公報より

このように広告業や金融業などのサービス提供者が、サービスマークを商標登録しています。

サービスマークとトレードマークの違い

前述のとおり、サービスマークはサービスに対して使用される商標であるのに対し、トレードマークは商品に対して使用される商標である点において、両者は大きく異なります。

ちなみにトレードマーク(Trademark)は「TMマーク」という記号で表わされることがあり、例えば以下のように商標の右下に表示されます。

任天堂公式サイトより

一方サービスマーク(Service Mark)は、「SMマーク」という記号で表わされることがありますが、この記号が使われているケースはほとんど見受けられません。

なおTMマークとSMマークはいずれも表示義務があるわけではないので、これらを表示していないことによるペナルティは特にないです。

サービスマークの商標出願で指定すべき区分

「区分」とは簡単に言うと商品・サービスのカテゴリーのことであり、45区分に分けられています。

商品としての区分は第1~34類までであり、サービスとしての区分は第35~45類です。そのため、サービスマークを商標出願するときは第35~45類の指定が必要です。

また小売・卸売サービスの場合は、第35類にて指定することとなります。

例えば飲食料品の小売・卸売サービスであれば「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のように指定します。

なおサービスマークの商標出願をする場合、第35~45類しか指定してはいけないというルールはないので、商品の区分を指定することもできます。

例えば上述した「すき家」のサービスマーク(登録第4997128号)では、サービスの区分として第43類「飲食物の提供」が指定されています。

一方、第29類には「レトルトパウチされた牛丼の具,レトルトパウチされた豚丼の具」、第30類には「牛丼べんとう,豚丼べんとう」などが指定されていました。

このようにイートインサービスとしての第43類と、テイクアウト商品としての第29、30類の両方を権利取得しているのです。

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不使用取消審判で問題になる、サービスマークにおける商標法2条3項の「使用」とは?

サービスマークならではのポイントのひとつに、商標の使用があります。

まず商標の使用とは、自社と他社との商品・サービスを識別する機能などを発揮させるような使用のことをいい、以下の商標法2条3項各号に規定されています。

(定義等)

3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。

一 商品又は商品の包装に標章を付する行為

二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為

四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為

五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為

六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為

七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為

八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為

十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為

引用元:e-Gov法令検索

このうちサービスマークの使用に当てはまるものは、2条3項3号~9号です。

商標の使用が問題となる場面として、不使用取消審判があります。

不使用取消審判とは一定期間、商標権者等が登録商標を指定商品(サービス)に使用していない場合に、何人もその商標登録を取消す審判請求ができる制度です。

この審判を請求された被請求人(商標権者)は、登録商標を指定商品(サービス)に使用していた事実を立証しなければなりません。

被請求人がサービス提供者であれば、基本的には2条3項3号~9号のいずれかの使用に当てはまることを証明していくこととなります。

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まとめ

サービスマークは法改正によって商標法で保護されるようになったため、基本的にはトレードマークと同様に扱われます。

しかし指定すべき区分や、不使用取消審判において立証すべき使用行為に注意が必要です。

本記事を参考に、サービスのブランド展開やサービスマークの保護に活かしてください。

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