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特許訴訟まとめ!重要判例の紹介と企業が学ぶべきこと

特許 訴訟

企業の技術を保護する制度として特許がありますが、これまでは出願さえしておけば他社が避けてくれるという期待がありました。

しかし、特許権を持っているだけでも維持費用が掛かりますので、多くの企業が特許を活用し始めました。この流れから日本でも特許訴訟が増えてきており、企業としては特許訴訟の動向を把握することが重要となっています。

本記事では、様々な特許訴訟の事例を紹介しつつ、企業が採るべき対応を知財部目線で解説します。

<この記事で分かること>
・青色LEDやキルビー特許など定番の特許訴訟事例
・スマホゲームや自動運転など新しい分野での特許訴訟事例
・企業として特許訴訟から得られる教訓

近年の特許訴訟の傾向

世界の知財訴訟件数は増加している

特許庁から公開されている「特許行政が直面する課題」によると、世界の知財訴訟件数は下図のように推移しており、特に中国で増加しています。

アメリカは減少傾向にありますが、それでも年間5000件以上の訴訟が発生しています。一方で、日本は年間150件ほどに留まっており、訴訟経験という意味ではアメリカや中国と大きな差ができています。

様々な場面で特許の活用が進んでいる

なぜ、世界で知財訴訟件数が増加しているのでしょうか?

それは、「特許を出願すれば効果がある」から「特許を権利として積極的に活用していく」へと企業の意識が変わったことが考えられます。

例えば日本の状況として、知財部というのは間接部門であり、会社のお金を使って知財活動を行っています。海外特許を含めると1つの発明で数百万円の投資になりますので、その効果を社内に説明していく必要があります。

そのような背景もあり、企業では「特許をビジネスの役に立てる」という意識が高まり、世界での特許訴訟増加に繋がっていると考えられます。では、実際の特許訴訟事例を見ていきましょう。

特許訴訟の事例

企業VS発明者!青色LED訴訟

本事件はノーベル物理学賞受賞者である中村修二氏が、元勤務先である日亜化学工業(以下、日亜化学)を相手にして起こした裁判です。発明の帰属と発明の譲渡に対する補償について争ったもので、補償金の額が200億円と高額でした。そのため、企業からの注目も高い裁判となりました。

中村氏は日亜化学に在職中、青色LEDに関する特許を100件近く出願していたようですが、特許第2628404号(通称404特許)のみが「日亜化学が圧倒的な競争力を誇る高輝度LED及びLDに貢献している」と主張しました。そのような重要特許であったにも関わらず、その対価として会社が中村氏に支払った金額は出願時に1万円、登録時に1万円の計2万円でした。

ノーベル賞級の発明対価が2万円と言われ、発明者としては納得できなかったようですね。特に中村氏は会社から反対されつつも青色LEDを開発していたようですので、自分の力で発明したという思いも強かったのかもしれません。

最終的には、裁判所から「和解についての当裁判所の考え」という和解勧告文が出されました。そして404特許だけでなく他の特許やノウハウの貢献、他社とのクロスライセンスの事実、会社の貢献度見直しなどを考慮し、約6億円まで発明の対価が減額されました。

本訴訟から、会社と社員とで話し合い、納得感のある発明対価の設定が重要であることが分かります。企業としても従業員からの訴訟リスクが高いと研究開発に投資しづらくなってしまいます。従業員も訴訟するには覚悟や費用が必要となりますので、できれば避けたいでしょう。

青色LEDの特許訴訟についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
重要判例!青色LEDの裁判から職務発明の課題まで知財部が解説!

権利の乱用!キルビー特許訴訟

次は他社に権利行使する際に注意しないと、権利濫用と判断され権利行使が認められない場合があるという裁判例を紹介します。

キルビー特許とは、テキサス・インスツルメンツ (TI)社 の集積回路に関する特許です。2000年ノーベル物理学賞を受賞した発明者のジャック・キルビーの名前を取ってキルビー特許と言われています。日本では特許第320249号、特許第320275号として、米国ではUS3138743、US3138747、US3261081、US3434015として登録されています。

TI社は特許第320275号を根拠として、富士通に対しラインセンス料の支払いを求めました。富士通は自社製品であるDRAMがTI社の特許を侵害しないと主張し、非侵害であることを確認するために訴訟を提起しました。米国で1959年に出願された集積回路を広く含む特許でしたが、判決としては富士通の非侵害でした。

最終的に最高裁判所では、以下のように判断されました。

  • 特許第320275号は親出願を根拠に拒絶されるべきもので無効理由を含む。
  • このような無効とされる蓋然性が極めて高い本件特許権に基づき第三者に対し権利を行使することは、権利の濫用として許されるべきことではない。

キルビー特許訴訟で分かることは、登録特許だからといって無効理由が無いとは限らないということです。特許庁の職員も人間ですので、拒絶理由を見逃してしまうこともあるかもしれません。だからこそ無効審判という制度があるとも言えます。

実際に差止請求や損害賠償請求などの権利行使をするタイミングで、特許の有効性調査をやりましょう。

キルビー特許訴訟についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
キルビー特許訴訟から分かる権利行使の注意点!

任天堂VSコロプラ!スマホゲームの特許訴訟

2018年1月10日、任天堂は同社の特許5件をコロプラが侵害するとして、東京地裁に提訴しました。コロプラの製品としては、「白猫プロジェクト」が任天堂の特許を侵害するとされました。

コロプラの「白猫プロジェクト」が侵害したとされる特許は5件で、製品の差し止めと合わせて44億円の損害賠償が請求されました。近年、スマホゲーム市場は急成長していますし、かなり高額な損害賠償となっていますね。

コロプラは任天堂の特許権の侵害を否定しました。任天堂の特許権の新規性や進歩性の欠如を理由に特許が無効であることを主張し、真っ向から対立することとなりました。しかし、任天堂が特許権を訂正していたことで曖昧な記載がなくなり、コロプラが特許の無効を主張しづらい状況が作られていました。

任天堂はコロプラへ追い打ちをかけるように、2021年4月に賠償額を追加し96億9900万円としました。増額の理由は時間経過等による追加のようです。裁判では勝てる見込みが強くなった段階で、請求額を再計算する戦略がよく使われるようです。任天堂は勝訴が見えたということで、コロプラとの和解をしないかもしれません。今後の展開に注目ですね。

任天堂VSコロプラの特許侵害訴訟についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
任天堂VSコロプラの特許侵害訴訟から見る大企業の特許活用戦術!

ダイムラーVSノキア!標準必須特許の特許訴訟

2021年6月1日、インターネットとの通信機能を備えた「コネクティッドカー(つながる車)」に関する標準必須特許をめぐる訴訟で、ドイツ自動車大手のダイムラー(Daimler)とフィンランド通信機器大手のノキア(Nokia)は、ダイムラーがノキアに特許使用料を払うことで合意(和解)しました。

ジェトロ(日本貿易振興機構)から公開されている資料「デュッセルドルフ地方裁判所、標準必須特許のライセンス交渉に関する質問を欧州連合司法裁判所に付託」によると、本訴訟は欧州特許EP2087629B1に関するもので、本特許は通信規格LTE(4G)の技術を使う場合に必須となります。

2019年3月、ノキアはライセンス料は最終製品メーカーであるダイムラーが支払うべきだと主張し提訴しました。一方、ダイムラーは通信制御ユニットを生産する部品メーカーとノキアが交渉すべきだとして要求を拒否していました。

2021年6月1日、冒頭で述べたように本訴訟は、ダイムラーのノキアへのライセンス料の支払いで決着しました。契約の内容は非公開ですが、ノキアはダイムラーに対する特許訴訟を取り下げ、ダイムラーは欧州委員会への訴えを取り下げます。

和解の後、ノキアは「今回の和解は、ノキアの自動車向けのライセンス事業の成長の機会を証明する非常に重要な節目だ」と述べ、ダイムラーは「経済的な観点、そして長期間にわたる法廷での論争を避けられるという点からも和解を歓迎している」と述べています。この両社のコメントからすると、和解する方が訴訟を継続するよりも互いにメリットがあるということなのでしょうね。

ダイムラーVSノキアの標準必須特許訴訟についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
特許訴訟の事例!ダイムラーVSノキアの標準必須特許をめぐる訴訟!

キャノンVSインクメーカー!リサイクル品の特許訴訟

2004年にキャノンは、中国でインクカートリッジにインクを再充填して日本に再販していたリサイクルアシストが同社の特許第3278410号を侵害するとして訴えを提起ました(東京地判平成16年12月8日(平成16年(ワ)第8557号))。

ここで注意すべきなのは、「キャノンの空インクカートリッジにインクを再充填することは新しい製品の生産なのか、修理なのか」という点です。もちろん、キャノンは新しい製品を生産しているとして、リサイクルアシストはキャノンの特許権を侵害していることを主張しました。

裁判所では再生カートリッジがキヤノンの特許を侵害していると判断され、ほぼ全面的にキヤノンの主張が認められました。

また、キャノンは2017年9月から発売している一部のインクカートリッジに関して、ICチップのデータ初期化が不可能な仕様に変更しました。この変更により、リサイクル品をプリンターにセットしても正常に認識されずリサイクル品が使えないようになりました。

そこで、2020年10月にエコリカはキャノンを独占禁止法違反行為の差し止めと、3,000万円損害賠償を請求するため、大阪地裁に訴訟を提起しました。本訴訟の結論はまだ出ていませんので、独占禁止法でインクメーカーの逆転があるのか注目ですね。

キャノンのインクカートリッジ関連訴訟についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
完成品メーカーと部品メーカーの攻防!キャノンのインクカートリッジ関連訴訟!

企業が特許訴訟から学ぶべきこと

特許という第三者に主張できる権利を持つ

特許権を確保しておくことで、発明者という個人であっても企業に権利を主張できたり、部品メーカーであっても完成品メーカーに権利を主張することができます。

まずは、実際の製品に取り入れられる技術は特許として登録するようにしましょう。特に、競合他社が興味のある技術に関しては特許権を取っておくことで、競合他社のビジネス上の障害とすることができます。

自社の業界以外の他社特許もチェックする

また、オープンイノベーションや自動車の電動化などが進むと、通信業界など他の業界からのプレーヤーが参入してきます。他社特許調査をする際、出願人で絞らずに既存プレーヤー以外の特許もチェックしておきましょう。

まとめ

今回は重要判例の紹介と企業が学ぶべきことを解説しました。

世界で特許訴訟件数が増加していることから、特許権を持たずに市場参入すると訴訟に発展するリスクがあります。まずは、自社技術を特許権として押さえておくことが重要となります。自社で開発中の技術に特許出願できるものがないか特許登録の専門家である弁理士に相談しましょう。

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