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実は使える海外の実用新案!海外での制度を徹底解説

「実用新案よりも特許を取るべき」、「実用新案は使えない」など実用新案は日本では活用しづらいイメージが付いています。しかし、実は海外では使える制度であることを知っていますか?

今回は中国やドイツなど海外での実用新案の活用について、企業知財部の目線で解説します。

<この記事で分かること>
・海外における実用新案の出願件数
・中国、ドイツにおける実用新案制度の活用方法
・米国で実用新案を保護するには?

(執筆:知財部の小倉さん

世界の実用新案の状況

日本における実用新案の推移

日本で実用新案権を行使するためには、相手方に実用新案技術評価書を提示して警告する必要があります。また、権利行使後に実用新案権が無効となった場合には、権利者は損害賠償責任を負うため、特許権と比べて権利行使がしづらいという側面があります。

日本の実用新案制度については、こちらの記事で詳細に解説しています。
参考:実用新案について徹底解説!具体例や費用・メリットについて説明します!

そのような状況から日本では実用新案権の出願数や登録数は減少傾向にあります。

出典:特許行政年次報告書2020年版

海外における実用新案の推移

外国では実用新案出願の件数は以下のような推移です。中国が圧倒的に多いですね。その他の国ではあまり活用されていないようです。

特許出願で各国を比較しても中国が一番多く出願していますが、実用新案のような差はありません。

出典:直近10年に見る世界7カ国の知財動向(発明通信社)

中国の実用新案制度

なぜ中国ではそんなに実用新案出願が多いのでしょうか?中国実用新案制度の特徴を解説します。

参考:中国における実用新案制度の概要と活用(新興国等知財情報データバンク)

特徴①:実体審査が無く出願から登録までの期間が短い

日本と同様、方式的な要件を満たしていれば、新規性・進歩性などの実態審査が行われることなく登録されます。ただ、方式審査だけでは、欠陥のある実用新案権が多く登録されるという問題があったようで、それを改善するために強化方式審査が行われています。

強化方式審査とは、形式上の不備だけでなく、実質的な不備がないかを審査するもので、例えば以下のような項目がチェックされます。

  • クレームの記載要件を満たしているか
  • 明細書の公開要件を満たしているか
  • 補正制限に違反していないか
  • 先願がないか

特徴②:特許・実用新案の同日出願制度

中国には日本のような出願変更の制度はありませんが、出願人は同一の発明について特許と実用新案の両方を同日に出願することができます。この制度を利用して特許と実用新案を同日に出願すれば、実用新案出願は実体審査がないため先に登録されます。特許の登録要件を満たす場合に、出願人が実用新案権を放棄することにより、特許権を取得することができます。

特許が登録されるまでの間は、実用新案権で保護されるので安心ですね。

特徴③:権利行使しやすい

中国の専利法には、日本の実用新案法のような「技術評価書を提示して警告をした後でなければ、権利を行使することができない」などの規定はありません。

また、「警告や権利行使を行い、その後、実用新案登録が無効となった場合、相手方に与えた損害を賠償する責任を負う」などの規定もありません。

つまり、中国の実用新案権は日本の実用新案権に比べて、権利行使しやすいと言えます。

特徴④:無効にされづらい

特許の場合、1件または複数の既存の技術の組合せで進歩性を評価します。一方、実用新案の場合、1件または2件の既存の技術の組合せで進歩性を評価します。ただし、従来技術の「簡単な寄せ集め」からなる実用新案に対しては、状況に応じて、複数件の従来技術の組合せで進歩性を評価することもできるようです。

実用新案権の進歩性基準は特許と比べて低く、実際に無効審判を請求する場合、2件以内の無効資料で無効とすることは容易ではありません。

ドイツの実用新案制度

実用新案は中国以外でもドイツでは戦略的に利用されています。ここではドイツ実用新案制度の特徴も解説していきます。

参考:ドイツにおける実用新案権の戦略的な活用について(青山特許事務所)

特徴①:無審査登録で早くて安い

これは、日本も中国も同じですね。ただし、ドイツでは特許と同じレベルの進歩性が求められる点で日本や中国と異なります。また、保護対象についても方法が含まれている点で、特許に近いものとなっています。

出願から登録までの期間は数週間~3カ月と短く、サーチや審査が不要な分、料金が安くなっています。

参考:日本とドイツの実用新案制度の比較(徒然なるままに欧州知財実務)

特徴②:分岐実用新案出願で特許と併存できる

分岐実用新案出願(Branch offともいう)は、中国の特許と実用新案の同日出願制度と似ており、特許と実用新案を併存させることができます。

ドイツは審査請求の期限が、特許出願してから7年以内と長いため、審査が開始される前に製品が模倣されることもあります。そのような場合に、分岐実用新案出願をしておき他社製品を権利範囲に含めるように権利化して、権利行使することもできます。

ちなみに、ドイツに直接出願した場合、欧州特許庁に出願した場合のいずれの出願に対しても分岐実用新案出願が認められています。

特徴③:6か月のグレースピリオドが認められている

ドイツ特許法では論文発表などで自ら新規性を喪失してしまったとき、特定の国際博覧会で公知にした場合など限定的な条件でないと例外の適用ができません。

しかし、実用新案の場合には、6か月のグレースピリオドという期間があり、この間であれば新規性喪失の例外が広く適用されることになります。

つまり、日本で論文発表後にドイツ出願をする場合には、特許での権利化が難しくても実用新案で権利化を図ることができるという場合があります。

参考: ドイツの実用新案が活用される場面3つ( 徒然なるままに欧州知財実務 )

米国には実用新案制度がない?

実用新案制度がない理由

冒頭に紹介したグラフで米国のデータが含まれていないことに、お気づきかもしれません。当然、各国で知的財産を保護する制度に違いがありますので、実用新案制度自体が無い国もあります。

実用新案は無審査や進歩性のレベルを下げるなど、中小企業のように開発力が大企業に比べて劣る場合でも権利を取ることができるという制度です。

米国は技術的には世界の先頭を走ってきたため、下手に実用新案制度を導入すると他国の企業によって権利を押さえられてしまうことを嫌ったのかもしれませんね。

米国では出願をあきらめる?

実用新案制度が無いとはいえ、米国は市場としては重要ですので、特許か意匠を出願して製品を保護することを検討するとよいでしょう。先行技術の公開状況にもよると思いますので、特許事務所や弁理士など専門家に相談するのが得策です。

まとめ

今回は海外の実用新案制度の特徴について、中国とドイツを中心に解説しました。

実用新案権は特許よりも登録のハードルが低いですが、当然ながら出願時に公知となっている技術は権利化できません。そこは、出願前に特許調査をして登録の可能性を見極めてから出願しないと、投資がムダになってしまいます。

特許調査は専門スキルが必要となりますので、自分でやろうとすると長時間を費やしてしまったり、他社から先に出願されてしまう可能性があります。

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