色彩のみからなる商標とは?現役弁理士が簡単に解説します。
色彩のみからなる商標を取得されたってニュースで見たけど、どんなメリットがあるのかわからない。とお悩みの方もいらっしゃると思います。
色彩のみからなる商標は、動き商標と同様に2015年に導入された比較的新しいタイプの商標です。
色彩のみで表現される範囲を商標として押さえることで、他社に対するブランドを確保(自社のブランドを保護)することができます。
本記事では、色彩のみからなる商標とは何か、また、簡単な類否判断の方法についてもご紹介いたします。
ある程度理解をしたら、あとは弁理士に相談しましょう!
目次
そもそも商標とは?
商標とは、「ネーミング」に該当する部分と、その「ネーミング」で使用する商品・サービス(商品は目に見えるもの・サービスは目に見えないもの)に該当する部分を組み合わせることで成立します。
例えば、ネーミング「トンボ」は、第16類で「文房具類」で商標を取得しております。
したがって、上記商標を保有している株式会社トンボ鉛筆以外は、上記ネーミングと上記商品の組み合わせを使用すると、商標権を侵害することになります。
商標の種類
今回、ご説明する「色彩のみ」以外にも、文字・図形・色・音等の様々な種類の商標があります。
詳しくはこちらの記事をぜひご覧ください。
新しいタイプの商標とは【色彩・ホログラム・動き・音・位置】
従前は、新聞や雑誌等の紙に対して文字や図形を掲載することで、商品及びサービスの認知度の向上を図ってきました。
しかし、スマートフォンやPC等のデバイスの発達やインターネット環境の充実化に伴い、今までの紙に限らない形で商品及びサービスを提供することが増加してきました。
更に、海外諸国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等)は、既にホログラムや音等を商標として保護されていました。
このような実情から新しいタイプの商標が2015年に導入される運びになりました。
このタイプは大別すると、5つになります。
1)色彩のみからなる商標
色彩のみからなる商標とは、輪郭のない色彩のみからなる図形です。
2)ホログラム
ホログラム商標とは、図形が見る角度等によって、変化してみえるもの図形や写真です。(ホログラム商標とは?現役弁理士が簡単に解説します)
3)動き
動き商標とは、時間の経過に伴って、変化する文字や図形です。(動き商標とは?現役弁理士が徹底解説します!)
4)音
音商標とは、TVCM等で使用されるサウンドロゴです。(意外と身近な音商標!具体例も併せて徹底解説!)
5)位置
位置商標とは、図形等が商品の特定の位置にある図形です。
色彩のみからなる商標とは
色彩のみからなる商標とは、「文字や図形が含まれない、色彩のみを構成要素とする」ことになります。
そして、3種類に大別にされます。
- 単色
- 複数色
- 商品等における位置を特定(包丁の柄の部分が赤色等)
単色
単色とは、単色からなる商標です。
赤色のみ等の単色からなる。等が例として挙げられます。
複数色
複数色とは、複数色からなる商標です。
青色と赤色と白色の組み合わせからなる。等が例として挙げられます。
商品等における位置を特定
商品等における位置を特定の色彩で表現される商標です。
包丁の柄の部分を赤色バッグの持ち手の部分を赤色にする。等が例として挙げられます。
色彩のみからなる商標の具体例
以下に具体例を説明します。
大きくは3種類に大別されるので、各々を説明いたします。
- 単色からなる商標
- 複数色からなる商標
- 商品等における位置を特定の色彩で表現される商標
1.単色からなる商標
商願2015-30464 第一生命保険株式会社
赤色(RGBの組合せ:R223,G0,B16)のみからなるものであります。
これらの説明は、商標登録願に記載された「商標の詳細な説明」からも確認できます。
2.複数色からなる商標
商標登録第6021307号 株式会社三井住友フィナンシャルグループ
色彩の組合せのみからなるものであります。色彩の組合せとしては、緑色(HSBの組合せ:H161,S100,B28)、黄緑色(HSBの組合せ:H65,S100,B84)であり、配色は、上から順に、緑色が商標の75%、黄緑色が25%となっています。
多くの人がこの配色だけで、「三井住友だ」と認識できるため商標を取得しているのでしょう。
詳しい説明は、商標登録願に記載された「商標の詳細な説明」からも確認できます。
3.商品等における位置を特定の色彩で表現される商標
商願2015-29921 クリスチャン ルブタン
女性用ハイヒール靴の靴底部分に付した赤色(PANTONE 18-1663TP)で構成されます。
ルブタンの代名詞である、靴底に使用されている赤色を商標登録しています。
なお破線は商標がどのように使用されるかの一例を示したものであり、商標を構成する要素ではありません。
こちらも詳しい説明は、商標登録願に記載された「商標の詳細な説明」からも確認できます。
色彩のみからなる商標を取得するときのポイント
1)商標欄には、願書に記載した商標が、色彩を表示した図又は写真であって、商標の詳細な説明に、色彩のみからなる商標と認識し得る記載がなされている必要があります。
左側にあるように単色のみでの表示でもよいですし、右側にあるように複数色の表示でもよいです。
ただし以下のように、特定の文字(JPO)等を認識させることが明らかである場合は、認められません。
2)商標出願人側の意思として、商標記載欄の下に【色彩のみからなる商標】を記載します。
3)2)で記載した色彩のみからなる商標の下に、商標の詳細な説明を記載します。
つまり、「色彩のみからなる商標」を構成する色彩を特定するための色彩名、三原色(RGB)の配合率、色見本帳の番号、色彩 の組み合わせ方(色彩を組合せた場合の各色の配置や割合等)等についての具体的かつ明確な説明を記載する必要があります。
記載例
①商標登録を受けようとする商標は、赤色(RGBの組合わせ:R255、G0、B0)のみからなるものであります
②商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、色 彩の組合せのみからなるものである。色彩の組合せとしては、 赤色(RGBの組合せ:R255、G0、B0)、青色(RGBの組合せ:R0、 G0、B255)、黄色(RGBの組合せ:R255、G255、B0)、緑色 (RGBの組合せ:R255、G128、B0)であり、配色は、上から順に、 赤色が商標の縦幅の50パーセント、同じく青色25パーセント、 黄色15パーセント、緑色10パーセントとなっています。
4)更に、商品における位置を特定する場合は、その位置を記載します。
記載例
① 商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、 色彩のみからなるものであり、包丁の柄の部分を赤色 (RGBの組合せ:R255、G0、B0)とする構成からなります。 なお、包丁の刃及び柄の部分の破線は、商品の形状の 一例を示したものであり、商標を構成する要素ではありません。
色彩のみからなる商標で権利化するメリット
色彩のみからなる商標を取得するメリットは、主に、対象物の形状が限定されないことです。
対象物の形状が限定されない
例えば、商品の包装紙や広告用の看板やWEB媒体等の、色彩を付与する対象物によって形状を変えて使用する色彩が保護範囲になりますので、対象物の範囲が極めて広範になります。
立体商標だと、形状が変更されると商標権の範囲外となりますが、色彩のみからなる商標だと形状が変更されても、色彩が同じであれば、商標の範囲内になります。
色彩のみから商標の類否判断について
色彩のみから商標における類否判断を説明します。
「商標全体として考察する」のが基本
・色彩が有する色相、彩度、明度を総合して考察します。
・色彩を組み合わせてなる商標は、色彩の組合せにより構成される全体の外観を結合して考察します。
・色彩を組み合わせてなる商標を構成する一色と、その一色と同色の色彩のみからなる商標とは、原則として、類似しません。
・「単色の商標」と「文字と色彩の結合商標」とは、原則として、類似しません。
・「単色の商標」と「文字商標」とは、称呼及び観念において同一又は類似であるとしても、色彩のみからなる商標は、 主として色彩の外観が重要な判断要素となることから、原則として、類似しません。
「図形と色彩の結合商標」と「色彩を組み合わせてなる登録商標」との類否 「図形と色彩の結合商標」を本願とした場合の「色彩を組み合わせてなる登録商標」との類否については、色彩の配置や割合等が同一又は類似であれば、原則として、類似します。
識別力
以下の色彩については、識別力がないものと判断されますので、出願時に注意を要します。
(商標登録の要件)
第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二 その商品又は役務について慣用されている商標
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
3条1項2号に関するもの
- 「赤色及び白色の組み合わせ」(婚礼の執行)
- 「黒色及び白色の組み合わせ」(葬儀の執行)
3条1項3号に関するもの
商品等が通常有する色彩のみからなる商標については、原則として、本号の規定に該当するものとする(引用:特許庁)
- 商品の性質上、自然発生的な色彩 (例:商品「木炭」の「黒色」 )
- 商品の機能を確保するために通常使用される又は不可欠な色彩(例:商品「自動車用タイヤ」の「黒色」)
- その市場において商品の魅力の向上に通常使用される色彩(例:商品「携帯電話機」の「シルバー」)
- その市場において商品に通常使用されてはいないが、使用され得る色彩(例:商品「冷蔵庫」の「黄色」)
- 色模様や背景色として使用され得る色彩(例:商品「コップ」の、「縦のストライプからなる黄色、緑色、赤色)
図形商標の検索方法
j-platpatを使った調べ方
j-platpatでの調査方法を紹介します。
商標で「商標検索」を選択します。
この状態で、「検索オプション」の「開く+」ボタンを押します。
開いた状態で、「色彩のみからなる商標」にチェックを入れます。
この状態で、検索ボタンを押します。
まとめ
色彩のみからなる商標は理解いただけたでしょうか。今後、活用の幅がますます広がっていくとおいますので、積極的に色彩のみからなる商標を出願していきましょう。不明点があれば専門家である弁理士に相談してみてください。
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ゲーム業界の知財部で10年以上勤務。日々、他社の知財を警戒しながら、自社の商品を守るため、奮闘中。 調査や出願、一通りの業務をこなしてきました。
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