ITベンチャーの特許分析!ネット広告で有名なサイバーエージェントを解説
前回のLINE株式会社に引き続き、ITベンチャーの特許をJ-PlatPatやExcelなどの無料ツールを使って分析します。
今回は株式会社サイバーエージェントの分析を行います。サイバーエージェントは、クリック保証型バナー広告のサイバークリック、アメーバブログ、ABEMA TVなど有名なサービスが多く提供しています。
IT業界の先駆者が保有する特許がどんなものか気になりますね。一緒に分析していきましょう!
<この記事でわかること>
・サイバーエージェント株式会社の特許と商標の出願傾向
・インターネット広告とロボットに関連した特許事例とビジネス動向
(執筆:知財部の小倉さん)
株式会社サイバーエージェントの概要
会社概要
株式会社サイバーエージェント(CyberAgent, Inc.)は、メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業を主とする日本企業で、藤田晋氏が創業しました。
社長の藤田晋氏はインテリジェンス(現パーソルキャリア)を辞め、インテリジェンス創業者の宇野康秀氏から出資を受けて、サイバーエージェントを1998年に創業しました。
1998年に、クリック保証型バナー広告「サイバークリック」のサービスをオン・ザ・エッヂ(堀江貴文氏が創業)との協業で開始しました。
メディア事業として、2004年にレンタルブログの「アメーバブログ」、2009年に仮想空間アバターサービスの「アメーバピグ」、2015年に株式会社テレビ朝日との共同出資により動画配信事業を行う「株式会社AbemaTV」を設立してインターネットテレビ局を開局しました。
ゲーム事業は、2009年から参入し、2011年には株式会社Cygamesを設立して「グランブルーファンタジー」を筆頭に人気コンテンツを提供しています。
参考URL
Wikipedia サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェント ホームページ
特許動向分析
分析に使用したツール
今回の分析にも以下のツールを使用しました。
【検索ツール】J-PlatPat
【分析ツール】Microsoft Excel(Office365)
分析の詳細な手順については過去の記事で紹介していますので、ご参照ください。
参考URL
パテントマップ実践!J-PlatPatとExcelを使った知財状況の可視化
特許マップ(パテントマップ)の作り方!知財部員がやさしく解説!
母集団の取得
まずは分析の対象となる母集団を取得しますが、特許に限らず意匠や商標を含むの全体件数を検索します。
「簡易検索」から「四法全て」を選択し、「テキストボックス」には株式会社サイバーエージェントと入力します。
特許・実用新案23件、商標205件の文献がヒットしました。特許・実用新案の外国文献はヒットしませんでした。
特許23件の出願人についてノイズ(下表の黄色)を除くと母数は22件となりました。
商標205件の出願人について内訳を見ると、201件とほとんどがサイバーエージェントの単独出願でした。
以上の結果から、サイバーエージェントは技術開発を大阪大学と頻繁に行っていますが、知財権の保護という意味では商標に力を入れていることが分かりました。
ソフトウェアは特許出願がノウハウの流出にもつながりやすいですし、侵害立証も困難ですので出願には積極的ではないのかもしれませんね。
特許出願の推移
特許22件の出願番号と登録番号をグラフにすると以下のようになります。22件のうち11件が登録されており、2018年までの登録率は66%となります。2019年、2020年の出願は審査中である可能性が高いです。
さらに出願のIPC分類を見てみると下のようになります。分類内容を知りたい場合は「特許・実用新案分類照会(PMGS)」から確認できます。
LINEと同様にG06(計算または計数)をメインとして、2016年にH04(電気通信技術)が一時的に出願され、最近はG10(楽器;音響)の割合が増えています。
商標出願の推移
特許と同じように、商標の出願件数の推移を見ていきます。特許と違い、基本的には拒絶されずに登録されています。
2015年は最も商標出願が多かった年ですが、サイバーエージェントが12年ぶりにコーポレートとAmebaのブランドロゴを新しくした年でした。
同年にAbemaTVも始まる予定でしたので、「Abema」の文字商標も出願されていました。このように主力事業や新事業のブランド保護は発表前に完了しておくのが良いですね。
他者に出願権利化されてしまうと後でロゴを変更することにまで問題が発展してしまいます。
参考URL
CNET Japan(サイバーエージェント、企業ロゴを12年ぶりに一新–NIGO氏がデザイン)
特許事例紹介
株式会社サイバーエージェントの気になる特許を事例として紹介します。
「広告配信を受け取る携帯端末およびプログラム」(特許第5724028号)
特許第5724028号は2014年にサイバーエージェントが初めて出願した特許です。
その目的は、スマートフォンにおいて、ブラウザを利用したときの閲覧情報と、アプリを利用したときの閲覧情報とが、同一のスマートフォンによるものかどうかを判別することができないという課題を解決するものです。
具体的には、ブラウザ利用情報とアプリ利用情報とが同一のスマートフォンによるものであることを、識別情報に基づいて判別することができ、広告効果を高めることができるという技術です。
やはり、サイバーエージェントの第1つ目の特許出願はインターネット広告に関するものなんですね。
「対話装置がどの人に話しかけているのか示すことができる制御システム」(特許第6887035号)
次の特許第6887035号は、最近の出願でG10(楽器;音響)に分類される出願です。
目的は、ロボットや対話エージェント等の対話装置が複数の人と同時に対話する場合、どの人に話しかけているのか、わかりにくくなるという問題を解決するものです。
技術としては、複数の人の対話履歴情報と発話内容に基づいて対話装置を向ける方向や動作内容を決定するというものです。
サイバーエージェントは阪大の石黒教授とホテルの接客ロボットの実証実験をやっているようですので、この技術が使われているんでしょうね。
参考URL
ニューススイッチ(サイバーエージェントと阪大石黒教授、ホテルの接客ロボットを実証)
まとめ
株式会社サイバーエージェントは、特許よりも商標出願に重きを置いていることが分かりました。
ただ、特許も自社の主要技術である広告や、新規事業として力を入れているロボットなど必要なものは出願されていることが分かりました。ただ、ソフトウェアやシステムの特許はノウハウの流出にも気を付けなければなりません。
また、サイバーエージェントはゲームやエンタメなどのサービスを提供することが多いと思いますので、他社に商標を取得されないようにサービスを発表する前に商標出願を完了させておくことをおススメします。
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特許関係の仕事に従事して10年。5年間は特許事務所で500件以上の出願原稿の作成に従事。その後、自動車関連企業の知財部に転職し、500件以上の発明発掘から権利化に携わってきました。現在は、知財部の管理職として知的財産活用の全社方針策定などを行っています。
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