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スタートアップのアメリカ特許出願!米国弁護士が徹底解説!

スタートアップ アメリカ特許

はじめに

インターネット及びスマートフォンの普及により、日本で誕生したばかりのスタートアップが、かなり早い段階でアメリカでビジネスを行うことも珍しいことではなくなりました。

アメリカ特許とスタートアップとの関連で解説してみたいと思います。

(執筆:柴田純一郎 米国弁護士/弁理士

自社の特徴を分析しましょう

まずアメリカとのビジネスを考える前に、自分のビジネスの特徴・強みがどこにあるのか考えてみることが重要かと思います。

例えば、ソフトウェアやプラットフォーム基盤を提供する事業を主とされている場合、技術的なところに特徴・強みがあるということになるでしょうし、一方コンテンツを提供する事業を主とされている場合、コンテンツそのもの又はラインナップに特徴・強みがあるということになるでしょう。

一方、人や物を集める事業を主とされている場合、そのキャッチ―さやイメージに特徴・強みがあるということになるでしょうし、他人に対してアドバイスやコンサルティングを提供する事業を主とされている場合、どのように対象となるものに精通し何を切り出してアドバイスしていくのかに特徴・強みがあるということになるでしょう。
また、商品の販売を主とされている場合、その商品のユニークな形状・デザインに特徴・強みを持っているということもあるかもしれません。

何を特徴・強みと捉えるかによって、知財として何を狙っていくのかが方向づけられます
上記の例でいえば、技術的なところに特徴・強みがある場合には、いかに既に獲得している技術で優位性を獲得し、どのような技術分野に今後拡大していくかが重要ですので、技術を守り技術を武器にする知財を考えていくことになるでしょう。

知財戦略は起業検討段階から始まります

例えば、技術的なところに特徴・強みがあるビジネスを行う場合、ビジネスに用いる技術が起業とともに一夜にして成立するわけではありません。
起業前の開発の段階から、既に起業に必要な知財活動は始まっており、とすると起業前の段階から知財戦略・管理体制を整えていき、起業したタイミングでは既にビジネスに用いる技術について優位性を持てるようになっておく必要があります

起業後に知財管理体制を整えようとしても、既に起業前に着手してしまった部分まで遡ることは難しい場合もありますし、また既に着手してしまった分のボリュームによっては多大なコストが発生することもあります。
まだ何もない0の段階から取り組むことが肝要といえます。

自分の技術の保護

技術的なところに特徴・強みがあるビジネスを行う場合、特許との付き合いが不可欠となってきます。
まず自分の技術を他人による模倣からどのように保護するのか?がビジネスにとって重要なように思われます。
この点については、自分の技術について特許を取得することが1つのソリューションになりえます。

(1)公開?秘匿?

ただ、気を付けておかなければならないのは、特許出願を行う=自分の技術を世の中に知らしめる、ということです。
世に知らしめずに技術秘密として自社内で秘匿した方が得なのかをよく検討した方がよいでしょう。
一般に、製品(例:ソフトウェアやプログラムなど)を付加価値として世に提供していくビジネスの場合、これを購入した側からリバースエンジニアリング等により、その採用技術をどこまで解析できるのか?という点が肝要です。
もし比較的簡単に自分の技術が製品から読み取られてしまうような場合には、自ら世の中に技術を公開して特許化を図った方がよいでしょう。

一方、社外からは把握しにくい技術(例:プロセスや製造工程など)の場合には、技術秘密として秘匿する方法の方が適しているといえるでしょう。
当該技術が記載されるものに秘密の表示を行い、アクセスできる人を社内でも厳格に制限するなどの管理を行えば、例えばハッキングやスパイなどにより技術が漏れてしまったとしても、技術的営業秘密として保護を受けることができる場合があります。また、ソフトウェアやプログラムの場合には、それでも侵害行為が起こった場合には、著作権による保護を求めることも検討できます。

(2)秘密管理

技術を秘匿化してノウハウとして保護することを選択した場合、日本同様、秘密として管理(秘密の表示+アクセス制限+開示を受けた場合の取扱い条件の定め)を行うことが必須です。
ここで、ノウハウの開示を受ける対象としては、第一義的には従業員が挙げられますが、就業規則を含む従業員との契約において、秘守すべき対象とその条件をしっかり定めるとともに、入社時・退職時において、秘密保持の誓約書を取るなどの体制を備えておくことが必要です。
また、取引先に対してノウハウを開示する場合も同様に、秘密保持契約を締結するなどして秘守義務をしっかり課すのか、取引先の検討に不要な情報はそもそも開示しないなど物理的な対応も必要でしょう。

(3)ラボノート管理

また、アメリカを意識した場合、いつ誰が何を着想したのか、どの段階で何がどこまで完成していたのかを示す記録が重要となることがあります。
アメリカは今でこそ、他の多くの国と同様に先願主義(先に出願した人に特許を付与する制度)を取っていますが、先発明主義(先に発明した人に特許を付与する制度)の要素を依然と残しています。
もしどちらが先に発明したのか?が争いとなった時に備えて、そのような記録を取っておく体制が必要といえます。

(4)職務発明

さらには、アメリカは、今でも従業員が行ったいわゆる職務発明についても原則として従業員に特許を受ける権利が原始的には生じるとの立場を取っています。
起用している従業員が職務発明を行った場合の扱いを、就業規則を含む従業員との契約においてしっかり定めておく体制が必要です。

(5)出願前の情報開示

別の観点では、アメリカでは他国と比べても寛容なグレースピリオドを設けておりますが(グレースピリオドについては、こちらをご参照)、誰がいつ何を特許出願前に開示したのかによっては、グレースピリオドの対象外になってしまうことも考えられます。
よって、特許出願前の情報開示について管理体制を持っておく必要があるといえます。

(6)IDSの管理

ことアメリカにおいては、特許出願を行うにあたって、自分の発明についてどのような先行技術を知っているか?という点が非常に重要です。
これらの情報は、特許出願に際して全て特許庁に開示しなければなりません(IDSといいます。その詳細はこちらをご参照)。
これを怠って特許権を得てしまうと、不正に特許権を得たものとして、特許権を使えないことになってしまう他、場合によっては詐欺罪にあたるとして刑事告訴の対象にもなります。

よって、関連技術情報を管理する体制も必要といわざるを得ません。

(7)戦略面の準備

このように自分が自分の技術について特許を得るだけでも、それなりの管理体制を準備しておく必要があります。
もちろん今後のビジネスの方向性を見据えて、どの辺の周辺領域を特許として押さえていくか(パテントポートフォリオ)や、1つの技術でもよりバラエティ豊かに特許を取るための手続戦略(手続戦略については、こちらをご参照)をどのように考えていくか、などの戦略面でも体制を持っておく必要があることはいうまでもありません。

他人の特許に気を付ける

一方、ついつい自分の技術の保護に目が向きがちですが、技術的なところに特徴・強みがあるのであれば、他人の特許を侵害してしまうリスクにも同じく目を向けなければなりません

自分の技術の開発段階から、パテントマップを作成して、どの技術分野にどんな先行特許があるのかを把握して回避する体制、また回避ができない場合には特許権者からライセンスを受ける体制を持っておかなければなりません。

特許をはじめほとんどの知的財産権は、属地主義(国別での効力)となっていますので、パテントマップを国別に作成して、国別に第三者の特許に備える必要があります

また上述のように、ソフトウェアやプログラムの場合、特許にだけ気を付ければよいものではありません
ノウハウや著作権によって保護されている場合もあります。
自社の製品を米国で発売する前に、米国での競合製品を調べて、自社の製品と類似する先行製品がないか、ある場合にはどういう機能を持っているのか、自社技術との関連性はどうかなどの諸点を吟味しておく必要があるでしょう。

訴えられた?!

アメリカは、想像されている以上に訴訟の多い国です。
どんなに他人の特許を侵害しないように心掛けていても、アメリカでビジネスをしていると訴訟に巻き込まれることも十分に考えられます。
特にアメリカでは、他人の特許を買い取って、権利行使をして賠償金を取ることを業としているパテントトロールの存在に注意が必要です。

訴訟の可能性を意識して、アメリカでビジネスを展開する前に、少なくとも以下の点については体制を用意しておくことが必要でしょう。

(1)弁護士へ相談!

訴訟になる前であったとしても、警告状が届くなどアメリカで訴訟への展開が予期される事象が生じたら、まず米国弁護士(日本の弁護士や弁理士ではなく)に相談することを徹底しましょう。これには2つの理由があります。

(A)アメリカ法への精通

1つは、いうまでもなくアメリカ法への精通の観点です。
アメリカで訴訟が起きそうなのですから、その道のプロに相談するのは自然といえます。

(B)弁護士依頼者特権

もう1つは、弁護士依頼者特権の利用のためです。
訴訟について、アメリカと日本とで大きく異なるのは、アメリカでの訴訟では、ありとありゆる関連証拠を全て相手方に提供しなければならない「ディスカバリー」という手続がある点です。
日本でも相手方に対する証拠開示手続は存在しますが、その範囲は限定的ですし、幅広い例外が認められています。
しかしながら、アメリカでは、範囲も関連性が少しでもあれば全て対象となりますし、例外もわずかしか認められておらず、訴訟においてサーバーを丸ごと開示することもざらに行われます。

アメリカのディスカバリーの少ない例外として、依頼主が弁護士に対して法律相談を受けるために秘密裏に開示した情報や、弁護士が依頼主に対して秘密裏に行った法律アドバイスの内容が挙げられます。これらの例外のことを弁護士依頼者特権と称します。

ここでいう弁護士とは、もちろん米国弁護士です。
もし初期の相談を米国弁護士ではなく、日本の弁護士や弁理士に対して行ったらどうなるでしょうか?
原則として、弁護士依頼者特権の適用はないため、相談内容を全て相手方に開示しなければならないことになります。
これは非常に不利ですね?

よってアメリカで訴訟になりそうになったら、米国弁護士(日本の弁護士や弁理士ではなく)に相談することが肝要となります。

(C)弁護士は誰に相談すればよい?

米国では弁護士の専門が細分化されています。
特許に限って言っても、特許庁手続を専門としている米国弁護士、契約ごとを専門としている米国弁護士、訴訟を専門としている米国弁護士などが存在します。

もし訴訟を専門とする米国弁護士のあてがなければ、出願時にお世話になった米国出願弁護士から紹介してもらうことも一案です。

米国出願を行ったことがなく、米国出願弁護士のあてもなければ、日本の弁理士や弁護士に紹介してもらうことも一案ですが、上述のとおり、トラブルの詳細を日本の弁理士や弁護士に話してしまわないことが重要です。

(2)情報管理

訴えが裁判所に提起されると、ディスカバリーのために裁判所から「証拠処分の禁止」が発令されます。
上述のとおり、アメリカでの証拠の範囲は膨大ですので、個々のEメールも含まれます。
この命令の後にEメール1つでも処分してしまうと、大きなペナルティとなりえますので、情報の管理には細心の注意が必要です。

(3)戦略の相談

アメリカの訴訟では、日本にはない多くの戦い方が存在します。
また事前にお互いにディスカバリーを通じて証拠を開示し合うことから、裁判所による判決や陪審員による評決に至らずに和解に終わる例も多くあります。

戦い方は事例次第で多種多様ですので、訴訟担当の米国弁護士と密に連携を取って戦略を考えるようにしましょう。

言語や法律文化の相違から、米国弁護士と直接やり取りすることが難しい場合には、米国弁護士の承諾を得た上で、日本の弁理士や弁護士に間に入ってもらうことも一案です。
特に弁理士は、普段から米国出願を取り扱っており、米国の特許制度に詳しくかつ英語に堪能な弁理士も多くいますので、相談されるとよいでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、弁護士依頼主特権があるので、日本の弁理士や弁護士に介在してもらうやり方についても、米国弁護士に相談するようにしましょう。

おわりに

このように知財の備えにしてもアメリカでのビジネスの備えにしても、起業の前段階から始めなければなりません。
起業の検討段階から、弁理士などの専門家に相談しながら体制を構築してくことをお勧めします。

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