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特許庁×QuizKnockコラボで提案されたアイデアは今!?現状を調べてみた

先日、個人的に特許庁×QuizKnockのコラボ動画を視聴しました。

東大発の知識集団メンバーが1週間で知的財産権を考案してみる!という内容で、知的財産権について楽しく&分かりやすく知れる良動画です。

ただ知財タイムズ編集部としては、つい脳裏に「果たして動画中に出てきたアイデアは出願・権利化されてるか?」という疑問がよぎります。

そこで実際にリサーチしてみました。(検索日:2024年8月7日)(2024年10月15日追記あり)

なお記事の後半にはガッツリ動画のネタバレを含みます。必ず先に動画本編をご覧ください。

特許庁×QuizKnockのコラボ動画

そもそもQuizKnockとは、クイズ王・伊沢拓司氏率いる東大発の知識集団で、動画Webサイトをはじめマルチに活動をしています。

そんなQuizKnockと特許庁がコラボした動画がこちら。1週間で知的財産権を考案し、それが権利になるか?を特許庁がジャッジするという内容です。

なお特許庁では通常、権利取得可否の個別相談は行っていません。動画のため、特別に行っています。

あのアイデアがどうなったか、調べてみた

結論から言ってしまうと、ほとんどは情報公開される前でした。

とはいえ分かることもいくつかあるので、それぞれ紹介してみようと思います。

(10/15追記)結論から言うと、動画中で「いけるかも」判定の出たアイデアは、ほぼ全て権利化されていました!

河村さん考案の実用新案権

こちらは2024年2月19日に出願され、4月には実用新案権(実登3246407)として認められていました

実用新案権は、特許権に比べて権利化までのスピードが速いことがひとつの特徴です。

また動画中では特許権も取れるかも…!?という話がありましたが、情報は見つかりませんでした。

それもそのはずで、特許権は出願日から1年6ヶ月後に公報を公開するという決まりがあり(特許法第64条)、仮に特許出願をしていたとしても、まだ情報公開されていないんです。

ちなみに実用新案権には、登録後でも条件を満たせば特許権に変更できるというルールがあります(特許法第46条の2)。これも踏まえて実用新案登録をしたのかなと思いました。

伊沢さん考案の意匠権

「株式会社baton(QuizKnockの運営会社)」で検索しても、意匠権は1件もヒットしませんでした。

ただこれも、仮に出願していたとしてもまだ情報公開されていないパターンかなと思います。

まず意匠権は、”出願されてから”ではなく”登録されてから”約2週間後に公報が公開される仕組みとなっています。

意匠権は出願から登録査定/拒絶理由通知が届くまでに6ヶ月ほど必要なので、河村さんの実用新案権と同じ日に出願していたとしても、まだ審査が始まっていないと考えられます。

【2024/10/15追記】

こちらの意匠権、早押し解答機(意匠登録1779915)として9月5日に無事登録されていました!

公報の説明には「本物品は、表示部に取り付けられたシャッターの昇降が可能な早押し解答機である。なお、早押し機、早押しボタン、クイズ解答機、クイズ回答機、クイズゲーム用入力機、早押しスイッチ、タイマー付き早押し解答機、シャッター付き早押し解答機、パソコンを親機とした際のクイズゲーム用子機とも言える。」と書かれていて、動画で話題になっていたように、マルチに使えるアイテムに仕上がっていることが分かります。

山本さん考案の商標権

最後は山本さん考案の商標権についてです。

動画内でもあったとおり、ロゴマーク(商願2024-016640)と文字列(商願2024-016641)の2つで商標出願がされていました。

ただ商標権も、現在は審査待ちの状態特許庁HPの情報によると審査は2024年9月ごろになる予定だそうです。

一般的に商標は、出願から権利化まで7~8ヶ月かかります。早期審査という制度を使えば約2ヶ月で権利化できますが、適用条件が厳しいので今回は当てはまらず、通常審査で出願しているみたいです。

【2024/10/15追記】

こちらの商標権も、両方審査をクリアして10月3日に商標登録されていました。

ただ現在はどちらも「存続-登録-異議申立のための公告」というステータスになっています。これには商標登録異議の申立制度というものが関係しています。

簡単に言うと「特許庁的には権利化してOKだと判断したけど、見落としなどがあるかもしれないから、商標の権利化に対して反対意見があれば連絡してね」という制度です。この権利化への反対意見があれば受付中だよ~というのが「存続-登録-異議申立のための公告」というステータスです。

異議申立の受付期間は公報の発行日翌日から2ヶ月間なので、問題がなければ12月13日ごろにステータスがまた変わると思われます。

実は面白い!?権利の中身も詳しくチェック

ここで編集部が面白いなと思ったのは、QuizKnock商標との「区分の違い」です。

まず商標権は出願の際、区分(商品・サービスのカテゴリー)を決めて申請をします。「お茶だけに使います」とか「グッズ展開するから、お茶と文房具と布製品で使いたいです」といったふうに、権利を使う範囲を指定する必要があるのです。

そこで肝心の「QuizKnock」と「やまもとちゅーぶ」を見てみましょう。

【QuizKnock】登録6237178

こちらは簡単に言うと、

  • ダウンロードできるコンピュータプログラム・アプリ類(第9類)
  • 書籍や文房具などの紙製品関係(第16類)
  • おもちゃ(第28類)
  • クイズを筆頭とした知識の教授や、イベントの運営開催など(第41類)

に使う想定で権利を取得しています。

ちなみに第〇類のあとにズラッと書かれているのは「指定商品・指定役務」という、商標を使う具体的な商品・サービスです。

この商標が出願された2019年は企業などとコラボしたり、イベントを開催したり、多方面に活躍していますから、活動範囲の広さを踏まえて4つの区分を選んだのだろうと思われます。

なにより第41類の最初に「クイズを内容とする放送番組の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」を挙げているのはQuizKnockならでは、ですね!

それから調べてみると、2024年2月にもQuizKnock商標(商願2024-015564)を出願していることが分かりました。

これは出願済/登録済の商標は区分も指定商品・指定役務も追加できないという仕様があるからで、区分や指定商品・指定役務追加(権利範囲を広くする)のために新しく出願をしているようです。

【やまもとちゅーぶ】

対してやまもとちゅーぶはロゴ・文字のどちらも

  • 教育分野における情報の提供など(第41類)

の1区分だけでした。

やまもとちゅーぶは別動画の企画のために作ったチャンネルで直近は動画更新の予定も活動の幅を広げる予定もない=最低限の区分でOKと考え、1区分で出願したのでしょう。なにせ区分が増えると費用がかさみます。

またクイズ関係の指定役務がないことは少し意外でしたが、チャンネルコンセプトが「語呂合わせで覚える」だからクイズ関係の指定役務は必要ないと判断したのだと思われます。

まとめ

考案者がQuizKnockという頭の切れる面々、という前提はあるものの、意外と特許をはじめとする知的財産権は身近にあり、ちょっとした閃きも発明や権利になることが感じられたのではないでしょうか。

私たちの身の回りには知財がたくさんあります。気になった方はぜひこちらのバナーから他の記事を見てみてください。

そして社会人の方、特に経営層やそれに近い方は自社の知的財産権をぜひ一度振り返ってみてください。知的財産権は、上手に使えば事業を成長させ、逆にテキトーに扱うと訴訟などのトラブル原因にもなりえます。

もし知的財産権で困ったことがあれば、知財の専門家である弁理士に相談してみましょう!

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