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どんな感じ?審査官面接と知財部の日常を解説!【弁理士解説・それってパクリじゃないですか?第5話】

※今回、記事本文に「それってパクリじゃないですか?」第5話のネタバレは含まれていません。ただし冒頭に掲載しているダイジェスト動画ではしっかりネタバレに触れられているのでご注意ください。
またドラマ本編はTVerHuluにて配信されています。こちらもぜひ合わせてご覧ください。

 

こんにちは弁理士フムフムです。5月10日に「それってパクリじゃないですか?」(通称、それパク)の第5話の放送がされました。

今回は知財関係者ならば皆よく知っている特許庁での撮影シーンが多くて楽しかったですね。私も何度か訪問したことはあるのですが、北脇とは異なり庁内の食堂までは利用したことはないので、いずれ食堂も利用してみたいと思いながら視聴しました。

さて第5話も、作中ではたくさんの知財トピックに触れられていましたね。そのなかでも今回は、話のオチにも大きく関わる「審査官面接」「著作権問題」「調整の仕事」について解説していこうと思います。

特許庁審査官との面接ってどんな感じ?

今回、亜季は窪地の甘酒についての特許出願について特許庁の審査官と面接を行いました。

熊井部長が話していたように特許庁はユーザーフレンドリーを掲げていますので、特許出願をした人や企業が望めば、審査官は通常少なくとも1回は面接の場を設けてくれます。

審査官は物腰柔らかく常識的な方が多いため、面接も和やかな雰囲気で行われることが一般的です。亜季は審査官との面接のため特許庁に出向いていましたが、Web会議が利用されることもよくあります。

ここで、面接までの流れを簡単にご紹介しておきましょう。

まず出願した特許が権利化されるためには、審査官による審査を通過しなくてはいけません。

審査官が特許出願を審査して特許として認めることができないと判断した場合には、特許を拒絶する理由を通知する書面(拒絶理由通知書)を特許出願人に送付します。この通知書を特許出願人が受理した際に、それに対する応答方針を決めるため事前に審査官に面接を申し込むことが多いです。

面接は、こんな活かし方があります

面接では、まず拒絶理由を通知した審査官の考えを確認します。

特許を拒絶する理由は書面に記載されているのですがその意図を正確に理解できていないこともあります。事前に厳しい拒絶の理由であると思い悩んでいたけれど、話を聞いてみると審査官はそれほど重大な指摘とは考えておらず、軽微な対応をとれば問題は解消されるとわかって拍子抜けすることが往々にしてあります

次に特許出願に関する発明について審査官に説明することも多くあります。

審査官が発明の内容を誤解した結果として拒絶の理由が通知されることもあるからです。この場合には面接で発明の技術説明をして審査官に納得してもらえば拒絶の判断が撤回されることになるので面接の成果が大きいといえます。

また審査官による拒絶の判断を撤回してもらうために特許の出願書類の一つである特許請求の範囲という書面に補正を加える方法があります。

特許庁に補正書を正式に提出する前に、審査官に案文を見てもらって反応を確認するために面接が利用されることもあります。複数の案を用意しておいて、審査官の顔色を見ながら最終的にどこまで譲歩した案を提出するべきか考える戦略をとることもあります。

ドラマ内では…

ドラマ内では発明についての学術的な裏付けがほしいと審査官から亜季が指摘を受けていました。

大学の先生に協力を仰ぎにいくことまで求められることは本来ないはずですが、発明について審査官から疑念を持たれた場合に、出願人が発明の効果などについて実験で確認してその結果を提出することは化学の分野などで行われています

これは審査官は出願書類に記載されている発明について自分で追試することができないからです。

知財部で著作権を扱うことは多いか

亜季は審査官面接に加えて、カメレオンティーのポスターに使われた写真の利用許諾を権利者から得るために交渉を行います。

これは、当然のことながら無断で第三者の写真を利用すると、著作権の侵害になるからです。月夜野ドリンクのような製造業の知財部において著作権法を業務で主に扱うことは多くないと思いますが、コンプライアンス遵守のため、増田社長のように勝手に他人の著作物を利用しないように社員に注意喚起することがたまにありますね。

月夜野ドリンク知的財産部でメインに扱う知財の法律は、発明を保護するための特許法で、それに次ぐのが商品ブランドを保護する商標法になるはずです。これらに比べると著作権を扱う場面はずっと少なくなります。

その一方でゲーム会社のようにコンテンツを創出する企業の知財部では、業務で著作権法を扱う場面も多いと聞きます。もし知財部で働くことに興味があるならば、自分が扱いたい法域によって就職する企業の業種を選ぶのも面白いかもしれません。

調整は企業知財部における大きな仕事

そして第5話全体で見ると「調整」が大きなテーマとして取り上げられました。

実際に企業知財部においては、関係者各位との調整が業務に占める割合が非常に大きいです。わたしの体感では一日の半分以上は関係者と打ち合わせをしたり、相談や報告のための資料を作成したりしています。これらはいずれも調整に関わる仕事ですよね。

熊井部長が調整の達人としてドラマで取り上げられていましたが、彼のように人当たりが良ければ周囲から自然と知財に関する相談が持ちかけられることも増えるので、関係者の利害を調整するのも容易になるでしょう。彼はまさに理想的な知財部員といえます。

この調整業務は組織を動かす為に欠かせない奥深い仕事だと思うのですが、関係者のメンツを守るために本来不要な根回しを行うとか、必要性のよくわからない会議に出席せざるを得ないとか、しんどいことがあるのも確かです。

このようなことが嫌いで企業知財部を辞めて特許事務所に移っていく人も少なからずいるので、好き好きは結構分かれますね。

第6話のみどころは

第6話では特許の新規性が話題になるそうです。特許制度において新規性は最も基本的な考えで、これをおろそかにすると企業の知財部では働けません。これがドラマ内でどのように扱われるか楽しみにしながら来週を待ちたいと思います。

番組概要・原作情報

番組概要

番組名:それってパクリじゃないですか?

放送日時:毎週水曜夜10時 (TVerHuluにて配信あり)

出演:芳根京子、重岡大毅(ジャニーズ WEST)ほか

脚本:丑尾健太郎(「半沢直樹」「ノーサイド・ゲーム」「下町ロケット」など)

製作:日本テレビ

公式サイト:https://www.ntv.co.jp/sorepaku/

原作情報

「それってパクリじゃないですか? ~新米知的財産部員のお仕事~」奥乃 桜子 /集英社オレンジ文庫

「それってパクリじゃないですか?2 ~新米知的財産部員のお仕事~」奥乃 桜子 /集英社オレンジ文庫

「それってパクリじゃないですか? ~新米知的財産部員のお仕事~」奥乃 桜子 /集英社オレンジ文庫
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