【2020年4月1日施行】意匠法改正で、意匠権制度はどうなった?
2020年4月1日に施行となった意匠法の改正ですが、130年ぶりの改正ということもあり、デザイン業界を中心に意匠権の話題が多く取り上げられています。
今回は意匠法の改正された内容について解説していきます。
意匠権とは?
意匠権とは物のデザインを守る権利のことです。商品として大量生産を行う物のデザイン(工業デザイン)にのみ適応されます。
意匠権の詳細や、その他知的財産権についてはこちらの記事で解説をしています。
→意外と知らない?特許とその他知的財産権の違い
意匠登録の費用に関わる費用についてはこちらで解説をしています。
→意匠登録の費用を徹底解説!
意匠法の改正内容
130年ぶりに改正された意匠法ですが、10項目の改正がされると2019年に公布がありました。
10項目のうち以下の7項目が2020年の4月に施行となりました。
- 保護対象の拡大
- 保護期間の延長
- 関連意匠制度の拡充
- 創作非容易性の水準の明確化
- 組物の部分意匠の導入
- 間接侵害規定の拡充
- 損害賠償額算定方法の見直し
残りの3項目に関しては2021年の4月に施行されます。
- 複数意匠一括出願の導入
- 物品区分の扱いの見直し
- 手続救済規定の拡充
これらの改正内容のうち、いくつかピックアップして解説します。
保護対象の拡大
意匠権として保護される対象に、「画像」「建築物」「内装」が追加されました。
「画像」はスマホ・PCの操作画像やプロジェクターに投影される表示画像など
幅広い「画像」で意匠登録が可能です。
「建築物」などの不動産は今まで意匠権の保護対象ではありませんでしたが、今回の改正で「建築物」も意匠権として登録することができるようになりました。
「内装」に関しては複数の物品、壁、床、天井等から構成されるインテリアデザインも意匠として登録できるようになりました。
今まで物品のみ意匠として登録できる仕組みでしたので、インテリアデザインに関しては、家具など一つ一つの物品で意匠登録するしかありませんでした。
今回の改正によって、内装全体の空間を意匠として登録できるようになりました。
(参照:特許庁HP)
改正前の意匠法では、対象は「物品」に限られていましたが、今回の改正により、幅広いデザインが保護の対象となりました。
保護期間の延長
これまでの意匠権は「登録日から20年経過した日まで」という決まりでしたが、今回の改正により「出願日から25年経過した日まで」となりました。
改正前は登録日が基準となっていましたが、改正後は出願日が基準となっているので注意が必要です。
間接侵害規定の拡充
今回の間接侵害規定の拡充の目的は、意匠権を侵害する模倣品を分解して製造・輸入することを禁止することです。
今までは意匠権を侵害する商品だとしても、分解して製造・輸入することを取り締まる法律がありませんでした。
今回の改正により、仮に分解した部品であっても、意匠権を侵害する物品であれば製造・輸入を取り締まることができるようになりました。
創作非容易性の水準の明確化
意匠登録を行うためにはデザインの創作非容易性を証明しなくてはなりません。
改正前はこのデザインを作り出すことは容易ではないことを証明する際に、公然知られたものを資料として提出する必要がありました。
しかし今回の改正により、公然知られたか否かに関わらず、刊行物やウェブサイト等に掲載された物も根拠資料として提出できるようになりました。
今回の改正により最新の事例も根拠資料として用いやすくなっています。
2021年4月から施行される改正点
複数意匠の一括出願の導入、物品区分の見直し、手続救済規定の拡充により、意匠登録へのハードルは大きく下がることが予想されます。
一括出願は今まで、一つの意匠ごとに願書を作成していましたが、複数の衣装をまとめて出願できる制度です。
物品区分の見直しについては、願書に記載すべき物品の区分の粒度を「物品区分表」により定めていましたが、この制度が撤廃され願書の記載方法が簡素化されることとなるでしょう。
また、手続救済規定の拡充によって、指定期間が経過した後や優先期間が経過した後の出願等の救済も認められることになります。
2020年の改正内容と同様に、より意匠登録を考える人にとっては非常に嬉しい改正内容となるでしょう。
改正のポイント
改正内容は総じて、創作者にとって嬉しい内容となっています。
権利の保護対象が拡大されたことで、権利化できるものが増え登録数が増えることが予想されます。
また権利保持期間の延長や、侵害となる対象行為の拡大も権利者に有利な改正内容となっているので、今まで以上に意匠権をとる価値が高まると考えられます。
全ての改正内容は特許庁HPに記載されていますが、簡単に以下のポイントを押さえておきましょう。
- 意匠登録できる物が増えた!(画像、建築物、内装)
- 権利期間が延びた!(20年→25年)
- 守られる範囲が増えた!(解体して輸出・製造しても権利侵害)
- 登録の手続きが楽になった!(創作非容易性の水準の明確化など)
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