知的財産権とは?種類&それぞれの違いを分かりやすく解説!
「知的財産権」と聞いて、具体的にどのような内容なのかと聞かれたら答えられる人は少ないかもしれません。
実はこの知的財産権は1つの権利ではなく、様々な種類の権利が含まれているのです。
今回は知的財産権の概要と種類についてご紹介したいと思います。
そもそも知的財産権(知的所有権)とは?
人間の知的活動の中で生まれた技術的なアイデアや著作物など、形の無い財産を「知的財産」といいます。そして知的財産は「知的財産権」という権利によって守られています。
この点、知的財産基本法2条1項、2項によると「知的財産」と「知的財産権」は以下のように定義されています。
(定義)
第二条 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
車を例にして知的財産権を考えてみると、車両盗難防止装置が特許権、防眩ライトは実用新案権、車体のデザインは意匠権、車のネーミングやエンブレムは商標権で保護されるイメージです。
この知的財産権は「産業財産権(工業所有権)」、「著作権」、「その他の権利」の3つに大別できます。
産業財産権(工業所有権)
前述の特許権、実用新案権、意匠権、商標権という4つの権利の総称を「産業財産権」、別名「工業所有権」と言います。
特許権
特許権は簡単にいえば、発明を保護する権利です。
例えば摩擦で文字を消せるボールペン(フリクションボール)のインクは、特許権で保護されています。
特許権は特許庁への特許出願の後、審査官の審査をクリアしてお墨付き(特許査定)をもらい、登録するための料金を納付することで発生します。
特許権により保護される発明は、以下3つのカテゴリーです。
- 物の発明(装置、プログラムなど)
- 単純方法の発明(測定方法、分析方法など)
- 物を生産する方法の発明(薬品の製造方法、食品の製造方法など)
また権利の存続期間は、原則として特許出願をした日から20年で終了します。
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実用新案権
実用新案権は物品の形状、構造、組み合わせについての考案を保護する権利です。
例えばシヤチハタ社の判子は実用新案権として保護されていました。
実用新案権は特許庁への実用新案登録出願後、一定の要件をクリアすれば、審査官の細かい審査をうけることなく早期に権利が付与されます。
実用新案権の保護対象は、物品の形状、構造、組み合わせについての考案です。
また実用新案権は実用新案登録出願をした日から10年で権利の存続期間が終了します。
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特許と実用新案の違い
特許権と実用新案権は似ている部分もありますが、主に3つの点が違います。
1つ目は保護対象の違いです。
具体的には特許が「物・単純方法・製造方法の発明」を保護対象とするのに対し、実用新案は「物品の形状、構造、組み合わせに関する考案」を保護対象とする点が異なります。
2つ目の違いは審査の方法です。
特許は出願書類の形式審査と、特許すべきか判断する実体審査を行う「審査主義」を採用しています。
一方、実用新案は実体審査を行わず、一定の要件を満たせば権利が付与される「無審査主義」を採用している点に違いがあります。
最後に3つ目の違いが存続期間です。
特許権は特許出願をした日から20年で終了するのに対し、実用新案権は実用新案登録出願をした日から10年で終了する点が異なります。
意匠権
意匠権は、いわゆる工業デザインを保護する権利です。
例えば顔にフィットする立体マスク(ユニ・チャーム超立体マスク)などが意匠権で保護されています。
意匠権は特許権と同様、特許庁への出願後、審査官の審査をクリアして登録査定をもらい、料金納付をすることで発生します。
意匠権により保護される意匠は、大きく3つに分けられます。
- 物品の形状、模様、色彩またはこれらの結合
- 建築物の形状、模様、色彩またはこれらの結合
- 画像デザイン
そして意匠権の存続期間は、意匠登録出願をした日から25年となっています。
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商標権
商標権は、ネーミングやロゴマークなどの商標を保護する権利です。具体的には商標と、その商標を使用する商品・サービスとの組合せが1つの商標権として保護されます。
身近な例でいえば、トヨタ自動車株式会社を示す「TOYOTA」や同社のエンブレム、商品名「プリウス」などが商標権として保護されています。
商標権も、特許庁への出願後、審査官の審査をクリアして登録査定をもらい、料金納付をすることで発生します。
商標権により保護される商標は、以下10個のタイプに分かれます。
- 文字商標(文字のみからなる商標)
- 図形商標(写実的なものや幾何学的模様等の図形のみからなる商標)
- 記号商標(のれん記号、文字を図案化し組み合わせた記号などからなる商標)
- 立体商標(立体的形状からなる商標)
- 結合商標(文字、図形、記号、立体的形状の組み合わせからなる商標)
- 動き商標(文字や図形などが時間の経過とともに変化する商標)
- ホログラム商標(文字や図形等がホログラフィーなどにより変化する商標)
- 色彩のみからなる商標(単色や複数の色彩の組合せのみからなる商標)
- 音商標(音楽、音声などからなる商標)
- 位置商標(商品などに付す位置が特定される商標)
商標権の権利期間は独特です。基本的に登録日から10年で終了しますが、他にはない更新制度が設けられているため、10年ごとに存続期間を更新することができます。
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著作権
著作権は簡単にいえば、創作者の著作物を保護する権利です。
この著作権は産業財産権と異なり、創作された瞬間に権利が発生するという「無方式主義」を採用しています。
著作権で保護される著作物としては、以下のものが挙げられます。
- 言語の著作物(小説、論文、脚本、講演など)
- 音楽の著作物(楽曲、歌詞など)
- 舞踊または無言劇の著作物(バレエ、パントマイムなど)
- 美術の著作物(絵画、漫画、彫刻など)
- 建築の著作物(宮殿、教会、住宅など)
- 地図または図形の著作物(地図、学術的な図面、模型など)
- 映画の著作物(劇場映画、テレビドラマ、ゲームソフトなど)
- 写真の著作物(報道写真、グラビアなど)
- プログラムの著作物(アプリケーションソフトなど)
著作権による保護期間は、基本的に著作物の創作時から著作者の死後70年で終了します。
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その他の権利
不正競争防止法
不正競争防止法とは、事業者間の自由な競争を確保するための法律です。
この法律は産業財産権や著作権とは異なり、権利を取得するという形ではなく、特定の行為を「不正競争」として規制しています。
この不正競争に当たる行為は、以下10個に分けられます。
- 周知な商品等表示の混同惹起行為
- 著名な商品等表示の冒用行為
- 商品形態を模倣した商品の提供行為
- 営業秘密に関する不正行為
- 限定提供データに関する不正行為
- 技術的制限手段に対する不正行為
- ドメイン名の不正取得等の行為
- 原産地等の誤認惹起行為
- 信用毀損行為
育成者権
育成者権は、種苗法に基づいて植物の新品種を保護する権利です。
身近な例では、シャインマスカットやあまおうの品種が育成者権で保護されています。
育成者権は、農林水産省への品種登録出願後、農林水産大臣の審査をクリアして品種登録されることで発生します。
育成者権で保護される植物は、大きく以下の5つに分けられます。
- 農産物、林産物及び水産物の生産のために栽培される種子植物
- しだ類
- せんたい類
- 多細胞の藻類
- 政令で指定された32種類のきのこ
育成者権の存続期間は、基本的には品種登録の日から25年で終了します。
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地理的表示保護制度
地理的表示保護制度は、品質、社会的評価などの特性を有する産品の名称を保護する制度です。
この制度で保護される地理的表示の例としては、「夕張メロン」や「飛騨牛」など132産品があります(令和5年7月20日現在)。
地理的表示は農林水産省への申請後、審査官の審査をクリアすることで保護されます。
地理的表示として保護の対象となる産品は、以下の4つです。
- 食用の農林水産物(精米、きのこ、野菜など)
- 飲食料品(パン、豆腐、菓子など)
- 非食用の農林水産物(観賞用植物、真珠など)
- 飲食料品以外の加工品(木炭、精油、生糸など)
他の産業財産権などとは異なり、取り消されない限り登録が存続します。
回路配置利用権
回路配置利用権は、半導体集積回路の回路配置を保護する権利です。
この権利は経済産業省への申請後、経済産業大臣に登録されることで発生します。
回路配置利用権の保護対象は、上述のとおり半導体集積回路の回路配置です。
回路配置利用権の存続期間は、登録日から10年で終了します。
商号
商号とは、個人事業主や法人が営業を行うにあたって用いる名称のことをいいます。
不正競争防止法や地理的表示保護制度の場合と同様、権利を取得するという形での保護ではないものの、商法・会社法により保護されています。
その他にも不正競争防止法では「周知な商品等表示の混同惹起行為」と「著名な商品等表示の冒用行為」にて保護され、名称を商標権でも保護できるため、多面的な保護が可能といえます。
知的財産権の相談はどこにすればいいの?
知的財産権に関する相談先としては、主に特許事務所が挙げられます。
特に特許や実用新案、意匠、商標に関しては、特許事務所の弁理士による代理出願が可能です。
しかし事務所によっては「意匠・商標が専門」、「化学よりもソフトウェアの特許が得意」といった得意領域の違いがあるので、特許事務所を探すときには対応業務を確認しましょう。
また実務として問題が起こりやすい不正競争防止法や著作権法に関しては、もちろん弁理士に相談することもできます。ですが警告や訴訟を行う前提の場合は、知財訴訟を専門とする弁護士に依頼すると良いでしょう。
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