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教えて柴田先生!キャラクターの権利はどうやって保護する?

はじめに

最近はSNSの発達により、自分で作ったキャラクターをネット上で公開したり、さらにはハンドメイド作品にして販売したりなどされている方もいるように思います。

今回は、どのようにすれば自分で作ったキャラクターを知的財産として保護できるかについて解説してみたいと思います。

キャラクターとは?

キャラクターとは、一般的には漫画や小説、演劇、映画などの登場人物をいうことが多いですが、たとえばゆるキャラなど、漫画などの背景作品なく動物などの対象物をアニメーション化したり図形を組み合わせたりして作成することも多く見られます(欧米ではFanciful Characterといいます)。

いずれにせよ、この解説の対象としては、「画」として元々誕生したキャラクターとさせていただくこととし、小説などに登場する具体的な「画」がなく、概念的に小説で記されるものについては対象外とします。

著作権による保護

上述のように「画」として誕生したキャラクターについては、まず著作権による保護が考えられます。

1.「著作権」とは

著作権とは、自分の著作物を無断でコピー、ネット掲載等されない権利を意味し、具体的には、著作権法第21条~第28条までに規定される権利があります。

2.「著作物」とは

著作物とは、著作権法上は、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(第2条1項1号)とされますが、ざっくりと、作者の個性工夫を凝らして表現したものとご理解いただいてよいかと思います。

3.著作権の発生

著作権は、特許庁などの官庁に出願や登録などすることなく、著作物を創作したその時点から自然に発生します。
よって、日本国においては、著作権の保護を受けたい場合、特に事前に何かアクションを行う必要はありません
なお、アメリカでも、著作権は創作したその時点から自然に発生する点は日本と同じですが、著作権に基づき侵害主張をしたり訴訟をする場合には、米国著作権局に対して登録を要するところが異なります。

4.キャラクターと著作権

上述にように、キャラクターとは「画」であることを前提としていますので、「美術の範囲」に属するものとして、著作物のその他の要件(個性の要件、創作性の要件、表現の要件)が満たされれば、無断でのコピー行為等についてアクションを取ることが可能といえるでしょう。

ここで、著作物のその他の要件について、要件が認められにくいものとしては、例えば、以下のものがあります。

・他人が書いた漫画の画をそのまま書き写したに過ぎないもの
 → 個性の要件・創作性の要件が満たされないです。他人の漫画のコピー行為に該当し、逆に他人の著作権を侵害することになります。

・楕円形に三角形の耳を2つ付け足し、ひげを書いて猫の画とするなど、猫を書こうとすれば誰でもそのようなものになってしまうもの
 → ありふれたデザインとなるので、個性の要件・創作性の要件を満たしにくいです。目の表現が特徴的だとか何か他に個性・創作性の発揮といえる要素がなければ、著作権の保護の対象とならない可能性大です。
 漫画や映画に登場するキャラクターとして誕生したキャラクターであれば、個性・創作性が多少低くても著作物性が認められる傾向(漫画・映画の著作物の延長と考えてくれる傾向)にありますが、商品化のために作ったキャラクターの場合、実用品の著作物として、著作物性の認定のハードルが上がる傾向にあります。
 このあたりの違いにも留意しておく必要があるでしょう。

・自分が書いたカエルの画の模倣だと主張するのではなく、カエルをモチーフにキャラクター化することは自分の独自のアイデアだ!と主張すること
 → カエルをモチーフにキャラクター化することは、表現ではなくアイデアで、表現の要件を満たしません

・自分が作ったネズミのキャラクターに「ネズタロウ」という名前をつけ、他人が全く異なるネズミのキャラクターを「ネズタロウ」と命名しているのに対して、「ネズタロウ」の文字列に対する著作権を主張すること
 → 「ネズタロウ」は、短すぎる文字列であるため、個性や創作性を発揮するには不十分であると認定される可能性が大です。文字列について著作権を主張するには、ある程度の長さが必要です(例:俳句の17音程度は少なくとも必要でしょう。)。

著作物の概念は専門的なものになるので、なかなか掴みにくいところですので、著作権による保護をご検討される際には、弁護士や弁理士に相談することをお勧めします。

商標権による保護

次に「画」として誕生したキャラクターについては、商標権による保護が考えられます。

1.「商標権」とは

商標権とは、自分の商標を特定の商品・サービスに「自分の商品・サービス」を示す表示として使用することを独占することのできる権利をいい、他人が同一・類似の商標を当該商品・サービスについて当該他人の商品・サービスを示す表示として使用することを禁止することができます。

2.「商標」とは

商標とは、「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」で商品・サービスについて使用するもの(商標法第2条1項)とされますが、ざっくりと、自分の商品・サービスであることを示すブランドの表示とご理解いただければと思います。

3.商標権の発生

著作権とは異なり、商標権を得るには、特許庁に対して出願して登録を受けることが必要です。

特許庁に対して出願する場合に、対象となるマーク(文字でも図形でも可能です。)、使用を予定する商品・サービスを指定して(これを指定商品・役務といいます。)、出願します。
出願に際しては、特許庁の定める商品・役務の区分である「類」にしたがって(第1類から第45類まであります。)、指定商品・役務を類ごとに分けて記載し、類単位で特許庁に手数料を支払います。
この類というのは、特許庁に対する手数料を支払う単位に過ぎず、指定商品・役務が似ているか似ていないかを定めるものではありません。

出願後、特許庁において、ありふれた商標でないか否か、先行する同一又は類似の商標の登録又は出願がないかや公序良俗に違反しないかなどの所定の審査を経て、問題ない場合には登録を受けることができます。

一度登録を受けると、10年単位で更新することができ、更新さえすれば、半永久的に商標権を獲得することができます。なお、更新する場合も、類単位で手数料を支払います。

4.キャラクターと商標権

上述にように、キャラクターとは「画」であることを前提としていますので、「図形」としても商標登録を受けることもできますし、もし立体なのであれば「立体形状」として商標登録を受けることもできます。

ただし、商標権の権利の及ぶところとして、以下の点にご留意ください。

(1)商標的使用

商標権は、自分の商品・サービスであることを示すブランドの表示として、キャラクターを使用することを保護するに過ぎませんので(専門用語で「商標的使用」といいます。)、逆にいうとブランドの表示といえないような使用形態については、その保護が及びません。
商標的使用が認められにくい例としては、以下が挙げられます。

・Tシャツの胸の部分に大きく画として描かれ、客観的に見てブランド表示というより、むしろTシャツの柄と認識される場合
 → Tシャツの柄と認識されるのであれば、「私がこのTシャツの製造・販売元である」という表示として画が機能しているとはいいにくいです。

(2)指定商品・役務

他にも、商標権は、指定商品・役務と同一又は類似の商品・サービスについて、自分の商標と同一又は類似の表示を使用することを禁ずることができる権利なので、指定商品・役務とは似ていないものに使用しても、その保護が及びません。例えば、以下の場合です。

・指定商品・役務を「食品」とするネズミのキャラクターの商標について、他人が似たネズミのキャラクターの商標を、「コンピューター」に使用する場合
 → 両者とも似たようなネズミのキャラクターを表示しているものの、「食品」と「コンピューター」は、通常全く別の事業者が製造・販売するものですし、一般にこれらの商品が紛らわしいことは考えにくいので(商品が類似しない)、商標権が及ぶとはいいにくいです。

5.立体商標による保護

例えば、ご自身のキャラクターをぬいぐるみのように商品化して販売する場合、ぬいぐるみの立体形状自体を商標として登録することが可能です。

ただし、この場合でも、商標法が保護するのは、あくまで「立体形状」と結びついた、あなたの商品・サービスに対するブランドです。
よって、同じ立体形状を模しているとしても、例えば以下のような場合には、商標権の保護が及びにくいと言わざるを得ないです。

・あなたが商品「ぬいぐるみ」についてキャラクターの立体形状の商標登録を受けている場合において、他人がレンタカーサービスのおまけとして、似た立体形状のぬいぐるみを配っている場合
 → 商標権の効力が及ぶのは、商品の販売などの商行為とざっくりご理解ください。「おまけ」(販促品)は商品「ぬいぐるみ」を販売しているわけではなく、レンタカーサービスの販売促進であると捉えられるため、商標権の保護が及びにくいです。

・あなたが商品「ぬいぐるみ」についてキャラクターの立体形状の商標登録を受けている場合において、他人がSNS上でよく似たぬいぐるみをハンドメイドとして「作ってみた」と掲載している場合
 → 「作ってみた」と言っているだけであれば、私的に作っているだけともいえ、商行為とはいいにくいです。もちろん販売しているなどの事情があれば別です。

いずれにせよ、商標権の権利行使は専門的なものになるので、なかなか掴みにくいところですので、商標権による保護をご検討される際には、弁護士や弁理士に相談することをお勧めします。

著作権・商標権はどう使い分ける?

このように、キャラクターの保護の代表としては、著作権、商標権による保護となりますが、それぞれ保護しようとしている目的(客体)が異なる点に注意が必要です。

著作権による保護は、「個性の創作的表現」が対象です。よって、同一又は類似の表現がコピーされているのであれば、私的利用などの例外を除き、保護が及ぶといえます。
例えば、上記商標の説明において、ブランド表示ではなく柄である事例や、商品違いでのキャラクター使用の事例、「おまけ」の事例、「作ってみた」の事例では、いずれも商標権は及びにくい結論となりました。
しかしながら、著作権であれば、私的利用などでなければ、これらについても理論上は権利が及びます。著作権が保護するのは、「表現」だからです。

商標権による保護は、指定商品・役務と同一又は類似の商品・サービスについて使用されるブランドとしての表示が対象です。
よって、上記例のとおり、ブランドとして使用してない事例、商品違いの事例などには、商標権は及びにくいということになります。
一方、商標権は図形のみならず、短い文字列についても保護を受けることができます。
よって、著作権では保護が及びにくいとされた「短い文字列」の事例では反対に、この短い文字列について商標登録を受ければ、指定商品・役務と同一又は類似の商品・サービスに対して当該短い文字列を他人が使用することについて、商標権を及ぼすことも可能といえます。

著作権・商標権の使い分けとしては、「画」が勝手に模倣されたことを問題とする場合は著作権、自分の「ブランド」が害されたことを問題とする場合は商標権、と整理いただければと思います。

その他制度による保護

著作権・商標権以外にも、例えば立体形状であれば、意匠権による保護を受けることも可能(特許庁への出願・登録が必要です。)ですし、また不正競争防止法による保護を受けることも可能です(特許庁への出願・登録は不要です。)。

意匠権による保護は、著作権による保護と近似する一方、不正競争防止法による保護は、商標権による保護と近似します。その詳細なる解説については、次回以降に譲ります。

侵害からの救済

著作権・商標権のいずれの場合でも、権利侵害に対しては、差止(今後の販売等をやめさせること)、損害賠償を請求することができます。
いずれの場合も、損害賠償の金額を算出しやすいよう、販売数量×利益を損害とみなしたり、ライセンス料相当額を損害とみなしたりと、法律上は便宜が図られています。

また、いずれも刑事罰の対象となりえます。
著作権侵害の場合には、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(併科あり)、商標権侵害の場合も同様です。
ただし、著作権侵害の場合は、権利者からの告訴がなければ、刑事罰の訴追は始まりません(親告罪)。

いずれにせよ、侵害については厳格な対処がなされることが法定されていますので注意が必要です。

おわりに

著作権や商標権による保護は専門的知識を要します。これらによる保護をご検討される際には、弁護士や弁理士に相談することをお勧めします。

なお、弁理士にご相談いただければ、商標登録を受けた方がよいかなども提案させていただけるので、何かキャラクターを創作された際には、その保護全般について弁理士にご相談されてはいかがでしょうか。

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