教えて柴田先生!Twitterで気を付けることって?
はじめに
SNSはすっかり身近なツールで、友人知人と近況のやり取りをしたり、ちょっとした日常を共有するのに有益なツールです。SNSは、従来マスコミなど特定の事業者が専ら行ってきた「発信」の間口を、一般に開放しました。
しかしながら、「発信」が一般化するということは、旧来特定の事業者(プロ)のみが理解しておけばよかったコンテンツのルールを、SNSで発信する一般の人もきちんと理解しておかないといけないことも同時に意味します。今回は、Twitter利用について、著作権や関連する権利の観点を中心に解説したいと思います。
Twitter投稿ってどういう仕組み?
「著作権って何?」や「SNSと音楽利用」でも説明したとおり、Twitterを含むSNSに投稿するという行為は、(1)対象となるコンテンツ(文章や画像、写真、映像)を用意して、(2)そのデータをSNSのサーバーに「コピー」することで、(3)そのサーバーに他人からのアクセスがあれば、いつでも「配信」できるようにすることを意味します。
Twitterのサーバーにアップロードすると、瞬時にあなたのフォロワーにあなたのコンテンツが表示される(「配信」される)ようになります。
あなたのフォロワーは、あなたのコンテンツに対してコメントしたり、いいねをつけたりなどの反応をしたり、リツイートや引用ツイートをしたりすることにより、フォロワーのフォロワーにあなたのコンテンツを表示(「配信」)させることができるようになります。
これがTwitterでコンテンツが拡散していく基本的な仕組みとなっています。
このように、Twitterは、簡便に自分のつぶやき(Tweet)というコンテンツを拡散させることができるところが人気で、多くのユーザーに利用されています。
Twitterへの投稿ルールは?
誰しもがアカウントを作ることで気軽に利用することのできるTwitterですが、投稿に際してはTwitterサービス利用規約のルールにしたがって投稿しなければなりません。
投稿について、主要なTwitterのルールとしては、以下のとおりとなります。
- (1)自分が権利を持っているコンテンツのみを投稿すること
- (2)コンテンツを投稿することによって、Twitterや他のユーザーにあなたのコンテンツを所定の範囲で使用できる権利を許諾すること
上記(1)について、該当するルールを引用すると、以下のものとなります。
「ユーザーは、ご自身が本サービス上でまたは本サービスを通じて送信、投稿または表示するコンテンツに関して、本規約で付与される権利を許諾するために必要な、すべての権利、ライセンス、同意、許可、権能および/または権限を有していることまたは得ていることを表明し保証するものとします。ユーザーは、ご自身が必要な許可を得ているまたはその他の理由により素材を投稿しTwitterに上記のライセンスを許諾することができる法的権限を有している場合を除き、当該コンテンツが著作権その他の財産権の対象となる素材を含むものではないことに同意するものとします。」 |
つまり、あなたが権利を持っていないものや、権利者から許可を得ていないものを投稿してはいけないことを意味しています。
上記(2)について、該当するルールを引用すると、以下のものとなります。
「ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社が、既知のものか今後開発されるものかを問わず、あらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配信するための、世界的かつ非独占的ライセンス(サブライセンスを許諾する権利と共に)を当社に対し無償で許諾することになります(明確化のために、これらの権利は、たとえば、キュレーション、変形、翻訳を含むものとします)。このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧可能とすることを承認することになります。ユーザーは、このライセンスには、Twitterが、コンテンツ利用に関する当社の条件に従うことを前提に、本サービスを提供、宣伝および向上させるための権利ならびに本サービスに対しまたは本サービスを介して送信されたコンテンツを他の媒体やサービスで配給、放送、配信、リツイート、プロモーションまたは公表することを目的として、その他の企業、組織または個人に提供する権利が含まれていることに同意するものとします。・・・」 |
つまり、投稿をすることによって、あなたが好む好まざるを問わず、あなたのコンテンツが他のユーザーに表示されること、そしてTwitterや他のユーザーは、かなり広範にあなたのコンテンツを利用できることを意味しています。
Twitterは、フォロワーの仕組みを通じて、様々なユーザーに対して1つのコンテンツを拡散させていくことに特徴があり、拡散できる特徴が売りのサービスなので、このようにコンテンツが広く利用されうることが規定されているのだろうと思われます。
これらのルールを守ることが出来ない場合、Twitterを利用することはできませんし、違反した状態で使用してしまえば、アカウント停止などの措置を受けることにもなりかねません。
著作権がどう関係するの?
「著作権って何?」でも解説しましたが、「作者の個性を工夫を凝らして表現したもの」であれば、著作物として著作権が発生し、著作権法による保護の対象となりえることとなります。
投稿しようとするものは、文章や画像、写真、映像などなわけですから、いずれも「作者の個性を工夫を凝らして表現したもの」になりえるものですから、Twitterへの投稿(及びそれに伴う配信)に際しては、著作権法に定める「コピーする権利」(複製権)や「配信する権利」(自動公衆送信権)に注意しなければなりませんし、もし他人を写している投稿であれば、肖像権・プライバシー権・パブリシティ権にも配慮しなければなりません(「著作権って何?」を参照)。
どう注意したらいいの?
投稿するコンテンツの種類から、何に気を付けるべきなのかを解説します。
1.完全自作のコンテンツ
0から自分で考えたり創作したコンテンツで、他人の権利が何も関係しないコンテンツの場合、あなた自身に全ての権利があるということになります。
あなた自身に全ての権利があるのであれば、何も注意する必要がないように思いますが、投稿前に、コンテンツ投稿ルール(2)を今一度ご確認ください。
一度投稿されると、その投稿コンテンツは、フォロワーの仕組みを使って、延々とTwitter上で拡散されていくことになります。
また、コンテンツ投稿ルール(2)をよく読んでいただくと、Twitter社は、Twitter外のメディアにあなたのコンテンツを貸し出すことができることとなっています(「あらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用」)。
つまり、Twitter内だけと思って投稿したものが、ある日突然放送局による放送や別の配信メディアで紹介されている、ということも想定しておく必要があるといえます。
要は、一度投稿してしまうと、コンテンツの拡散に歯止めが効きませんので、あなたのプライバシーを含むコンテンツですと、あなたのプライバシーが広範囲に暴露される、ということを意味し、これを止めることはできません。
たとえ投稿を削除したとしても、Twitter外に一度転載されてしまえば、インターネット上で半永久的に残ってしまうこととなってしまいます。
2.他人の権利の対象となるものが含まれるコンテンツ
一般的にトラブルが生じやすいのがこのパターンです。詳しくは、「SNSと音楽利用」において「他人の権利の対象となるもの」の見つけ方を解説していますが、Twitterでよくありがちなのが以下のパターンです。
- (1)他人の書いた書籍や記事をコピペして投稿
- (2)他人が描いた絵画や美術作品を撮影して投稿
- (3)映画館やテレビ、動画配信サイトで流れている映像を録画して投稿
- (4)他人が写った写真や映像を投稿
- (5)他人が作詞作曲した音楽が含まれるコンテンツを投稿
- (6)他人が営業秘密・非公開情報としているものをツイート
上記のいずれのパターンも、投稿者本人が全ての権利を持っているものではなく、他人の権利の対象となっているものをお借りしているものとなります。
「著作権って何?」や「SNSと音楽利用」でも繰り返し強調していますが、いわゆる私的利用の制度は、私的目的のコピー行為のみを救済するもので、配信行為は救済の対象となりませんので、Twitterでの配信は、私的利用によって救済されません。
よって、原理原則に立ち返り、関係する全ての他人から投稿の許可を受けないと、権利の侵害になってしまうということになります。
このようなコンテンツを関係権利者に無断で投稿してしまうと、もちろんTwitterルール上もアウトとなるので、アカウント停止などの措置の対象にもなってしまうでしょうが、それ以上に権利侵害として、民事的措置(差止や損害賠償請求)を受けたり、場合によっては刑事的措置(犯罪として訴追)されることにもなりかねません。
お手軽なTwitterなので、ついつい日常生活の延長で気軽に考えてしまいますが、オフラインで家族や親しい友人のみと行っているコンテンツの共有行為(私的利用制度により救済)とは、まるで理屈が違うことをしっかりと意識することが必要です。
他に注意することは?
上記では、投稿する時の注意事項を解説しました。しかしながら、Twitterの機能は、投稿機能だけではないですね?リツイートや引用ツイートなどにより、他の人が投稿したものを拡散する時に気を付けるべきところを説明します。
1.侵害コンテンツの拡散
例えば、劇場でしか公開されていない映画やコンサートの一部を、これらの運営元ではないユーザーがTwitterで配信している場合、一目見て侵害コンテンツをアップロードしていることが分かると思います。
このようにぱっと見て侵害コンテンツだろうと分かるものを、Twitterの機能を使って拡散すると、あなたも侵害行為に加担したとしてお咎めを食らう危険性があります。もしそのような投稿を目にすることがあれば、拡散につながることは控えるべきといえます。
2.コメント機能
まずはコメント機能を利用する場合、コメント内容の投稿=「配信」行為でありますから、他人の書いた書籍や記事、文章をコピペして投稿する場合は、投稿の注意事項に留意する必要があります。
そして著作権法とは文脈が異なりますが、元々の投稿者を侮辱したりその名誉を傷つけるようなコメントを書いてしまうと、それがフォロワーの仕組みを通じて拡散することにより、侮辱罪・名誉棄損罪になってしまうおそれがあるところに注意です。
オフラインで、家族や親しい友人間でのみ批判的な感想を言い合うのと、まるで理屈が違うことをしっかりと意識することが必要です。
3.リツイート・引用ツイート機能
リツイートと引用ツイートの違いは、リツイートが元の投稿をそのままあなたのフォロワーに拡散する機能であるのに対して、引用ツイートは、元の投稿そのまま+あなたのコメントを沿えて、あなたのフォロワーに拡散する機能です。
リツイート・引用ツイートの原理は、乱暴に要約してしまうと、元の投稿へのURLをエンベッドして、見た目だけ元の投稿をそのままコピーしたような形で拡散するもので、原理的には、URLを貼っているだけに過ぎない(元のコンテンツの場所に誘導しているだけ)ので、著作権法上、リツイート・引用ツイートは、元の投稿コンテンツを新たにコピーしたり配信するものではないということになります。
よって、リツイート・引用ツイートによって、元の投稿の著作権等が侵害されることを心配する必要はないと基本的にはいえるでしょう。
ただし、上記1のように、侵害コンテンツを拡散させる目的のためにリツイート・引用ツイートしているとなってしまうと、話は別で、上記のとおり、侵害行為に加担したとしてお咎めを食らう危険性がありますので、注意が必要です。
また、引用ツイートにおけるコメントについては、上記のコメント機能の注意事項がそのままあてはまりますので割愛します。
4.他人の投稿をTwitter内外に転載
Twitterの機能を利用して・・という文脈からは外れますが、Twitterで見つけた投稿をリツイートなどの機能を使わずに再投稿したり、別のWebsiteに転載することは、やり方を間違えると著作権侵害等に問われるおそれがあります。
つまり、他人が投稿したコンテンツを一旦端末にダウンロードして、その端末にダウンロードしたものを再ツイートしたり、別のWebsiteにアップロードしてしまうと、元のコンテンツそのものを新たにコピーして配信していることになるので、投稿者の許可を得ない限り、著作権を侵害していることになってしまいます。
また、一旦端末にダウンロードして・・というプロセスを経る場合、元々のコンテンツを加工したいという動機がある場合がありますが、加工というのは、元のコンテンツを変形する行為であって、
- 二次創作する権利(翻案権)
- 著作者人格権の同一性保持権
を侵害する行為です(「著作権って何?」を参照)。
一方、リツイートや引用ツイートと同じ原理で、元々の投稿へのURLをエンベッドによって貼るのであれば、見た目は元々の投稿をそのままコピーしているように見えても、元のコンテンツの場所に誘導しているだけなので、著作権の侵害とはならないでしょう。
ただし、エンベッドによる場合でも、元々の投稿をネタにして何かしらの収益を稼いでしまうと、投稿者との間でトラブルになりがち(自分のコンテンツによって稼いでいるのだから、収益の一部又は全部をよこせというトラブル)なので、基本的には無断でやるのは避けた方がよいでしょうし、またエンベッドでも侵害コンテンツだけを集めたサイトのようなものをやってしまうと、侵害行為に加担したとしてお咎めを食らう危険性があることは上述のとおりです。
リツイート事件って?
少し前にはなりますが、報道等で「リツイートについて著作権侵害が認められた」というショッキングなニュースをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
事件のあらましは、こちらに紹介されていますので、ここでは詳細を割愛させていただきますが、ポイントだけをまとめますと、「リツイートしたら、元の投稿画像の一部がカットされた状態で、フォロワーに表示された」ことについて、「リツイートによって一部カットされた状態で表示されることが、元の画像を変形したことになるのか?」(=二次創作する権利(翻案権)や著作者人格権の同一性保持権の侵害?)が争われました。
事件は最高裁まで争われましたが、結論として最高裁は、「変形したことになる」と判断して、著作者人格権の侵害を認めました(著作者人格権のみが対象となり、翻案権が対象とならなかったことについては、かなり複雑な論点になるので、機会があれば別途解説します。)。
この判決は、Twitter社の提供する機能仕様の都合で、リツイートした人がなぜ著作権侵害のお咎めを食らわないといけないのか?という批判のある判決ではあり、Twitter社による仕様変更などが待たれるところではありますが、Twitterという文脈を離れて、侵害コンテンツを拡散させない、他人の投稿コンテンツを勝手に変形しない、ことの重要性が分かる判決といえるでしょう。
SNSや配信という場面では、個人であったとしても、事業者と同じ土俵で、権利の尊重や法律のコンプライアンスが求められることを注意喚起するものといえるでしょう。
おわりに
SNSによりコンテンツ発信のハードルが非常に低くなり、一般の方でも気が付かずに権利侵害してしまっている時代になりました。気軽に使えるSNSだからこそ、発信の前に、「他人の権利」にふと意識を向けて一度立ち返ってみることが重要です。
著作権関連問題は非常に複雑で込み入っています。特にコンテンツで事業をされようという方は、知的財産を専門とする弁護士や弁理士に相談されてはいかがかと思います。
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弁護士(米国カリフォルニア州)及び弁理士(日本)。国内事務所において約4年間外国特許、意匠、商標の実務に従事した後、米ハリウッド系企業における社内弁護士・弁理士として10年強エンターテインメント法務に従事。外国特許・商標の他、著作権などエンタメ法が専門。
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