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無効資料調査とは?元知財部がわかりやすく解説します!

事業をしていると、ある日突然

他社から特許侵害訴訟を提起された!
警告状が届いた!

というリスクは0ではありません。

他社の権利を侵害していたり、事業の障害になるような権利がある場合は、権利を無効化するために無効審判を請求することがありますが、このような場合に無効資料調査を行います!

それでは、具体的に無効資料調査とはどのようなものか解説していきます。

無効資料調査とは?

特許庁で審査を通過し特許となった権利でも、審査過程で文献や資料が見落とされていた場合、その後に新しい文献等が見つかって、新規性・進歩性が否定されることがあります。

この新しく見つかる文献等のことを一般的に無効資料と呼び、この無効資料を探すことを無効資料調査と言います。

どんな時に無効資料調査が必要?

では、一体どんな時に無効資料調査が必要なのでしょうか?

無効資料調査を行うのは以下のような場合です。

  • 他社から特許侵害で訴えられた場合 →無効審判を行う
  • 他社から警告状が来た場合
  • 特許調査を実施した際、自社事業の障害となる他社特許が発見された場合

また、以下のような場合は、自社権利について無効資料調査を行います。

  • 他社を特許侵害で訴える場合
  • 他社に警告状を送付する場合

無効審判とは?

無効審判とは、簡単にいうと

「あなたの特許は無効だ」

と主張し、該当の特許を無効化するために請求する審判のことです。

他社より特許侵害だ!と訴訟された場合や警告を受けた場合、その特許を無効化するために無効審判を請求します。

詳しく説明すると、出願された発明が新規性や進歩性がないにも関わらず、審査段階での文献等の見落とし等によって権利化されてしまった場合に、この特許を無効化する請求をするための制度です。

先ほど述べたように、他社から特許侵害で訴えられた場合、その特許が本当に特許されるべき案件だったのか、無効資料調査をおこないます。

そして、無効資料が見つかった場合は無効審判をすることになるでしょう。

無効審判を請求できる請求人や、請求期間は以下の通りです。

  • 請求人

利害関係人のみ請求することが可能です。

異議申立て制度とは異なり、誰でも請求することはできません。

 ※異議申立て制度とは・・・設定登録後の特許権について、特許掲載公報発行日から六月以内に特許権の取り消しを申し立てることのできる制度。申立は誰でもできます。

  • 請求期間

請求時期に制限はなく、特許期間満了後でも請求できます

無効審判では、利害関係人しか申請ができないため、無効審判を請求する請求人と特許権者とが対立することとなります。

特許紛争が起きた場合など、やむを得ない場合に行うことがほとんどです。

無効資料調査はどこに頼める?

簡易的な調査であれば自分ですることもできますが、無効資料調査のような高い精度が必要な調査をするのは、自分でするのは難しいかもしれません。

そのような場合は、専門の調査機関に調査を依頼することができます。

また、特許事務所でも調査を行なってくれるところもありますので、特許事務所に相談するのも良いでしょう。

調査を外部委託する場合の費用は?

無効資料調査を外部委託する場合、もちろん費用がかかります。

国内の調査であれば一般的に20万〜50万円程度だと思いますが、調査内容(調査範囲や請求項数)によって大幅に変わってきます。

調査を依頼する際は料金の確認をお忘れなく!

外部委託するメリットは?

調査を外部委託する場合には費用がかかりますが、費用を支払うだけのメリットは十分あります。

特許調査を行う専門の調査会社や特許事務所は、

  • 特許法や審査基準などの法律的知識
  • 技術的な基礎知識
  • 調査経験に基づく蓄積されたノウハウ

を備えています。

発明のポイントを的確にとらえ、適切な検索式を作り、効率的な調査をしてくれます。

また、出願前の先行技術とは異なり、訴訟が絡んでいることも多いので、無効資料調査はより精度の高い調査が必要です。

特許事務所へ調査依頼をし、弁理士の専門的な判断をもらうことで安心して訴訟対応もできるでしょう。

無効資料調査は自分でできる?

無効資料調査は、他の特許調査同様に、自分で調査を行うことが可能です。

IPCやFIなどの特許分類やキーワードを用いて検索を行います。

しかし、出願前の先行技術調査とは異なり、無効資料調査は侵害訴訟が提起されていたり、警告が来た場合などに行うことが多く、より慎重に、より正確に調査を行う必要があります。

抜けや漏れのないしっかりした調査を行うためには、長年の経験や知識、コツなども必要となり、調査の難易度は上がります。

無効資料調査でのポイント

無効資料調査は難しい調査ではありますが、行う場合は以下の点に気をつけましょう。

日付の指定

無効資料は、対象となる特許が

  • 出願日以前に公開されている・・・進歩性否定のため

もしくは

  • 出願日以前に公開されてはいないが出願されている・・・新規性否定のため

必要があります。

著者も経験がありますが、見つかった!と思った資料が、よく確認すると出願日以降に発行された雑誌だったと言うことがありました。

特許検索システムで検索する時には、出願日、公開日の日付に気をつけて検索を行いましょう!

論理立て

無効資料調査を行うと分かりますが、新規性を否定できるような資料を見つけることはあまりないと思います。

多くの場合は、進歩性を否定できる資料を見つけなければいけません。

そして、対象特許と資料と内容を比較し、見つけた資料から容易に発明できたという論理付けを考えます。

論理付けができれば、進歩性がなく、対象特許は無効理由が存在すると判断できます。

ただし、論理付けをするには法律や判例に則って判断する力が必要です。

最終的な判断は、特許事務所にお願いした方がより安心だと思います!

無効資料調査はどこでできる?

無効資料調査を行うためには、特許の検索システムを使って検索しなければいけません。

精度の高い調査が必要な無効資料調査は、長年の経験や知識、コツなども必要となり、難易度は高くなります。

しかし、知財部であれば検索システムや調査の仕方については知っておく必要がありますので、以下にご紹介いたします!

特許検索システム「J -PlatPat」

J -PlatPatは、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供している無料の検索サービスです。

特許・実用新案・商標・意匠・審判が検索対象となっており、検索式を作って検索する他、各種番号や日付での検索もできます。

複雑な検索式も立てることができますので、無効資料調査も十分行えると思います!

ただ、有料の検索システムと違って文献の表示がやや遅く、多くの文献を調べたい無効資料調査を行うのにはちょっと使いづらいかなという印象です。

J -PlatPat▶︎​​https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

(御社記事)検索方法についてはこちら▶︎https://tokkyo-lab.com/co/info-patentsearchog

有料の特許検索システム

有料の特許検索システムもあります。

企業の知財部では、無料のJ -PlatPatではできない高機能の検索や、様々なサービスを備えている有料の特許検索システムを契約すると、より良い特許調査ができますよ。

各サービスごとに1ライセンスの契約金額が異なりますので、サービス内容と料金との比較検討することをおすすめします。

有料の特許検索システムには以下のようなものがあります。

  • Patent SQUARE(パナソニック株式会社)
  • JP-NET(日本パテントデータサービス株式会社)
  • Questel Cyber Patent(サイバーパテント株式会社)
  • SRPARTNER(株式会社日立システムズ)

無料トライアルができるサービスもありますので、導入の検討時には是非お試しください!

国会図書館

国会図書館は誰でも無料で利用することができます!

無効資料としては、雑誌や書籍も使用することができます。

業界誌や古い雑誌など、なかなか手に入らないようなものも国会図書館で閲覧可能ですので、公報だけではなく幅広い調査で無効資料を探しましょう。

ただし、雑誌や書籍は1ページずつ手めくりで無効理由になる箇所を探します。

時間と労力がかかりますので、専門の調査会社等へ外注するのもおすすめです。

 

FTO調査との違い!

FTO調査は、自社で開発中の技術や製品や、すでに販売している製品が他社の権利を侵害していないかを調べる調査です。

無効資料調査とFTO調査とは調査をするタイミングが異なり、

  1. FTO調査を行い、侵害していたり障害になる特許を発見
  2. 無効調査を行い、無効審判を検討する

という順番になります。

特許侵害訴訟を提起されてから無効調査をした後に無効審判を行い、特許無効化を狙うよりも、事前にFTO調査を行なうことで、

  • リスクを把握する
  • 早い段階から対応の検討ができる

というメリットがあります。

FTO調査は、商品の開発や販売を行う際は、ぜひやっておきましょう!

FTO調査についての詳細はこちら
▶︎https://tokkyo-lab.com/co/info-clearance

まとめ

無効資料調査は、主に

  • 他社から特許侵害で訴えられた場合
  • 他社から警告状が来た場合
  • 特許調査を実施した際、自社事業の障害となる他社特許が発見された場合
  • 他社を特許侵害で訴える場合
  • 他社に警告状を送付する場合

に行うことをご説明しました。

つまり、無効資料調査を行う時は、特許侵害が絡んでいる場合です。

出願前の先行技術調査よりも慎重に、高い精度で調査を行う必要があるため、無効資料調査の難易度は高くなります。

無効資料調査が必要になった場合には、知財部だけで行うのではなく、特許事務所や専門の調査機関に調査を依頼し、専門家に判断してもらうのが安心だと思います。

また、特許侵害をしないために、日頃からFTO調査をすることをおすすめします!

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