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版権とは?語源や著作権との違いを紹介

しばしば耳にする「版権」という言葉。ですが版権が何についての権利か分かる人は少ないでしょう。

「版権」は現代の「著作権」とほぼ同義語のように使われていますが、実は内容は大きく異なります。

本記事では版権の歴史を振り返りつつ、現代の著作権との違いなども紹介していきます。

版権とは?

「版権」とは明治時代に使われていた著作権の旧称であり、現在は法律用語として用いられていません。

版権の語源と歴史

版権は1万円札でおなじみの福沢諭吉が、明治6年(1873年)に東京府へ提出した文書の中で「Copyright」を「出版の特権、或は略して版権」と訳したことが由来です。

ちなみに福沢諭吉は、日本に初めて著作権の概念をもたらした人物といわれています。

福沢氏が文書を提出したことにより、明治8年(1875年)に改正された「出版条例」では、「図書ヲ著作シ、又ハ外国ノ図書ヲ翻訳シテ出版スルトキハ三十年間専売ノ権ヲ与フヘシ 此ノ専売ノ権ヲ版権ト云フ」として、版権が法律用語として用いられるようになりました。

引用: 法令全書 明治8年 – 国立国会図書館デジタルコレクション

※旧字体は全て新字体に改めています

この出版条例は図書の取り締まりに関して定められた最初の法令であり、明治政府によって明治2年(1869年)に公布されました。当時は言論統制としての側面が強かったようです。

明治20年(1887年)には、出版条例から版権の保護に関する規定を切り離した「版権条例」が制定されました。これと同時に図書以外の権利保護を念頭に置いた、脚本楽譜条例や写真版権条例も制定されています。

版権条例は出版条例と異なり、法規の整理としての側面が強く、版権の譲渡や著作者人格権、親告罪などの規定が盛り込まれていました。

そして明治26年(1893年)に版権条例を改正した「版権法」が公布され、6年後の明治32年(1899年)には版権法、脚本楽譜条例、写真版権条例が統合される形で、著作権法(旧著作権法)が制定されました。

この旧著作権法で「版権」に代わる「著作権」の語が使われるようになり、「版権」は廃語となったのです。

ちなみに現行の著作権法は、昭和45年(1970年)に旧著作権法が全面的に改正される形で制定されました。

出版権とは?

前述のとおり版権は著作権の旧称ですが、現行の著作権法に規定されている「出版権」を意味するものとして使われているケースも多く見受けられます。

「出版権」とは簡単にいうと、著作物を紙や電子形式で出版できる権利をいいます。

具体的には著作者から出版権の設定を受けた者(例えば出版社)が、紙媒体による書籍の出版やインターネットによる電子出版をする権利を専有することです。

特許法の専用実施権に似た権利であり、出版権を設定した場合、著作者自身も出版行為ができなくなるという特徴があります。

版権と著作権の違い

明治時代に使われていた「版権」と現行の著作権法で使われている「著作権」は、2つの大きな違いがあります。

保護対象の違い

版権は主に書籍などの図書の権利を念頭に置いており、現行の著作権法でいうところの言語の著作物のみを保護対象とするものでした。

一方、現行法の「著作権」で保護対象となる著作物には、以下のものがあります。

  • 言語の著作物
  • 音楽の著作物
  • 舞踊または無言劇の著作物
  • 美術の著作物
  • 建築の著作物
  • 地図または図形の著作物
  • 映画の著作物
  • 写真の著作物
  • プログラムの著作物

このように版権と著作権とでは、保護対象の種類に大きな違いがあるのです。

権利の発生要件の違い

版権条例によれば、版権により保護を受けるためには内務省の版権登録を受けることが要件とされていました。

一方、現行法の著作権は、著作物を創作した時点で権利が発生する「無方式主義」が採用されており、権利の発生に法的な手続きは不要です。

ちなみに無方式主義は、明治32年(1899年)制定の旧著作権法にて採用されました。

現代でも使われる、版権イラスト、版権絵、版権キャラとは?

現在「版権」は法律用語としては用いられていませんが、クリエイターの間では「版権」を含む語が使われています。

例えば「版権イラスト」や「版権絵」、「版権キャラ」というワードを聞いたことはあるでしょうか。

これらのワードを言い換えるならば、個人や企業が著作権を持っているイラスト・絵・キャラクターです。

例えば東方Projectの博麗霊夢や霧雨魔理沙などが、版権キャラとして挙げられます。

版権と二次創作の違い

インターネット上では「版権」と「二次創作」という2つの語が混同して使われていることもあるようですが、これらの言葉は全くの別物です。

では両者のどこに違いがあるのかというと、創作された作品が原作であるか否かという点です。

版権は書籍などの言語の著作物を保護対象とする権利でした。

一方で二次創作は、著作物の原作を改変することにより、新たな著作物を創作する行為のことをいいます。

例えばある小説を映画化したり、写真を絵画にしたりする行為が二次創作の例といえるでしょう。

二次創作に関する著作権法上の制限

二次創作は漫画やアニメのファンを中心に広く行われていますが、無制限に認められる訳ではありません。

現行の著作権法では二次創作に関して、以下のような一定の制限が設けられています。

1.翻案権

翻案権とは著作権の一種であり、原作の著作者が、その作品を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化などの方法で翻案ができる権利のことをいいます。

つまり著作権者に無断で、小説の映画化などの二次創作をした場合、翻案権の侵害に当たる可能性があるのです。

2.同一性保持権

同一性保持権とは著作者人格権の一種であり、著作者の意に反して作品を改変されない権利のことをいいます。

例えば、原作の世界観を著しく崩すような二次創作をした場合は、同一性保持権の侵害になるでしょう。

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3.複製権

複製権とは著作者が、作品を印刷、写真、複写などの方法でコピーできる権利のことをいいます。この権利も著作権の一種です。

例えば漫画の一場面をトレースする行為は、複製権の侵害となり得ます。

4.公衆送信権

公衆送信権とは翻案権や複製権と同様に著作権の一種であり、インターネットなどを用いて著作物を公衆向けに送信できる権利をいいます。

例えば二次創作物をインターネット上にアップロードする行為は、公衆送信権の侵害になるでしょう。

二次創作の注意点

さきほど例で挙げた東方Projectは、条件付きではあるものの、常識の範囲内で自由に二次創作して良いとしています。

しかし世の中の全ての版権キャラや版権イラストなどが、二次創作を許可されている訳ではありません。

また二次創作には、前述の「二次創作に関する著作権法上の制限」で説明したような著作権や著作者人格権の侵害リスクがあります。

そのため版権キャラや版権イラストの二次創作をする場合は、著作権者である版権元のガイドラインを確認するようにしましょう。

まとめ

今回の記事を通じて、版権は明治時代に用いられていた著作権の旧称だということがお分かりいただけたかと思います。

版権を知ることは著作権の歴史を知ることにもなりますので、この記事を何度でも読み返して理解を深めてください。

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