特許調査は特許分類を活用して検索!種類と使い方まとめ
キーワードだけで特許検索をしていると同義語、類義語、異表記など1つの意味を調べるために複数のキーワードを入れる必要があり、調査内容に抜け漏れが発生してしまいます。
そこで今回はIPC、FI、Fタームなどの特許分類を使った、キーワード以外での特許検索方法を解説します。
<この記事でわかること>
・IPC、FI、Fタームなどの特許分類の使い分け
・J-PlatPatと特許分類を使った検索方法
・特許分類が分からない場合の対処方法
(執筆:知財部の小倉さん)
特許分類とは
特許分類とは全ての特許文献に対して付与されることで、迅速で適確な審査を行うことを目的として利用される技術分野ごとの分類です。また、企業や研究開発者が技術情報や出願情報を得るためにも利用されます。
参考:特許分類の知識(特許庁)
日本における特許分類の全体像
特許公報には下図のようにフロントページと最終ページに特許分類が記載されています。
日本では国際特許分類(IPC、Int.Cl.)を採用し、さらに日本独自のFI(File Index:展開記号、分冊識別記号)、ファセット分類記号を付加して細分化しています。そして、日本独自に検索用に開発された検索インデックスであるF タームを各文献に付与しています。
次に、IPC、FI、Fタームについてそれぞれ解説していきます。
IPC(国際特許分類)とは
従来は各国が独自の分類体系を作成し、その分類体系に基づいて自分の国の特許文献を利用していました。しかし、国際的な技術交流が盛んになり、外国の特許文献の利用が増えてきました。
そのような状況で各国が独自の分類を行っていては、外国の独自分類への習熟や自国の独自分類の再付与などを行わなければならず、特許文献が円滑に利用できませんでした。
そこで、世界各国が共通に使用できる特許分類として国際特許分類(International Patent Classification 、IPC)が作成されました。
IPCは、まず世界各国の特許庁が新規性や進歩性を評価するために、世界各国の特許文献を共通の体系で調査可能とすることを目的としてルールが確立されました。
また、種々の分野における技術の発展を評価できる統計を作成するための基礎にもなっています。
FI(File Index:展開記号、分冊識別記号)とは
IPCは上記したように、基本的な事項に従い国際的に統一して利用されます。しかし、日本においては更に展開記号・分冊識別記号等を作成し、日本特有の技術事情に対応しています。
例えば、日本特有の技術や他国に比べ進んだ技術では、IPC の分類をそのまま使用すると1つのグループに大量の特許文献が集中し、検索に不具合が生じる場合があります。
そこで、日本ではIPC をベースとして、IPC の表示記号に続き、展開記号や分冊識別記号を付加する形の独自の分類をFIとして使用しています。
Fターム(File Forming Term)とは
Fタームは文献量の増大や技術の複合化、融合化、製品の多様化といった技術開発の動向変化に対しても、特許審査のための先行技術調査(サーチ)を迅速に行うために開発された検索インデックスです。
FI のみでは区分けが粗い分野もあり、特に近年発展した技術分野においては単独のFI の範囲であっても非常に多くの先行技術文献を調査する必要があります。
FタームはそれらのFI を所定技術分野ごとに種々の技術観点から細区分したもので、多観点での解析・付与が可能なことが特徴です。
審査官は、特許情報(特許公報類)中に記載されている技術的事項を把握した上で、種々の技術観点(目的・用途・構造・材料・製法・処理方法・制御手段等)を文献ごとに付与しています。
F タームの組み合わせを変えることで、スクリーニングすべき文献集合をそのつど生成し、組みなおすことができるようにしたものです。
IPC やFI と異なり、F タームは主として複数組み合わせて用いることを想定しており、多くの場合、複数のF タームの掛け算によって文献数を絞り込むことができます。
上記絞り込みにより、関連する先行技術文献をスクリーニングできる程度の件数(技術分野に応じて数十件~数百件程度)まで絞り込むことを目指しています。
J-PlatPatと特許分類を使った特許調査事例
IPCを使ってみよう
実際にIPCを使って特許検索をしてみましょう。まずはJ-PlatPatにアクセスしましょう。
「特許・実用新案」のタブの中に「特許・実用新案分類照会(PMGS)」という項目がありますので、こちらをクリックしましょう。
次に、検索対象で「IPC」を選択します。すると下図のようにIPCとその説明が表示されます。FIやFタームを使うときは、検索対象を変えます。
ここで、自分が調べたい分類を展開していきます。下の階層にいくほど分類が細かくなり、件数を絞ることができます。
自分が調べたい分類を見つけることができたら、上のテキストボックスにIPCを入力して「特実検索にセット」をクリックすると特許文献の検索画面に移動します。
すると、検索画面に先ほど選んだIPCが入力された状態となります。このまま検索すると文献の数が3000件以上となり表示できませんので、発行日などの期間をさらに限定して検索を実行すると、今回のIPCに分類された特許を抽出することができます。
発行日の絞り方などJ-PlatPatの基本的な使い方はこちらの記事で詳細に解説しています。
→ 参考:超簡単!特許調査のキホンを企業知財部員が解説
FIもIPCと同じ要領で検索することができます。
Fタームを使ってみよう
IPCやFIは上記した方法で検索できますが、Fタームは少し検索に工夫が必要です。まずは 検索対象で「Fターム」を選択します。
しかし、分類表示のところに分類が現れません。そこで「Fターム簡易表示」を選択します。
すると「テーマグループ選択」という画面になりますので、テーマグループを選択します。内容は表示されていませんので、まずは何か1つ選択してみましょう。慣れてくれば自分が検索したいテーマがどれか分かってきます。
テーマグループを選択すると、さらにテーマコードを選択する画面になります。
テーマコードを選択するとFタームリストが表示されますので、自分の検索したい内容が入っていればこのテーマコードをコピーして「特許・実用新案分類照会(PMGS)」の画面に戻ります。
先ほどコピーしたテーマコードを「分類」にコピーして照会を押すと、Fタームのリストが表示されます。
先ほどFタームリストとして表形式で見たものと同じ内容が表示されますので、検索したいFタームにチェックをいれていきます。右の「開く」を押すとさらに下の階層を確認することができます。
チェックを入れると、Fタームがテキストボックスに追加されていきます。後は、IPCやFIのときと同じで「特実検索にセット」をクリックして検索すれば、選択したFタームに含まれる特許文献を抽出することができます。
また、必要なコードを一覧から探していくよりもキーワードで検索したという場合には、以下のようにキーワード検索もできます。IPCやFIも同様にキーワード検索が可能ですので、コードの見落としが防げます。
検索した特許文献から特許分類を逆引きする
冒頭にも説明しましたが、IPC、FI、Fタームは特許公報に記載されています。
他社特許などを見て類似の文献を探したいという場合には、特許公報に記載された分類を使って検索してみるとよいでしょう。
さらに特許分類を使って得られた文献からキーワードを抽出して検索式に組み込むと検索精度が向上します。
まとめ
今回は日本で使われる特許分類について解説しました。特許分類は種類がさまざまで使い方が難しいですが、キーワード検索と組み合わせると効率的に文献を抽出することができます。
ただ、特許調査の経験が浅いと、必要なキーワードを抽出できず検索に抜け漏れが発生してしまいます。まずは調査の専門家である調査会社や特許事務所に相談しつつ、慣れてきたら自分でも調査するとよいです。
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特許関係の仕事に従事して10年。5年間は特許事務所で500件以上の出願原稿の作成に従事。その後、自動車関連企業の知財部に転職し、500件以上の発明発掘から権利化に携わってきました。現在は、知財部の管理職として知的財産活用の全社方針策定などを行っています。
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