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知財デューデリジェンスの目的ってなに?本当に必要なの?その疑問にお答えします!

「デューデリジェンスって聞いたことあるけど、よく分からない…。」

「そもそも知財に関係あるの?」

デューデリジェンスは、M&Aの局面でよく使われるワードです。

知財に関係あるの?と思われる方もいるかもしれません。

この記事では、知財におけるデューデリジェンスの目的について解説します。

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知財デューデリジェンスの目的とは

まずデューデリジェンスをひとことで言うと、「企業の財務状況や経営状況を調査すること」です。略称は頭文字をとって、DD。

DDをそのまま直訳すると、

デュー(Due)=「正当、然るべき」
デリジェンス(Diligence)=「精励、努力」

で、「当然払うべき努力」という意味になります。

M&Aの局面では、実際に出資に踏み切る際の事前検討としてDDが行われます。

財務DDや経営DDなど、さまざまな観点から調査を進めるのが一般的です。

知財DDの目的

では、知財DDの目的とはなんでしょうか?

DDの本来の目的は、「DDで得た調査結果をもとに、最終契約の交渉を進めること」です。

知財DDでは、対象会社の有する知的財産(特許、デザイン、商標など)が大きなリスクを抱えていないか、投資額に見合った価値があるのか、を調査していきます。

知的財産法やマーケティングにも関係するため、「法務DD」や「ビジネスDD」の一部ともいわれる「知財DD」。

調査対象となる知的財産は、対象会社の営業秘密に当たることが多くなります。

DD後に取引を行わない可能性もあるため、情報の開示には抵抗があるでしょう。

そこで、実際のDDでは開示される情報の確認を「外部の弁護士」や「公認会計士」に依頼し、出資者は調査報告のみを受けるケースが多く見られます。

知財DDでやれること

知財DDでやれること。それは、知的財産に関わるリスクの評価と対応策の検討です。

対象会社の保有している技術や製品が、他社の特許を侵害していたことを知らずに取引を進めた場合どうなるでしょう?

多くの場合、その技術や製品が使えない、またはライセンス料の支払いが発生するなどのトラブルになります。

このようなトラブルを未然に防ぐためにも、知財DDは重要です。

知財DDでは、見つかった課題ごとにリスクの高低を評価し、対応策を検討していきます。

引用:特許庁『知的財産デュー・デリジェンス標準手順書及び解説

リスクの高さ別 対応策の具体例8つ

調査をした結果、リスクや問題点が見つかったとしましょう。この場合、どのような基準でリスクを評価するのか、またその対策はどのように進めればいいのか?

それぞれリスクの高さ別に具体例を8つ解説します。

  1. リスク高:取引自体の中止
  2. リスク高:取引手法の変更
  3. リスク高:取引価格の減額
  4. リスク中:実行の前提条件の設定
  5. リスク中:実行前の義務の設定
  6. リスク低:表明保証
  7. リスク低:実行後の義務
  8. リスク低:PMLの内容検討

1.リスク高:取引自体の中止

リスクを回避することができず、取引を中止する対応です。

例えば、自社や取引予定先と友好的ではない第三者が知的財産を有していた場合、不利な条件を提示されたり、ライセンスを受けることができなかったりします。

このような場合は取引を実行する意味がなくなるので、取引自体の中止を検討します。

2.リスク高:取引手法の変更

事前に取り決めしていた取引手法を変更することも考えられます。

例えば、DDにより対象会社に巨額の負債などが発見された場合、そのまま子会社化することで財務リスクを負う可能性がでてきます。

このような場合は、必要な知財権利だけを承継する条件にするべきかを検討しなくてはいけません。

3.リスク高:取引価格の減額

対象会社への対価を減額するのもリスク対策のひとつです。

おもに評価額の前提条件が崩れた場合などに減額を検討します。

例えば、

  • 対象会社の収益に大幅な低下が予想される
  • 対象会社の収益源であるライセンス契約が更新されない

などがあります。

ただし対価の減額は、取引自体の破談に繋がる可能性もあるため、慎重に検討を進める必要があります。

4.リスク中:実行の前提条件の設定

中程度のリスクなら、契約実行の前提条件を定めておくこともよいでしょう。

契約を進める上で、懸念される事項があった場合、その発見事項が解決することを契約する前提条件に定めておきます。

発見事項の事例としては、

  • 重要なライセンスの更新が未確定である
  • 取引後に、サブライセンスの範囲から外れる可能性がある
  • 知的財産権に関する重要なノウハウを有する技術者が、就業するか未確定である

などがあげられます。

5.リスク中:実行前の義務の設定

DDで発見されたリスクを、「取引の実行までに解消すること」を義務として定める場合もあります。

リスクの解消を義務付けることで、対象会社にリスク解消の強制力を持たせることが可能になります。不履行時には、損害賠償請求をするケースも。

前述した「前提条件を定める」行為には強制力がありませんから、対象会社が前提条件を守らない可能性も0ではありません。

前提条件が守られなかった場合、出資者側は「取引の離脱」以外の選択肢がなくなります。

つまり「前提条件を定める」対応だと、DDで費やしたコストや時間が無駄になりかねないのです。

6.リスク低:表明保証

表明保証とは、対象会社の財務や法務などに関する事項が真実であることを表明して保証すること。

おもな役割は、DDの補完とリスクヘッジです。

DDで調査できる内容は膨大です。そこに完璧を求めることは難しく、その不完全性を補うのが表明保証です。

表明保証によって補完する項目は以下の2点。

  • 出資者側が要請した情報が全て開示されたこと
  • 開示された情報が正確であること

そして、リスクヘッジとして以下のような検討を進めます。

  • 重要な知的財産権を対象会社が保有しておらず、共同研究相手など他者にその権利を留保されている懸念がある
  • プログラム開発に携わる従業員に過重労働の疑いがあり、今後、未払い残業債務が顕在化するおそれがある

7.リスク低:実行後の義務

知財DDによって判明したリスクが低いなら、取引実行後も継続的に義務を負わせることも。

例えば、以下のようなケースがあります。

  • 承継する必要のないライセンスだが、取引実行後も残務処理などで一定期間使用する必要がある
  • 実行後に知的財産権の権利化を禁止する必要がある

このような場合には、自社ではなく対象会社がライセンスの継続や権利化の制限などを行う必要があります。

取引時に「義務」を前提条件とすることで、不履行時の損害請求に備えることができます。

8.リスク低:PMIの内容検討

統合作業(PMI)にて、改善すべき事項がないかを検討するのも良いでしょう。

統合後に価値が減少してしまうのを防止する目的があります。

考えられるケースとしては以下のような例があります。

  • 知的財産権の管理体制が整っていない
  • 秘密管理性の担保ができていない
  • 職務発明規程が整備されていない
  • 知的財産権の権利移転が明確化されていない

知財DDの課題とは

DDとして調査し得る項目は途方もないほどの数が存在します。

そんなDDの課題は、「費用」と「時間」の制約です。

費用の制約

DDには多額の費用が発生します。

実際のDDでは、外部の弁護士や公認会計士などの専門家に依頼することが一般的です。

そのため、調査すべき項目が増えれば増えるほど、外部の専門家に支払う費用が増大していきます。

予算をかけることが困難な場合は、費用を抑えなくてはいけません。

時間の制約

DDの実施期間は、1〜2ヶ月が一般的です。

調査にそれ以上の期間をかけてしまうと、対象会社が別の出資者と交渉を進めてしまうかもしれません。

またM&Aによる支援が遅れることで、対象会社の財務状態が悪化してしまうケースも。

このように、知財DDには費用と時間の制約という課題があります。

課題を解決するには、「適切な調査範囲の絞り込み」が重要になってきます。

まとめ

知財DDについて解説しました。

M&Aの判断材料のひとつとして有効な知財DD。

簡単にまとめると、「対象会社の知的財産によるリスクを把握し、対策を講じること」です。

DD調査はおよそ1〜2ヶ月かけて行います。

この短い期間に調査を進めていきますが、急いで調査を進めると重要な項目を見落としてしまい、M&Aのあとに大きなリスクを負う可能性もあります。

限られた時間と費用の中で、いかに調査範囲を適切に見極めることができるかが重要なポイントです。

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