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パテントトロールって何?!米国弁護士&日本弁理士が解説!

パテントトロール

はじめに

パテントトロールとは、自らは研究開発や発明実施を行うことなく、他人の特許権を買い受けて、その買い受けた特許権を行使してライセンス収益を狙うことを業とする個人や団体のことを指します。
アメリカでは2010年代前半がその台頭のピークだったように言われており、現在では一時期ほどの勢いはなく、減少傾向にあるようです。

しかしながら、パテントトロールは依然として存在するものであり、アメリカで技術(特にソフトウェア)をベースにビジネスを展開する場合には、その対策を講じておく必要があると言えるでしょう。

今回はパテントトロールについて解説したいと思います。

パテントトロールは何をするの?

上述のようにパテントトロールは、自ら発明の創作や実施を行うわけではなく、他人が取得した特許(主に実施されておらず休眠状態の特許)を買い取り、その特許の対象となりそうな技術を実施している人に対して、「自分の特許権を侵害している」と主張して、ライセンス料の支払を求めてくるというのが一般的です。

1.特許侵害って何?

では、そもそも「特許侵害」とは一体どのようなものなのでしょうか?

特許侵害とは、各国で若干の定義のずれはありますが、多くの国で共通しているのは、有効に登録されている特許の、特許請求の範囲(国外では特許クレームと言ったりします。)に記載の事項の全てにあてはまる技術的アイデアを、権利者に無断で使用することを言います。
「技術的アイデアを使用」(=法的には実施といいます。)とは、その技術的アイデアが反映された製品を製造販売したり使用したりすることが一例です。

例えば、ソフトウェアに関する技術で、(1)ユーザーの位置情報を取得して、(2)その位置情報とリンクされた風景画像を読み出し、(3)風景画像とユーザーとを同期させて表示させる、技術的アイデアについて特許を持っている人がいるとしましょう。
この特許を持っている人の断りなく、(1)~(3)の特徴を全て兼ね備えたアプリを作って販売してしまうと、この特許権を侵害することになってしまいます。

2.特許侵害をするとどうなるの?

特許侵害をすると、多くの国で(1)差止請求(技術的アイデアの使用を止めろと言われること)、(2)損害賠償請求、(3)除却等請求(技術的アイデアの使用がなされた物(在庫など)や技術的アイデアを使用している設備を廃棄せよと言われること)を受けてしまうこととなります。
国によっては、刑事罰による罰則もあります。

上記のソフトウェアの例でいうと、特許侵害となってしまえば、そのアプリの販売を今後やめなさい、今まで販売したアプリ分について損害賠償を払いなさい、アプリを書くためのコードを捨てなさい、と言われてしまう可能性ありということになります。

また、特許侵害をしているという認定は、他人の権利に配慮しない会社として、会社の評判も傷つけてしまいます(レピュテーションリスク)。

3.小括

パテントトロールは、他人から買った(多くは)休眠特許を使って、その休眠特許と似たような技術を実施している人にアプローチして、「特許侵害だ」と迫ってくることが一般的です。
法的に特許侵害を主張することのできる要件を備えているものなので、いざ自分がアプローチを受けてしまうとどうしてよいか分からない事態に陥ってしまうことになります。

アメリカだけの話?

パテントトロールは、アメリカの方が圧倒的に多く、日本ではあまり事例として多くありません。

なぜ日本ではあまり多く見られないのでしょうか?
一説には、日本で特許侵害訴訟を起こしても、特許権者の勝率があまり高くなく、また損害賠償金として認定される金額もあまり大きくない傾向にあるため、市場として魅力的でないということがあるようです。

他方では、弁護士法第73条の規制(他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることを禁ずる規制)もあり、パテントトロールの動きが制限されることもあるようです。

では反対になぜアメリカでは多い(多かった)のでしょうか?

1.プロパテント政策

1つの理由として、2000年代頃まで、アメリカはプロパテント政策を取っていたため、その余波が続く2010年代前半まで特許権者たるパテント・トロールが活躍しやすかった土壌にあったと説明されます。

プロパテント政策とは、文字通り特許を優遇する政策であり、特許を取得しやすくかつ特許権を行使しやすい環境を志向するものとです。

2.訴訟コストが高い

パテントトロールに訴訟提起をされてしまった場合、被告として防御をするために弁護士に依頼することとなりますが、アメリカでは広範な証拠開示手続(ディスカバリー)があるため、弁護士費用が高騰しがちです。

費用をかけて訴訟防御をするよりも、パテントトロールと和解してライセンス料を支払った方が経済メリットが大きいのでは?というインセンティブが働きやすく、パテントトロールが活躍しやすい土壌になった一因となったのではないでしょうか。

3.懲罰的損害賠償

特許侵害の場合、損害賠償請求が主張されることがほとんどですが、アメリカにおいては、特許の存在を分かっていて敢えてそのまま技術的アイデアを使用した場合や、ろくに先行特許を調査もせずに技術的アイデアの使用を進めてしまった場合などには、故意に特許を侵害したものとして、通常の損害金額に加えて、裁判所による懲罰としての損害金額が認定されることが可能な制度が取られています。

この懲罰的損害賠償の制度により、故意侵害と認定された場合の巨額な損害金額を懸念して、パテントトロールと和解してライセンス料を支払った方が経済メリットが大きいのでは?というインセンティブが働きやすかったという側面もあるように思われます。

事前対策は?

アメリカに進出するにあたり、パテントトロールのリスクを低減するにはどうしたらよいのでしょうか?

1.特許調査

まずは、アメリカにおける先行特許をちゃんと調査した上で、抵触する特許が存在しないことを確認した上で、進出することが肝要といえます。

上述のとおり、ろくに調査を行わずにえいやと進出してしまうと、故意侵害と認定されて巨額の懲罰的損害賠償を受ける可能性があります。
故意の認定を避けるためにも、進出前に先行特許調査は必須といえるでしょう。

この場合、先行特許調査においては、米国特許弁護士を起用して、どの範囲で先行特許調査を行い、どのように自社の製品と先行特許を比較し、どのような根拠で抵触先行特許なしとの結論に至ったか、弁護士鑑定書を取得しておくことが望ましいです。
合理的な弁護士の意見にしたがって、技術的アイデアを使用していたのだとすると、少なくとも故意の認定は避けやすくなるといえるでしょう。

2.アメリカでの特許取得

次に検討すべきは、自己製品についての特許の取得です。

もし特許調査の過程で、自己製品に当てはまるのか当てはまらないのか微妙な先行特許が出てきた場合、自己製品について特許出願を行って、当該先行特許との関係について米国特許商標庁(USPTO)に審査してもらうのも一案です(自己製品について特許まで取れればよりよいです。)。

USPTOの審査により、自己製品と当該先行特許とが異なるとの認定を受ければ、もしパテントトロールがその微妙性を突いて「特許の範囲に含まれる」との主張をしたとしても、USPTOという専門官庁が異なるという認定をしたという事実は、一定程度有効な反論となりえます。

いざクレームを受けたら?

まずは、対象となる自己製品とクレームの根拠となる特許との関係について、米国特許弁護士による鑑定を受けましょう。
鑑定の結果、当該特許の範囲に自己製品が含まれないとの見解であれば、鑑定人たる米国特許弁護士を介して、その旨の回答をしてもらいましょう。

次に同業他社を含め、同様のクレームを受けたことがあるか調査をし、当該パテントトロールの傾向を把握することが肝要です。

一方、もし少しでも当該特許の範囲に含まれる可能性があるのであれば、当該特許を無効化することができないか、米国特許弁護士に相談しましょう。

アメリカでは、2010年以降に特許要件が厳格され、まずは日本でいう進歩性に相当する非容易性(Non-Obviousness)の基準が引き上げられました。
その後、特許を取ることのできる対象(特許適格性)の基準が厳格となり、特にソフトウェア関係の特許基準が相当に困難となりました。
また、特許を無効化する手続も拡充され、訴訟にて争うよりも安い費用で無効化手続を行うことができる体制が整備されています。

よって、パテントトロールから訴訟を仕掛けられる前に、特許無効化手続を先手として開始することも検討できるように思います。

おわりに

今回はパテントトロールの切り口からアメリカ特許を解説してみました。
今回の記事を通じても、外国で知財にうまく対処するには、事前の調査、専門家とのネットワークが重要であることをご理解いただけたかと思います。

知財には専門知識が要されますし、また米国特許弁護士を含む現地の専門家とやり取りをするのにも非常にハードルが高いものです。
そもそも何から考えたらよいのか?を含めて相談できるのが、日本国内・国外の知財について専門的な知見を持っている弁理士といえます。

外国での特許取得を具体的にお考えでないとしても、気軽に弁理士に相談されるとよいのではないでしょうか。

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