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メタバースの特許について解説します

メタバースとは

近年、オンライン上に3次元の仮想空間を作り出す「メタバース」が話題となっています。

メタバースを利用したゲームとしては、Minecraft(マインクラフト)やFortnite(フォートナイト)があります。これらのゲームでは、仮想空間の中で自由に冒険や戦闘をすることができます。

また、イケア(IKEA)では、オンライン上で部屋の中に家具を配置することのできるアプリ『IKEA Place』を開発しています。『IKEA Place』では、このメタバースに関する特許家具をオンライン購入する際に、実際にその家具を自分の部屋などに配置して確認することができます。

これらのメタバースには、どのような仮想空間を利用するか、という点で、仮想現実(VR)と、拡張現実(AR)に分かれます。今回は、このメタバースの特許について、仮想現実と拡張現実の違いも含めて解説します。

仮想現実(VR)とは

VRとは、コンピュータによって作り出された世界でありながら、ユーザーが現実のように知覚・体験できる技術です。例えば、MinecraftやFortniteなどのゲーム、ジェットコースターと映像とを組み合わせる技術や、手術のシミュレーション技術に、VRが使われています。

VRには、大きく分けて、流れている3D映像を見る視聴型と、映像の中を動き回ったり、映像内のものを動かしたりすることのできる参加型に分かれます。先程の例では、ジェットコースターに用いられるVRは視聴型、医療のシミュレーション技術に用いられるVRは参加型になります。

拡張現実(AR)とは

ARとは、実在する風景に文字や映像などの視覚情報を重ねて表示する技術です。例えば、さきほどの『IKEA Place』には、ARが使われています。

また、株式会社LIFULLの提供する賃貸・不動産物件探し用アプリ「LIFULL HOME’S」では、気になる物件やお店にスマートフォンをかざすと、画面上に物件情報やお店の情報が表示されるというARが使われています。

VR、ARの特許出願状況

VRの特許出願は、2015年から2019年にかけて急激に増加しています。また、ARの特許出願は、2010年から2019年にかけて急激に増加しています。

その一方で、今回の資料では、2021年の出願公開公報は未だ全て公開されていないこともあり、VR,AR共に、2020年以降の傾向は不透明であることがうかがえます。

VRの登録特許出願件数推移

ARの登録特許出願件数推移

引用: 28年に46兆円市場、メタバース支えるVR/ARの特許分析(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH)

しかしながら、メタバースの市場は近年急激に拡大していることから、今後メタバースの特許出願は増加するのではないかと思われます。

【2024年最新】国内外のメタバースの市場規模と今後を徹底解説 – メタバース総研|メタバースの企画・開発・運用を一気通貫で支援 (metaversesouken.com)

国別・企業別の出願状況

またメタバースの特許出願を国別にみると、中国による出願が最も多く、次いで、米国、日本の順になっていることが分かります。このことから、メタバースの研究・開発は、中国と米国が先行していることがうかがえます。

Vol.15 仮想現実画像(XR)に関する世界特許解析 | 知財ニュース.com | 特許・商標等の最新の知財ニュースを紹介 (chizainews.com)

VRの特許出願の多い企業には、コロプラ、マジックリープ、ファーウェイが挙がっており、ARの特許出願の多い企業には、これら3社の他に、ソニーや富士通などの大手日本企業が挙がっています。

日本の企業であるコロプラの特許出願が多い理由としては、任天堂との特許権侵害訴訟で多額の和解金を支払ったことで、特許の重要性を認識したことが考えられます。

VRの登録特許出願のトップ10

ARの登録特許出願のランキング

28年に46兆円市場、メタバース支えるVR/ARの特許分析(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

VR,ARの特許例

ここからはVR,ARの特許例を紹介します。

VR,ARは仮想空間を使用するため、特許は通信分野やソフトウェア分野が多くなります。その一方で、仮想空間の使用に必要な装置についても特許が取得されています。

今回は、これらの特許の一部を紹介します。

株式会社コロプラの特許(特許第7437480号)

特許第7437480号は、プレイヤーに対応付けられるアバターの外観、服装、装備品等の表示態様を多様化させることで、プレイヤーの趣向性を高める発明です。

この特許の特徴は、ライブ配信に登場するキャラクタを仮想空間に表示させ、このキャラクタが着用しているオブジェクトを、ライブ配信でリアルタイムに表示可能にすることにあります。

なお出願は日本のみで、他国では出願されていません。

株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの特許(特許第7362903号)

特許第7362903号は、データ伝送を伴う画像表示において、画質と遅延時間の低減を両立させることのできる技術を提供する発明です。

この特許の特徴は、次のa)からc)です。

a) 前記動画像を構成するフレームの平面を分割してなる圧縮単位ごとに、データサイズの累積値に基づくフィードバック制御によった圧縮符号化後のデータサイズの目標値を設定する

b)圧縮率を調整しながら前記動画像のデータを圧縮符号化する圧縮符号化部を有する

c)この圧縮符号化部が、圧縮単位ごとに画質低下の許容度を設定したレート制御マップを参照し、前記画質低下の許容度に対応するように、前記データサイズの目標値を設定するとともに、前記画質低下の許容度に応じて、前記圧縮単位の圧縮符号化順を決定する。

また、この特許は日本と米国で出願されており、日本では既に特許されているのに対して、米国では審査中の段階にあります。

パナソニックIPマネジメント株式会社の特許(特許第7462278号)

特許第7462278号は、アミューズメント施設等で用いられるヘッドマウントディスプレイに関する特許であり、ヘッドマウントディスプレイの装着を容易にすることで、ヘッドマウントディスプレイの稼働率を向上させる発明です。

そして、この特許の特徴は、

  • アタッチメント(12)が、ユーザーの上下方向視で、その前側にユーザーの前方に向かって凸に湾曲する凸形状部(12c)を備えている
  • ディスプレイユニット(18)が、前記上下方向視で、その後側にアタッチメント(12)の凸形状部(12c)と係合する凹形状部(18c)を備えている

ことにあります。

この特許は、日本の他に、米国、中国、欧州に出願されており、日本、米国、中国ではすでに特許されています。また、欧州では審査中の段階にあります。

まとめ

メタバースの市場は今後も拡大すると予想されているため、メタバースの特許出願は今後より増加するでしょう。

またメタバースの市場は、ゲームなどのアミューズメントに限られず、医療や家具、建築の分野にも広がっていることから、様々な分野においてメタバースの特許出願が行われていると考えられます。

そのため、メタバースを用いた新たな事業をする場合には

  • 特許権を取得することが可能か
  • 他社の特許権に抵触していないか

について慎重に検討する必要がありますが、いずれの場合も他の分野のメタバース特許が思わぬ障害となる可能性があります。

ですからメタバースを用いた新たな事業をする場合には、特許出願、あるいは特許調査について、事前に専門家に相談することをおすすめいたします。

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