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商標権を侵害されたときの対応

商標権を侵害されたときの対応の流れ

商標権を侵害されたので、使用をやめさせたい、あるいは発生した損害を賠償させたい。

このような事案が生じた場合には、まず、商標権の専門家である弁理士・弁護士に相談し、対応してもらうことをおすすめします。

なぜなら対応を誤ると、問題を解決するにあたって経済的・時間的なロスが発生するかもしれないからです。更には事案を解決できないという結果になるケースもあります。

商標権を侵害されたときは、概ね次のようにして対応します。

  1. 登録商標の確認
  2. 商標権を侵害している行為の確認
  3. 商標権を侵害している者に対して行う措置の確認
  4. 警告書の送付
  5. 相手方からの回答書の確認
  6.  回答書の回答を受けての対応

海外で商標侵害されたときは?

海外で商標権を侵害された場合も、基本的には日本と同じ対応になります。

ただし海外における警告書の送付や訴訟の対応は、商標権を取得している国や地域の代理人に依頼することになります。

警告書送付の前にすること

警告書の送付前に依頼者がすることは、先ほどの「商標権を侵害されたときの対応の流れ」で挙げた1~3です。

1.登録商標の確認

まずは商標権を構成している登録商標と指定商品・役務、そして権利の存続期間を確認します。

もし仮に権利の存続期間を経過して商標権が消滅していた場合には、そのままですと相手方に権利行使ができず、警告書の送付も不当な手続きとなります。

このような場合には、更新料の追納により商標権の更新をする、あるいは、商標の再出願をしてもう一度登録を受けた後に、警告書の送付をする必要があります。

2.証拠集め

自分の商標を確かめたあとは、相手方が権利侵害をしていると思われる商標の使用について、証拠を集めます。証拠としてよく使用されるものとしては、インターネットでの販売サイトやカタログ、チラシなどがあります。

ここで問題となる「商標権の侵害」には、いわゆる直接侵害とみなし侵害とがあります。

商標権の直接侵害は、こちらの2つを満たす場合に該当します。

  1. 自分(自社)の使用している商標が、登録商標と同一又は類似である
  2. 自分(自社)で商標を使用している商品やサービスが、登録商標の指定商品・指定役務と同一又は類似である。

また、その行為自体は商標権の直接侵害に該当しないものの、商標権の直接侵害につながる可能性の高い予備的行為を、商標権の侵害とみなすことがあります。この予備的行為に適用されるのが、みなし侵害です。

商標権のみなし侵害に該当するパターンについては、こちらの記事を参照ください。

3.自社の方針を検討

証拠集めによって相手方の使用状況を把握した後は、自社の対応方針を検討します。基本的な対応の方針としては、以下のものがあります。

  1. 使用中止を求める
  2. 損害賠償を求める
  3. 相手方からライセンス交渉があった場合に応じるか否か

もちろんこれ以外の対応案もあります。

例えば相手方が製造元から購入したものを使用している場合には、製造元の情報を回答書等で教えてもらう、という対応も選択肢になるでしょう。

警告書送付

一般的に警告書の作成・送付は、弁理士に依頼して行います。

主な記載事項はこちらの通り。

  1. 商標権の存在を明示したうえで、相手方の使用が商標権の侵害であることを述べる
  2. 証拠集めで得た相手の使用を提示する(提示する証拠は適宜選択する)
  3. 回答期限を明記する

商標権の存在は、登録商標の登録番号を明示することで対応できます。

また証拠の提出については、商標権の侵害を証明することが可能な程度に提出することが要求されます。その一方で、証拠を相手方に見せすぎると反論のネタを与える場合もあるため、こちらの手の内をどれだけ見せるか、今後の交渉や裁判を考慮して選択することが必要になります。

なお回答期限については、送付から2週間程度というのが一般的です。

回答書(返答内容)への対応

次に、警告書に対する回答書が届きましたら、この回答書の内容を検討します。回答書の内容は、大きく分けて、こちらの要求に応じる内容と、応じない内容に分かれます。

もしも回答書が期限内に届かない場合には、回答をする旨の督促状を相手方に送ります。督促状の発送手続きにも手間・費用はかかりますが、このような手続きを踏むことで、後に訴訟になった場合に、裁判官の心証を良くすることができます。

こちらの要求に応じた場合

回答書の内容が、こちらの要求に応じる内容である場合には、その要求を実際に受け入れたことを確認します。

例えば、警告書で要求した内容が商標の使用中止である場合は、インターネットに掲載された販売サイトの削除等をチェックしましょう。

こちらの要求に応じない場合

回答書の内容が、ことらの要求に応じない内容である場合には、その理由の妥当性について検討しましょう。要求に応じない主な理由としては、以下のものがあります。

  1. 指定商品・役務と相手方の使用している商品が非類似である
  2. 登録商標と相手方の使用している商標が非類似である
  3. 相手方の使用は、商標としての使用に該当しない
  4. 相手方の使用している商標は、その商品の品質などを表しているにすぎない
  5. 登録商標に無効理由がある
  6.  相手方の使用は、先使用権に基づく使用である
  7.  相手方の使用は、真正品の輸入(並行輸入)によるものである

警告書が「みなし侵害に該当する」という内容である場合には、使用する目的を有しない、という理由で要求に応じないことも考えられます。

なお理由ごとに対応方法・検討内容が変わってくるので注意をしてください。

1のケースは、特許庁で発行している類似商品・役務審査基準に基づいてその妥当性を検討します。

商品・役務の類否は、この審査基準に記載されている類似群コード(例えば、化学品:01A01)が同一であれば類似と判断し、相違していれば非類似と判断します。

また2については、両方の商標の外観、称呼、観念を総合的に考慮したうえで判断します。

3~7の妥当性を検討する方法については、「商標権を侵害している?警告書が届いた場合の対応」という記事で詳しく解説しています。

侵害訴訟の提起

回答書の内容が、こちらの要求に応じない内容であり、容認できないものである場合には、侵害訴訟を提起することも検討しなくてはいけません。

ただし侵害訴訟には、200万円以上の弁護士費用が生じることもあり、さらには訴訟が完結するまでの期間が1年以上になることもあります。侵害訴訟をするか否かは、訴訟に係る金銭的・時間的リスクを考慮する必要があります。

また訴訟を提起した後は、1~2月に1回の割合で、裁判所での審理が行われます。この審理では事前に、主張する内容を記載した書面を裁判所と相手方へと提出する必要があります。

そのため裁判を行っている間は、弁護士に書面の作成と提出を依頼し、自社がこの書面を確認するという追加業務が入ってきます。

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