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マンガを無断でWEBに載せてはダメ!漫画村事件について解説します

漫画村事件とは

漫画村事件とは、漫画を中心に違法コピーしたコンテンツを、インターネット上で閲覧可能にした行為が著作権侵害であるとされた事件です。

この一件は、著作権侵害の中でも特に以下の特徴を有していることから、社会的にもよく知られた事件となっています。

  • 「漫画村」が月間利用者数・1億人規模にもなったサイトであること
  • 民事と刑事の両方で著作権侵害が認定されたこと
  • 民事訴訟で約17億円の損害賠償という大きな金額になったこと

そこで、今回は漫画村事件の民事訴訟と刑事訴訟について解説したうえで、このようなサイトが著作権法上どのような問題点を有するか説明します。

一連の事件の時系列まとめ

本件は民事訴訟と刑事訴訟の両方が起きており、関連事項も多いため、はじめに簡単な時系列を紹介します。

2016年1月 漫画村のサイト開設

2017年 講談社や集英社などが刑事告訴

2018年4月 漫画村のサイト閉鎖

2019年 被告の逮捕・起訴

2021年6月 刑事訴訟(地裁)の判決言い渡し

2022年 被告の服役、終了

2022年7月 KADOKAWA、小学館、集英社が民事訴訟を提起

2023年 被告が刑事訴訟について、再審請求

2024年4月 民事訴訟(地裁)の判決言い渡し

2024年7月 民事訴訟の控訴棄却

民事訴訟について

漫画村の民事訴訟は東京地裁で行われました。

裁判所は「漫画村」によるマンガ類の掲載行為が著作権侵害に該当すると認定し、約17億円の損害賠償が言い渡されました。

その後、控訴審が棄却され、「漫画村」の運営に積極的に関与していた被告(H氏)の敗訴が確定しています。

概要

本件はKADOKAWA、小学館、集英社の三者が原告となった事件です。被告の関与している「漫画村」でマンガを掲載する行為が、著作権のうちの出版権及び公衆送信権を侵害しているとして、損害賠償を求め2022年に提訴をしました。

原告は、漫画村に掲載されているマンガ等の著作権者から出版及び公衆送信をすることについて出版権又は独占的利用権の設定を受けています。

その一方で、漫画村サイトは平成28年(2016年)1月に開設されており、運営中はコミックなどを無断で掲載していました。しかしながら、平成30年(2018年)4月に閉鎖されているため、原告は差止請求をせずに損害賠償を請求しています。

地裁での判決

地裁では、被告の行為が出版権と公衆送信権を侵害しているか否かについて、争われました。

出版権は、著者(著作権者)が本を出版するときに、著者が出版社に対して、独占的に、著作物を出版し、又は公衆送信することを認める権利です(著作権法第79条1項)。

また公衆送信権とは、著作物をインターネット等で伝達することを占有する権利です(著作権法第23条1項)。

争点になったのは、第三者の設置したサーバーに保存されているマンガ類のデータを、「漫画村」サイトのサーバーにリバースプロキシの設定をすることにより閲覧可能にする行為が、公衆送信に該当するか?です。

リバースプロキシとは、第三者のサーバーとユーザーとの間のデータ送信を中継するサーバーであり、セキュリティの向上や第三者のサーバーへの負担を軽減する機能を有するものです。

つまり別のサイト(サーバー)にアップロードされていた違法コンテンツを、漫画村のサーバーに保存せずサイト訪問者に見せる方法は違法かどうか?が問われました。

本件では、リバースプロキシは、あくまでも「公衆送信し得る」状態を作りだしていた侵害コンテンツに誘導するものに過ぎないため、公衆送信に該当しないとの被告の主張がみとめられず、公衆送信権の侵害であるとの認定がなされました。

そして、この公衆送信権の侵害に基づいて、出版権の侵害が認定され、KADOKAWAに対し約4億円、集英社に対し約4億3000万円、小学館に対し約9億円の損害賠償を支払う旨の判決がなされました。

高裁での判決

H氏はこの判決を不服とし高裁に控訴しましたが、棄却され、判決が確定しました。

「漫画村」に関する⺠事訴訟の判決確定について(株式会社KADOKAWA)

この判決確定により、地裁での損害賠償の判決が確定しました。

刑事訴訟について

漫画村事件では、民事訴訟とは別に刑事訴訟も行われています。

刑事訴訟では、講談社や集英社などが「漫画村」について刑事告訴をし、著作権法違反の容疑で捜査をしている段階で、H氏がフィリピンに逃亡しました。ですがH氏は国際指名手配され、その後逮捕されました。

その後刑事訴訟が開始され、著作権法違反により懲役3年が確定しました。

概要

こちらは「漫画村」で掲載する行為が、著作権に規定されている公衆送信化に該当するため、公衆送信権を侵害しているとして、刑事罰である懲役及び罰金を言い渡された事件です。

著作権法では、著作権侵害をした者に対して、懲役などの刑事罰を処することができる旨が規定されています(著作権法119条1項)。

判決

本件は、福岡地裁で裁判がなされました。

被告人は、「漫画村」サイトのサーバーにリバースプロキシの設定をすることにより閲覧可能にする行為は公衆送信化に該当しない旨の主張をしましたが認められず、執行猶予無しの懲役3年及び罰金1000万円が言い渡されました。

服役とその後

H氏は控訴をしなかったため懲役3年が確定し、収監されていましたが、令和4年(2022年)に服役を終えました。

しかしH氏はこの判決を不服とし、再審の請求を考えているようです。

ですが再審が認められる理由は極めて限定的であり、例えば、法律の適用が明らかに間違っているなどの特段の事情がない限り再審の申し立ては却下されます。そのため、H氏の再審請求が認められる可能性は非常に低いと考えられます。

まとめ

漫画村事件は、閲覧数の多さから、著作権者や出版権者に本来配入るべきであった収益が減少するという問題が生じました。

また、いわゆる海賊版である漫画村のサイトに広告が掲載されることで、広告出稿企業のブランドイメージが低下したり、海賊版サイト運営者が不当な広告収入を得たりする、という問題も生じました。

そのため、本件は民事訴訟と刑事訴訟の両方で争われることになったのです。

SNSが発達した現在では、かんたんにマンガ等をインターネット上に載せることができるため、「知らないうちに著作権を侵害していた…!」となる可能性について意識する必要があります。

またインターネットの閲覧数が増えると広告による収益も増えるため、著作権侵害をしている場合には、この広告収入が不正な収益となる点にも留意する必要があります。

さらに、著作権法は時代に合わせてしばしば法改正が行われます。ですから著作権上の問題が生じるかもしれない、と感じたら、ぜひ専門家に相談してください。

特に近年では、生成AIとの関係で著作権法の整備が急務となっており、AIに絡めて著作権法の改正がなされる可能性が高いため、不安を感じたら事業・プロジェクトを始める前に、専門家に相談することをおすすめします。

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