特許の審査請求は必要?手続き方法からメリットまで徹底解説
特許の審査請求とは?出願から権利化までの流れを確認しよう
特許の審査請求とは、特許庁に出願した特許の審査を求める手続きです。
特許技術を独占的に使うためには、出願だけでなく、その後に審査請求を行う必要があります。
特許庁による審査により登録(権利化)されて初めて、権利行使ができるようになります。
ただ、必ずしも審査請求をするのが望ましいとは限らず、むしろ審査請求をしないほうが好都合である場合も少なくありません。
本記事では審査請求のために必要な手続き・費用、請求を行う期限・メリットなどをまとめました。
注:特許庁費用はすべて2022年4月1日改定後の金額です。
審査請求に必要な手続きは?
審査請求の手続きはとてもシンプルです。
- 特許審査請求書の提出
- 出願審査請求料の納付
を行います。
審査請求書のテンプレートは知的財産相談・支援ポータルサイトにて取得可能です。
書き方が特許庁のホームページに掲載されていますので、参考にしてみてください。
なお審査請求は、出願人以外も行うことができます。
たとえば他人が出願した特許の権利化の可否を、いち早く知りたい場合に行われます、費用はかかりますが、出願人の請求を待たずに審査を進めることが可能です。
他人の特許が権利化されなかったと確認してから自社の研究開発に着手するのも、選択肢の一つとなります。
いつまでに審査請求が必要?申請期限について
審査請求は出願した日から3年以内に行う必要があります。
ちなみに審査請求率は年々増加しており、2013年以降に出願された特許の請求率は70%を超えています。
また審査請求をされた特許のうち権利化されているのは75%程度です。これは出願された特許のおよそ半分にあたります。
権利化を急ぐなら早期審査を
審査請求をしてから特許庁による一次審査結果が届くまでに、10ヶ月ほどかかります。
- 特許技術を使用した自社製品を販売中である
- 第三者による模倣品が見つかった
などの早急な権利化を必要とする場合では、早期審査を行なうと、審査期間を3ヶ月弱に短縮できます。
早期審査の請求は通常の手続きと異なり、出願人(またはその代理人)のみが行えます。
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審査請求にかかる費用は?
審査請求にかかる費用のうち、特許庁に支払うのは138,000円+4,000円×請求項数です。最低14万円ちょっとかかる計算ですね。
早期審査を行った場合、特許庁に納める金額は変わりませんが、代理人に支払う手数料が増える場合がほとんどです。
なお審査請求料を納めた後に審査・権利化の必要がなくなった場合、半額を返してもらえる制度があります。
これは出願請求料返還制度と呼ばれ、利用するためには特許庁での審査が始まる前の出願の取り下げまたは放棄が必要です。
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審査請求をしないとどうなるか
特許出願日から3年以内に審査請求をしないと、特許出願は取り下げたものとみなされます。
審査請求がされなかったとしても、その特許技術が公開特許公報として開示され続けます。
取り下げたとみなされた特許技術は誰もが自由に真似できてしまうため、うっかり請求可能期間をすぎてしまわぬよう、慎重に期限管理をしましょう。
一方で、特許庁が他人の出願を審査する際、公開特許公報が権利化を妨げる根拠資料となる可能性もあります。
つまり模倣品を避けるより他人の権利化を妨げることを優先したいなら、審査請求をせず情報開示を最終目的に、特許出願をすることもあるのです。
審査請求をするメリット2つ
審査請求をするか迷った際は、
- 発明の実施権の確保
- 他人に対する権利の行使
をしたいかを確認しましょう。
特許出願の主な目的として、独占排他権の取得が挙げられます。この権利取得には、審査請求が不可欠です。
発明の実施権を確保できる
審査請求・権利化することで、特許技術を独占的に使える権利を確保できます。
審査して初めて、その技術が今までにない優れた技術であるかが判断されます。
ですから未審査の状態では、その特許の出願日よりも前に、同じ技術に関する特許が出願・権利化されてしまっているリスクがあるのです。
また技術の実施権の確保という意味で、複数の特許出願・審査請求をするケースも存在します。
1つの技術につき特許出願の数が1つのみだと、それを権利化できなかった際に独占権を得られなくなります。
これらのリスクを踏まえ、研究開発の基礎となる重要な技術に関しては、複数の特許出願・審査請求をするといった対策をしましょう。
他人に対し権利を行使できる
審査請求・権利化すると、その技術を模倣している第三者に対し、差し止めや損害賠償などの権利行使ができるようになります。
公開特許公報の段階では、模倣している他人に対し、これらの権利行使はできません。
もしも市場に対象となる特許技術の模倣品が見つかった場合、早めに審査請求を行うことをおすすめします。
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審査請求をしないメリット3つ
出願をした特許の審査請求を、必ずしもしなければならない訳ではありません。
- 費用を抑えられる
- 手間を減らせる
- 他人を牽制できる期間を伸ばせる
などのメリットがあります。
請求期限が近づいたら、急いで手続きを進めるのではなく、改めて特許の使用目的を見直してみましょう。
- 出願した技術に関する事業が軌道に乗らなかった
- 研究開発が進む中で製品の特徴が変わり、新たな特許出願を行うことになった
- 他社の権利化の阻止のみを目的とした防衛的な出願であった
といった場合は、必要以上に審査請求をしなくてもよいでしょう。
1.費用を抑えられる
審査請求をしないことで
- 審査請求費用
- 特許維持年金
を抑えられます。
日本国内において、出願日から20年後の存続期間満了まで特許権を維持した場合、これらの合計金額は100万円を超えます。
そして自社の特許出願の数が増えるほど、この金額はかさみます。
同じ研究開発のテーマにおいて複数の特許出願をしていた場合、どの特許技術が優れているのかを見極め、審査請求をする件数を限定してもよいかもしれません。
2.手間を減らせる
審査請求から権利化までには、特許庁と数回のやり取りをするのがほとんどです。
- 拒絶理由通知書
- 拒絶査定不服審判
などの対応を行う必要があります。
特に外国に出願した場合、同じ特許権の中間対応をいくつも行わなければなりません。
これは実務担当者にとって大きな負担になるはずです。
そのため、手間をかけてでも権利化したい特許権かどうかを評価してから、審査請求をするようにしましょう。
3.他人を牽制できる期間を伸ばせる
審査請求・権利化されていない段階では、他人に対し権利を行使できません。
そうはいっても、その特許が公開されているだけで、競合他社を牽制することはできます。
特許庁での審査の結果、権利化できなかった場合、競合他社は訴訟の心配をせずその技術を使用できてしまいます。
逆に審査結果が分からない状態のままにしておけば、訴訟の可能性も0ではないため、模倣品のリスクを抑えられるでしょう。
権利化できる確証がない場合は、審査請求可能期間ぎりぎりまで手続きをしないのも戦略の一つなのです。
なお基本的に、審査請求をできる期間は出願日から3年間ですが、分割出願といった手段によりこの期間を延ばせます。
牽制し続けたい具体的な相手がいる場合などは、分割出願による審査請求期間の延長を、特許事務所に相談してもよいかもしれません。
まとめ
出願した特許は必ずしも権利化を目指すのがよいとは限りません。
それぞれの出願には目的や役割があります。
実際、出願された特許の約30%は審査請求がされていません。
3年間の請求できる期間中における、出願した特許の再評価をおすすめします。
審査請求を行うか迷った際には、本記事を参考にしてみてください。
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企業の研究開発部門と知財部門での業務を経験。
知財部門では、主に特許出願・権利化業務を担当してきました。
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