失敗事例も多い?オープンイノベーションを徹底解説!
オープンイノベーションとは何か?
みなさんは、オープンイノベーションという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
オープンイノベーションとは、自社の基礎技術に、自社の別事業もしくは他社の技術を導入し、新たな商品・サービスを生み出すことです。
ビジネス環境が複雑になるにつれて、各企業が他社に技術を開放したり、他社から技術を導入したりすることで、新規ビジネスへ参入しています。
一見、企業の強みを組み合わせれば成功しそうですが、オープンイノベーションは失敗することも少なくありません。
本記事ではオープンイノベーションの失敗事例と、そこから学べる成功のためのポイント、知財法務の立場から見たオープンイノベーションについてまとめました。
自社技術の使い方を検討されている人は、参考にしてみてください。
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【事例紹介】大企業も失敗するオープンイノベーション
オープンイノベーションは決して簡単なものではありません。
日本やアメリカの大企業も、オープンイノベーションに失敗しています。
自社の強みを活かしきれなかったり、消費者のニーズを十分に満たせなかったりすると、どんなに革新的な技術を用いても成功できないのです。
- ユニクロの野菜販売
- Google Glass
- セグウェイ
の事例から、オープンイノベーション失敗の原因と、成功するためのポイントを考えてみましょう。
ユニクロの野菜販売
アパレルブランドとして有名なユニクロを取り扱うファーストリテイリングが、野菜販売の事業で失敗したことがあります。
この野菜販売事業がうまくいかなかった理由として、安定供給や在庫管理の難しさが挙げられます。
アパレルで品質の高い製品を計画的に生産し消費者に届けていたファーストリテイリングでしたが、野菜事業では同じパフォーマンスを発揮できなかったのです。
既存の事業での強みが必ずしも他の事業で活かせないことを学べます。つまり成功している事業の技術を新規ビジネスで活かせるかが、参入時のポイントの一つとなるでしょう。
ユニクロと同じアパレルブランドであるジーユーの事業で成功している点からも、自社の強みを活かすことの重要性がうかがえます。
Google Glass
アメリカの大企業であるGoogleは、Google Glassという製品を販売しましたが、その事業は成功に至りませんでした。
Google Glassは、AR(拡張現実)技術を活かして様々な情報を視界内に表示できる、メガネ型のデバイスです。
本事業がうまくいかなかった理由は、価格やプライバシーといった点に加え、Google Glassの機能を既存のスマートフォンでほとんど満たせる点にありました。
革新的な技術であっても、従来品における消費者の課題を解決できているかが重要であると学べる事例です。
セグウェイ
アメリカで開発された電動立ち乗り二輪車であるセグウェイは、革新的な技術の成果であると、メディアに取り上げられました。
しかし、売り上げはメディアの期待を裏切るようなものでした。
この事例からは、いかなる先進的な技術の組み合わせでも、消費者のニーズを満たす必要があることを学べます。
セグウェイの事業がうまくいかなかった主な理由はこちらの2点。
- 電動立ち乗り二輪車の走行に関する法規制が整っていないこと
- 最高速度が十分ではないこと
新規ビジネスを展開する際は、他社にない技術であるかに加え、購入者をとりまく製品の使用環境も念頭に置いておくべきでしょう。
オープンイノベーション成功のために!知財法務を活用しよう
オープンイノベーションを検討する際、知的財産権が重要な役割を果たします。
なぜなら知的財産権は、他社にない技術を自社が保有していることの指標となるためです。
特許権をはじめとする知的財産権を他社に開放、もしくは他社から取得することで、オープンイノベーションが促進されます。
その際に、契約で自社を守ることも重要です。
ここでは、
- 他社と知的財産を共有するメリット
- 他社と知的財産を共有するデメリット
- オープンイノベーションを実施する際に締結すべき契約
をまとめましたので、参考にしてみてください。
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他社と知的財産を共有するメリット
互いに持っていない技術を共有することで、言うまでもなく取り組めるビジネスの選択肢が広がります。
他社と知的財産を共有する具体的なメリットは、例えば以下の3つです。
- 新たな技術やノウハウの蓄積
- 開発時間の短縮
- 技術者の視野の拡大
自社にとってこれまでになかった技術に触れて、組織が活性化・拡大できるのがオープンイノベーションの大きなメリットです。
異なる分野の技術との組み合わせに成功した時、競合他社より優れた商品・サービスを消費者に提供できるでしょう。
他社と知的財産を共有するデメリット
共同で事業を進める場合、他社から技術を共有してもらえる一方で、当然自社から技術を提供する必要があります。
他社と知的財産を共有するデメリットは、以下の通りです。
- 第三者への情報漏洩のリスクがある
- 成果を独占できない
- 事業を進める前の契約に手間がかかる
共同で開発する際は、他社へ開示する情報と、自社の秘密として守る情報を区別する必要があります。
また共同開発がはじまると、互いに自社だけで判断できないことが多くなります。
Win-Winの関係を築くためにも、あらかじめ事業の進め方や成果の取扱いついて意見を交換し、契約で取り決めておきましょう。
特許権開放の前に契約で自社を守ろう
他社と共同で製品開発を進める上で、契約で自社を守ることが重要です。
開発を進める前に締結しておくべき契約として、以下が挙げられます。
- 秘密保持契約
- 共同開発契約
- ライセンス契約
秘密保持契約では、互いが持つ情報を秘密とすることや、その秘密情報を使ってもよい範囲を明確にしましょう。
契約内容によっては、自社が他社に提供した技術が、他社と第三者との事業に用いられてしまう可能性もあります。
共同開発契約では、共同開発で得られた成果の取扱いなどを定めます。
契約時に互いが持っている情報と、共同開発にて得られた情報の活用できる条件をはっきりさせておきましょう。
ライセンス契約は、
- 使用を許可する知的財産が独占的か非独占的か
- ライセンスによって得られた利益の取扱い
などに気を付けて締結していきます。
このように、他社から取得する、または自社から提供する技術の扱い方を契約によりくわしく決めておけば、知的財産権の問題が生じるリスクを抑えられます。
まとめ
商品・サービスの開発スピードが増している現在において、オープンイノベーションの活用は、競合他社に負けないためのツールの一つです。
互いが持ち合わせていない技術をうまく組み合わせれば、これまでにない新製品を生み出すことができます。
一方で、大企業でも失敗することのある、決して簡単ではない取り組みでもあります。
自社の事業拡大を検討されている人にとって、本記事が技術を共有するパートナー探しの参考となればうれしいです。
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