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Twitterが「X」へブランド変更!商標のケアは大丈夫?今後の行方はどうなるか

2023年7月24日、米起業家のイーロン・マスク氏は、ツイッターのブランドを「X」に変更し、ブランドの象徴だった青い鳥も黒と白の「X」マークへと変わりました。

この変更は、知的財産的には大きな影響があるとして話題となっています。

なぜならXの文字は様々な商標登録や使用事例が存在しており、米メタやマイクロソフトなどのテック系企業も保有していることから、X社(旧Twitter)は商標保護の観点で苦労する可能性が高いと考えられていることが理由にあります。

Twitterの状況

一度、Twitterの状況を整理したいと思います。

Twitterの原型は、2006年に創業者のジャック・ドーシー氏が企業内のブレストイベントで出したアイデアを基に社内サービスとして始まりました。

その後、SNS”Twitter”の運営をするTwitter, Inc.として独立して我々の知る”Twitter”に至っています。

2022年、イーロン・マスク氏によるTwitter,Inc.の買収がなされます。その後に同氏が経営するX社に合併される形で、企業体としてのTwitterは終わりを迎えました。

そして今回、SNSブランドとしてのTwitterについても名称の変更が行われ「X(エックス)」となりました。

企業とブランドの両面でTwitterという名は消滅してしまったのが現状です。

Twitter,Inc.の保有していた商標は?(日本)

Twitter,Inc.が日本で保有していた商標について確認してみました。

データベース:J-PlatPat
検索(出願人):Twitter? トゥイッター? ツイッター? ※文字揺れ対策で複数記載

ヒット数:54件(2023年8月3日時点)

区分としては、42,38,45,09,41類、が多い状況にあります。

検索結果抜粋

検索結果の中には、今回話題となっている”X”に関するものは見つかりませんでした。

”X”商標の状況は?

Xに関するニュースでは、”X”という商標は既に様々なものが登録となっているということで話題になっています。

日本での登録事例を確認してみました。

データベース:J-PlatPat
検索(称呼):エックス

ヒット数698件(2023年8月3日時点)

次のような登録が見つかりました。

話題となったX JAPANのロゴの登録もあります。

なお、X JAPANのXの商標はTwitter自体に関わる42類での登録はないことから、現時点では特に問題は生じないものと思われます。

商標では、登録されている区分というものが重要になります。区分とは簡単に言うと、商標を使いたいサービスのカテゴリーです。

商標の区分って何?役割・選び方・注意点まとめ

Twitterでの登録では特に42類(科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発に関する区分)が重要であることから、この区分で調べてみます。

42類での”X”商標の登録事例

SNS大手のLINEも実はX商標を持っていたようです。

ちなみにこちらは同社が米国で展開していた仮想通貨取引所「BITFRONT」に関するロゴになります。(サービスは終了)

マイクロソフトの事例では、同社の提供するExcelのロゴにエックスが含まれておりました。

事例とリサーチ結果から見えた、”X”社の商標の行方

これらの登録事例および調査結果を見て、以下のようなことが考えられると思います。

1:”X”という標準文字での登録は不可

商標には、文字だけで構成された文字商標と、文字商標以外の商標=図形商標という種類があります。

文字商標とは?具体例も合わせて解説!

もしも”X”という文字だけ(ロゴ化していないもの)で商標登録をしようとすると、日本での出願においては、審査基準上、英字1文字(および2文字)からなる商標は「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」と判断され、拒絶理由通知が出ると思われます。

(商標登録の要件)
第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標

引用:商標法 | e-Gov法令検索

※太字部分筆者

2:ロゴでの登録の可能性はある

上記にあるように、様々な”X”ロゴでの登録が存在しています。

同一の区分で多くのXロゴ登録もあることから、特徴的なデザインで指定商品・役務が異なっていれば、十分に登録可能性があります。

3:商標の権利範囲は極めて狭く、商標による保護は非常に難しい

商標権の効力は、次の通り「指定商品・役務が同一か類似」かつ「商標自体が同一または類似である」範囲に限定されます。

ここで改めて事例を見てみてると、同一区分で多くの”X”が併存していまよね。これはそれぞれのロゴが非類似と判断されているので登録に至っているのです。

すでにあるロゴを確認の上、近しいものがないということであれば、X(旧Twitter)社自身が商標権侵害をするリスクは低くなります。

例えば「zoom」商標を巡る訴訟のような、トラブルが起きる懸念が少なく済むのは、X社としても既にX商標を登録している出願人にしても悪くない話です。

”ZOOM”商標をめぐる攻防について。現状まとめと、問題点の分析

しかしこれは同時に、X社の出願するロゴは商標権としては権利範囲が狭く、権利行使も難しくなることが想定されます。

イーロン・マスク氏はXのサービス分野を拡大することをすでに公言していることから、多くの区分での登録が必要になります。

しかしこのような状況から、模倣したサービスが出てきた際に、商標権による保護については難しくなる可能性もあります。

ブランド価値の喪失も大きい

Twitterは世界中に利用者がおり、その名前や青い鳥のアイコン、イメージカラーの認知度は計り知れないものがありました。

誰もが知っているというのは、この上ないブランド価値であったものと思います。

イーロン・マスク氏が今回”X”に切り替えを図ったことは、これらをすべて捨て去る行為であり、大変な損失と考えられます。

氏が目指す事業領域の拡大についても、ブランドが成り立っていることでユーザーの興味や関心、そして安心して新規事業についても試すことができるはずでした。

この点についても惜しいと思わざるを得ません。

今回、”X”という埋もれてしまいやすい名称にしてしまったことについても、他社とのイメージの差別化をしっかりと行わなければ、埋もれてしまいがちなブランド名となりえます。

”X”は、商標の取得だけではなく、ブランドの世界観や認知、期待を高める様な施策をユーザーに伝わる形で魅せていく必要があります。

今後の動向については、注視していきたいと思います。

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