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インドへの特許出願!現役弁理士が詳しく解説します!

インド 特許

はじめに

インドは、情報技術をはじめとして知的財産業界の関心が最も高い国の1つであります。
昨今ではインド発で世界進出をしている急展開目まぐるしい地域において、効率的に特許を取得する方法をお話させていただきます。

(執筆:柴田純一郎 米国弁護士/弁理士

インドにおける特許の動向

1.特許とは

特許とは、有用な技術的なアイデア(≒発明)を、公にしてくれることを条件に、そのアイデアを思いついた人に、一定期間そのアイデアを独占させてあげましょう、という制度です。
日本においては、特許法に定められる制度です。
インドでも同様の制度が採用されています。
特許制度については、アメリカ特許の解説にかみ砕いた説明をしていますので、ご参照ください。

2.出願数

インドは、特許出願数が増加傾向にある国で、2019年の世界知的所有権機関(WIPO)による調べによると、全世界の特許出願数が3,224,200件に対し、インド特許庁の受理した特許出願数は、およそ5.4万件だったとされています。

全世界の特許出願数3,224,200件
インドの特許出願数54,000件

2-1.出願数の推移

2014年のインドの特許出願総数は約4.2万件、2015年~2017年の総数が4.6万件、2018年の総数が約5万件となっており、過去5年間において総数が増えております。

2-2.インド国外からの出願比率

世界知的所有権機関(WIPO)の調べによると、インドにおける特許出願の64%は、インド国外からによるものとのことで、これは日本や韓国(いずれも20%程度)、中国(10%程度)に比べると非常に高い数字です。

インド国外からの出願のうち、最も数が多いのはアメリカからの出願で約1万強(2018年の実績)、次が日本からの出願で約4,500件(2018年の実績)、第3位が中国からの出願で約2,600件(2018年の実績)となっています(インド特許庁調べによる)。

3.出願分野のトレンド

インド特許庁調べによると、コンピューターや通信関係が年6,000件~7,000件となっているのは不思議ではないところ、化学分野が年約6,500件、ポリマー関係が年1万件超となっており、化学分野が多いところが特筆すべきところです。

インドの特許制度

1.日本からの出願ルート

アメリカ特許の解説の際に、日本から出願する場合には、以下の3つの方法があると申しました。

  • (1)パリルート出願(日本出願を優先権主張して他国に出願)
  • (2)PCTルート出願(専用願書を使って複数国に一括出願)
  • (3)単独出願(日本出願と関係なく単独で他国に出願)

これらの出願ルートは、インド出願でも使用することができます。

2.出願/国内移行

どのルートによるにせよ、まずは出願書類をインド特許庁に提出することから手続が始まります。

インド特許庁は、本局がカルカッタ、支局がデリー、ムンバイ、チェンナイの3か所に存在します。
いずれの局に出願するかは、インド国外からの出願の場合、現地代理人の所在地によることが多いようです。
いずれの局に出願しても、得意不得意がないことが建前になっていますが、実際のところは現地代理人に相談してみるとよいと思います。

出願書類

出願書類としては、以下の5つが必要です。

  • 願書
  • 明細書(発明の内容詳細が開示された書類)
  • クレーム(特許権がほしい範囲を記載した書類)
  • 要約書
  • 図面

日本や米国、欧州とは異なり、インドでは外国語出願制度が採用されていないようで、英語又はヒンディー語で出願する必要があるようです。
公用語以外の言語で出願された場合、不受理となり出願日が認定されない点に注意が必要です。

3.出願公開

インドに出願・国内移行されると、その出願日(又は優先日)から18か月を経過した後に公開されます。

4.特許性審査

4-1.審査請求

インドでは、日本や欧州同様、「審査請求制度」を採用していますので、審査請求を行わない限り特許性審査は行われません
この審査請求は、出願日(又は優先日)から48か月以内に行わなくてはなりません。

この期間中に審査請求が行われない場合、出願は取り下げたものとみなされます。

4-2.自発補正

インドの場合、出願書類の補正は、出願後から後述のアクセプタンス期間中であれば、比較的時期的制限なく行うことができるようで、また特許付与後であっても一定の範囲で補正できることが特徴です。

ただし、内容的には補正可能な事項が厳しく制限されており、新規事項(明細書に記載なき事項)の追加が禁止されるのはもちろんのこと、原則として最初に提出したクレームの範囲内に収まる補正しか行うことができません。

つまり、たとえ審査請求前であったとしても、クレーム要件の一部を削除して範囲を広くしたり、一部のクレーム要件を上位概念化することは難しいと考えておいた方がよいでしょう。
よって、最初にどの範囲のクレームで提出するかが非常に重要と言えます。

4-3.特許性審査

審査請求後は、日本や他国と同様、主に以下の点について審査がなされます。

  • 発明適格(特許の対象となる事項であるか否か)
  • 新規性(過去に例がないものか否か)
  • 進歩性(既存の技術的アイデアから簡単に思いつかないか否か)

発明適格について、日本同様、特許の対象とならないものが列挙されて規定されています。

アメリカ特許同様、インドでも、コンピュータ・プログラムの発明適格性がよく問題とされます

新規性や進歩性について、日本や他国と大差ないとお考えいただいてよいでしょう。

特許性審査の結果、特許可能という結論になれば、特許査定がインド特許庁よりなされ、発行手数料の支払い等を行うことにより、特許に進める段階となります。

一方、特許性審査の結果、問題ありということになれば、担当審査官より、拒絶理由通知が発せられ、これに対して補正等により不備を解消していくことが必要となります。

4-4.アクセプタンス期間

インドに特有に制度として、所定の期間中に拒絶理由を全て克服して特許可能な状態にならなければ、出願が取下げられたものとみなされる制度が採用されています。
この期間のことをアクセプタンス期間といいます。

アクセプタンス期間は、最初の審査報告の発行日から6か月以内とされ、事前の申請により3か月だけ延長することができます。
原則的には、この6か月(+3か月)の間に全ての拒絶理由を克服する必要があります。

注意を要するのは、最初の拒絶理由に対して6か月(+3か月)以内に応答すればよい、というものではなく、次以降の拒絶理由も含めて6か月(+3か月)以内で克服する必要がある、ということです。

よって、最初の拒絶理由への応答に6か月を要してしまうと、次の拒絶理由を受けこれに応答する期間が削られてしまい、アクセプタンス期間が満了してしまうということになりかねません。

インドでは、拒絶理由には一刻も早く応答することが肝要です。

4-5.審判

拒絶理由通知への対応によっても拒絶理由が解消されない場合には、聴聞手続を行い反論・補正をした後、それでも拒絶となった場合に審判請求の流れになります。

5.異議申立

インドでは、公開後から特許付与までの異議申立(付与前異議申立)と、特許付与後の異議申立(付与後異議申立)の両方が採用されています。
特に付与後異議申立は、特許付与から1年間請求可能なので、日本と比べて長期の期間となっています。

特許期間及び特許年金

インドにおける特許の存続期間は、特許出願日に開始し、出願日から20年が経過するまでとされています。
日本と異なり、欧州に類似する制度になっていますが、出願維持年金制度は採用されていません

年金の支払いが必要なのは登録となった時点であり、この時点で既に複数年経過している場合には、経過済み年度の年金をまとめて支払うこととなります。

インド特許における注意事項

1.外国出願規制

インドでも、中国同様、インドの発明をインド国外へ出願することに規制がかけられています。

ここで「インドの発明」とは、インドに居住する者のなした発明とされており、これにはインド法に基づき設立されている法人も含まれます。
また、法律の文言上、「インド国内で完成した発明」とは限定されていないので、インド居住者がインド国外で行った発明もその対象に含まれると考えられます。
日本の企業が、インド現地法人のなした発明について日本出願を行う場合にはこの規制に注意が必要です。

この規制は、以下のいずれかの方法により回避できます。

  • (1)最初にインドに出願し、出願から6週間経過後にインド国外に出願する。
  • (2)当局から外国出願許可を得て、インドに出願することなくインド国外に出願する。

この規制に反した場合、インドでの権利化が不可となる他、懲役などの刑事罰の対象になるので注意が必要です。

2.新規性喪失の例外

学会発表などで特許出願の前に自ら発明を公開してしまうことが時としてあります。
この場合、自己に起因する公開行為に対して、多くの国では救済措置を定めています。
日本では、この救済措置のことを「新規性喪失の例外」手続と称しています。

インドでは、論文発表や博覧会等での発表について一定の条件付きで例外を認めています。
ただし、この例外の適用を受ける場合、公知となった日から12か月以内にインドに対して出願しなければなりません。
たとえ日本出願に基づき優先権主張を行う場合でも、優先日から12か月以内ではないのでご注意ください。

ただ、この手続のためには、日本や韓国と異なり、何ら証明書類の提出は不要なので、この意味ではアメリカに近い制度が採用されているといえます。

3.実用新案

インドには、アメリカと同様、実用新案制度は存在しません

4.外国出願情報の提供義務

インドでは、アメリカのIDSに類似する制度として、対応外国出願に関する情報として以下の2種を提供しなければなりません。

  • (1)対応外国出願の特定情報
  • (2)対応外国出願におけるオフィスアクションの写し、登録・拒絶のクレーム(英語でない場合は英語の翻訳文も必要)

上記(1)は、出願から6か月以内に提供する必要がありますが、上記(2)はインド特許庁からの要請に応じて提出します。

インド特許庁においては、他国の状況をよく見ていて、上記(2)の他国オフィスアクション情報はほぼ間違いなく要求されるとともに、インド特許庁による拒絶理由通知は、他国でのオフィスアクションに沿っている場合が多いです。

手間はかかりますが、インドでの審査効率化と前向きに考えて対応するのがよいでしょう。

なお、この義務を怠ると、無効理由を抱えたまま特許になります
後日にこの瑕疵を治癒することはできないため、注意が必要です。

5.仮出願

インドでもアメリカの仮出願に類似する制度が採用されています。
つまりいわゆる特許出願書類の形式が整っていない形態(学術論文など)やクレームがない形態であっても、出願として受理され、出願日を確保することができます。

ただし、この場合、仮出願の出願日から12か月以内に、特許出願書類の形式に沿った完全明細書を提出しなければなりません。
もちろん新規事項(仮出願として提出した内容に記載なき事項)を追加することはできませんので、特許出願書類の形式が整っていないとしても、開示内容としては特許明細書相当のものでなければなりません。
上記期間内に完全明細書を提出しない場合、取下げられたものとみなされます。

なお、注意を要するのは、米国や欧州と異なり、インドにて仮出願を行う場合、英語又はヒンディー語以外の言語により仮出願を行うことはできませんので、ご注意ください。

また、仮出願について優先権主張を行うことはできませんので、例えば日本出願の優先権を主張してインドに出願する場合には、通常出願として行う必要があります。

6.追加特許

インドでは、アメリカの継続出願制度に類似する制度として、追加特許制度というものがあります。

これは、既にインドで出願された発明について、その改良又は変更に係る発明を親出願の後に出願できる制度です。
逆にいうと、改良又は変更に係る発明でなければ利用できません

追加特許として出願された発明は、追加特許の出願日をベースに新規性・進歩性が判断されますが、親出願を理由として進歩性が否定されることはないようです。
よって、親出願と新規性において差があれば、効率的に改良発明に特許を得られる制度といえるでしょう。

追加特許は、親出願が特許された後でも出願できます
特許ポートフォリオの効率的管理に資するといえます。

ただし、追加特許の存続期間は親出願と同じとなり、また親出願が失効すると追加特許も失効します(この場合、追加特許を通常の特許に切り替える手続が必要です。)。

7.侵害対応

インドでも、日本同様、特許権の侵害の場合、裁判所による司法ルートで対応することが一般的で、行政ルートによる対応は限定的です。中国出願の「侵害対応」をご参照ください。

行政ルートによる対応は、税関での水際対策絡みとなります。
なお、インドでは、特許侵害について刑事罰が採用されていないようです。

現地代理人の起用

インド国外からインドに特許出願を行う場合、特許代理人を起用する必要があります。
特許代理人は、所定の資格試験を経て、特許出願の代理を取り扱うことができる点では、日本の弁理士に類似しますが、その代理の範囲に商標は含まれないこと、また訴訟代理を取り扱うことができないことが異なります。

近年では特許出願数の増加によりインドの特許代理人も増えているようです。
特許代理人の品質は差が大きいようにも聞いていますので、インド出願経験のある日本弁理士や他社等にお勧めの特許代理人を尋ねてみるとよいでしょう。

インドで特許を取得する意義

上述のとおり、インドは、情報技術大国であり化学技術大国です。
人口10億人を超過するインド市場において自社の製品や技術を展開するには、インドで特許を取得して優位性を得ることは重要と言えるでしょう。

また情報技術や化学技術などでは、インドは世界の最先端を行っていると言っても過言ではありません。
このような観点からも、特に上記の分野においては、インドの動向を視野に入れた知財戦略がますます重要性を帯びていると言えるでしょう。

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